美希《ミキ》
昼下がりの
もとは折り込み広告だったものが命を得たかのように、ゆっくりと優雅に飛び、部屋の端にあった観葉植物の上に着陸した。
「すごい、すごい!」
爪先立ちする
「
「なに、
にかっと笑う征司は、いつも「今日は調子が悪い」と歩行訓練をさぼる常習犯である。
そんなやり取りを少し離れたところで聞きながら、ホウキを片手に美希は深いため息をついた。
「
背後からの突然の声に、美希は思わず、びくっと肩を上げた。振り向くと宏がいた。
「浮かない顔だな。……良心の呵責か?」
美希は、宏の顔を穴が開くほど凝視した。
「
宏は、ため息とも笑いともとれる息を吐いた。
「吉岡さん……?」
「学会誌を読んだよ。彰と美希さんの
宏は「場所を変えるか」と言うと、美希の返事を待つことなく自室へと向かった。美希はホウキを握り締めたまま、黙ってついていった。
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