第16話 青い星の約束② エピローグ
彼女は手渡されたペンダントを手の平にとり、指で摘まみ上げると不思議そうに見つめながら首を傾げた。
「えっ! 何っ?」
彼女は不思議そうに何度か瞬きする。
そして、ふと気づいた様にラウルの肩越しから遠くに見える夜空を見上げた。
そして意味深に、そのペンダントを輝く星空に透かして見た。
「こ、これ―――?」
息を飲む様に目を見開き、ペンダントを
「な、謎が解けたよ―――!」
「あの書庫の部屋にあった古文書の謎がっ―――!」
◇
「ラウルっ!」
「ありがとうっ!」
「あなたのおかげで―――あなたに会えたおかげで、ついに見つけたよ!」
「最近。あの空に現れた星が……」
「古文書に記されていた『ベレヘムの青い予言の星』が現れたのか」
レイは興奮して言葉をまくし立てる。
が、彼女の言葉の意味が全く理解できず、ラウルは引き気味に目をパチパチとさせる。
(どういう……?)
(彼女の沈んだ気持ちが……)
(何かすごい発見によって、吹っ飛んでいってしまったぞ……)
彼女が、ラウルの手を取る。
「ラウルっ」
「三年後……」
「三年後にまた、この場所で会いましょう」
「ほらっ見て! ―――あの青い星が輝く夜に」
と夜空に、ひときわ輝く青い一つの星を指さした。
「三年後?」
「そうよっ! ―――私は、やらねばならない事ができたよ」
彼女は興奮して言葉を弾ませる。
「きっと皆が笑って暮らせる日が来るよっ―――!」
「その時は……その時が来たら、二人で旅をしましょう」
「いっしょに世界を巡りましょう」
彼女の濡れていた瞳が、赤みをおびて宝石のように輝いていく―――。
◇◆◇◆ 青い星の下で
二人は、丘の上で夜空を見上げていた―――。
レイが自分の首に巻いていた白銀の柔らかなストールをはずして、ラウルの首に巻いた。
「これは、御守り……」
「すぐ無茶をするラウルに」
「このストールが、ラウルを護ってくれるよ……」
すうっと優しい手で、首に巻いたストールの端を巻き上げた。
彼女の触れる指が、今まで彼女に巻かれたいたストールの温もりが肌に伝う。
彼女の瞳を見た。
嫌だとは、言えなかった。
「僕も―――この剣に誓う―――」
ラウルは背筋を伸ばし、剣を両手で握ると顔の前で剣を立てた。
騎士の国では、王に誓う時の最高位の作法である。
「君が魔法で人々を安寧に導くなら……」
「僕は、この剣で君を護ろう」
「ラ、ラウル……あなた……」
レイは、剣を構えたラウルの姿をみて、顔を赤らめた……。
「こ、こちらこそ……よ、宜しくお願いします……」
とレイは、ちょっと慌てた様子でぎこちなく頭をさげた。
もじもじと体を揺らす彼女は、恥ずかしそうに右手を差し出した。
ラウルも手を差し出し、指を重ねた。
思わず、今にも飛んで消えそうなレイの細い腰を抱き寄せた。
やわらかな夜風が丘に揺れる草花の香を運び、二人を包む。
金銀の粒が風に舞う。
「ラウルに精霊の御加護を……」
「レイに安寧の時を……」
天球の星々は幾千万の時を数える。
二人は、瞬きのような時を重ねた。
夜空に遠く遠く輝くベレヘムの星は、青く金の輪をまとい静かな光を放つ。
手に持った青い石のペンダントを覗けば、小宇宙のな星々が煌めいていた。
◇◆◇◆ エピローグ
騎士の国『アルティア王国』と魔法の国『エルドラ共和国』の国交が途絶えて、260年余りの月日が経つ……。
後にラウルは、魔法の国では良く知られる『古い恋の物語』を知る事になる。
それは、まだまだ先の話し……。
あの時、深い深い森の中で偶然に出会った二人は、三年後の再会を誓い、新たな一歩を踏み出した。
第一章 大地の精霊使い
おわり―――
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