第19話 街ブラデート ①

「よし、じゃあ出発するか」

「はい」


 タロットをぶっ潰した翌日、俺とラミィは朝ご飯を食べ、少しのんびりしてから徒歩で家を出た。


 そう、この街を詳しく知るための街ブラである。


 長かった…………めっちゃ長かった。まさか街ブラするまでに5万字近くかかるなんて…………。


 ようやくこの日が訪れたことに喜びを噛み締めつつ、俺はラミィと並んで歩く。


 そう、並んで、だ。


 普段であれば、ラミィは俺の3歩ほど後ろをついて歩いてくるのだが、今日は隣で歩いてもらうことにした。この距離感であれば、誰も俺たちが主従関係であることは想像できないだろう。


 そして、今日の俺の服装はいつもの貴族スタイルではなく、小綺麗な平民スタイル。


 この世界、貴族でも平民でも着る服はみんなピシッとした服なんだよな。


 女性はドレスを着ていることが多いし、服装でくつろぐことができないのが残念だ。


 今度、洋服とか作ってみよう。


 リオネッタとか、絶対フード付きのバーカー似合うぞ。


 アイツはダボっとした感じの服で、ラミィはヒラヒラとした可愛らしいやつだな。


「ご主人様?」


 歩くのをやめて1人で頷いていた俺を覗き込むラミィ。


 ラミィの今日の服装は、メイド服ではなく、俺と同じで簡素だ。


 暖色系で統一されており、ロングスカートで清楚さをアップしている。知らんけど。


 まぁともかく、すっごい可愛いということを分かってもらえれば大丈夫だ。


 あと多分、薄くお化粧をしている。可愛い。


「大丈夫。ブラブラするか」

「はい」


 この前、試験帰りにも通ったマーケットを歩いていく。


 果物屋、八百屋、魚屋など、食料品系の店が多く並んでいるな。


 休日ということもあってか、かなり活気があり、いる人の年齢層もまばら。親子連れが多いイメージだ。筋骨隆々の冒険者もいるが、武器は見当たらない。休日だから冒険は無しなのだろうか。


 後、何気に驚いたのが歩きスマホをしている人がいないんだよな。


 スマホがないから当たり前なんだが、日本じゃしょっちゅう見ていたから、かなり新鮮だ。


「あちらが魚屋さんです。店主の方が気さくで、よくおまけをしてくれます」


 ラミィは俺にお店や街並みについて解説をしてくれている。


 街のど真ん中に広場があり、そこから放射状に計8本のストリートが伸びている。


 だが、その内の3本は店ではなく、住宅が並ぶ住宅街のようだ。


 今歩いているのはグロセリーストリート。


「ここからは、冒険者御用達のトレジャーストリートになります。すぐそこに冒険者ギルド、中にあるボードに貼られている依頼をこなし、ギルド嬢に報告を行えばその依頼に応じた報酬が獲得できます」


 そう言いながらラミィが指差したのは、かなりしっかりと建てられた大きな建物だった。


 日本で例えれば、スーバーくらいの広さがあるな。


「依頼自体は冒険者登録をしていなくとも受注できますが、負傷した際の治療費は自己負担になるので、大半の冒険者は登録をしていますね」

「ここに来てまで全額自己負担というワードを聞くとは思ってなかった…………」

「世知辛い世の中ですので」


 死んだ目をしている俺にラミィがそうコメントすると、「続きを説明しても?」という風に俺を見てきたので、俺はコクリと頷く。


「登録をした場合、依頼内容を達成すると、達成報酬のうちの3割がギルドに差し引かれます。ただ、冒険者の方が『分かりにくい』と抗議したらしく、今では冒険者側が入手できる報酬が、達成報酬の下の方に書かれています」

「消費税かな?」

「しょうひぜい……?」


 首を傾げたラミィに、君たちはこのドス黒い政策を知らないままでいてね、という風に優しく笑う。


 懐かしい。


 所持金が215円しかなかった時に、202円のカップ麺をコンビニで買おうと思ったのに、消費税込みだと218円したんだよな。辛かった。


「……え、えぇと、しょうひぜいなるものは存じ上げませんが、簡単に纏めると、登録をすれば達成報酬が低くなりますが、治療をした際の手当てなどはギルド側が全て負担していただけます。登録しなければ、達成報酬をそのまま受け取れますが、治療は自己負担になりますね」

「なるほど。合理的だな」


「登録をすれば、他にも特典がありますね。トレジャーストリートでの買い物時、全品1割引き、ギルド内の酒場での料金、全品2割引きなど、色々あります」


 お抱えじゃない冒険者は入った方がお得だな。


「中に入られますか?」

「そうだな。どんなもんか1回覗てみ…………って待て。よくない。よくないぞ!」

「いかがなさいました?」

「ここで入るとな、昼から飲んだくれているB級ぐらいの冒険者がケチをつけてくるんだ。『そこの綺麗な姉ちゃん、俺らと一緒に飲もうぜ』みたいな感じでな」

「そんな…………私は綺麗では…………」


 ブンブンと勢いよく首を横に振るラミィ。


 やはりこの子は分かってないな。


「ラミィは可愛いんだ。覚えときなさい」

「そんな…………お言葉は嬉しいですが私は可愛くなど…………」

「いいから復唱。ラミィは可愛い!」

「私はかわ……うぅ…………かわ……」


 顔を赤らめてプルプル震えるラミィ。アカン、少しいじめすぎた。


「冗談だって。いや、ラミィは可愛いんだけど。まぁそれはともかく、ラミィみたいに可愛い子を連れて入ると冒険者の奴らは揃ってイチャモンつけてくるからな。『おいおい、ここは彼女連れではいる場所じゃないんだぜギャハハ』とか、『この初心者にギルドでの立場を教えてやんねぇとなぁ、ウヒャヒャヒャ』とかな」

「おい兄ちゃん。綺麗な女の子を連れてるじゃねぇか。少し俺たちに貸してくれよ」


 後ろからポン、と肩を叩かれたので、振り返らずに後ろを指さして満面の笑みを浮かべてラミィに説明する。


「そう、こんな感じでな!」


 外でもダメだったかー。


【あとがき】


 これを言うべきかどうか、ずっと悩んでいました。


 言えばみなさんに嫌われてしまうかもしれないけど、言わなければ僕の胸の中につっかえたまましこりとして残り続ける。


 長い間考え続けた結果、言わせていただくことにしました。


 聞いてください。


 和風パスタ、超うめぇ。


 それでは今日のおすすめの曲に移ります。


 今日のおすすめはこちら、シャイトープさんで「ランデブー」です。


 とにかくサビの歌詞と歌い方が好きすぎます。


 最後に。


 今まで頂いた誤字指摘は全て直しました。


 大変助かりました、ありがとうございます。


 文字認識で書いてるので、変な改行とかもあると思います。


 なるったけ直していますが、あると思うのでよかったらそこも教えていただけると大変助かります。


 これからもよろしくお願いします。

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