第1話 炎の暴君 〜最強チートは諸刃の剣〜
ノゾミは、目の前に広がる無数のスクリーンの中から一つを選んだ。
そこに映し出されたのは、炎に包まれた豪華絢爛な庭園だった。
「おっと、これは派手だな」
ノゾミが思わず声を上げると、リンカが横からニヤリと笑いかけた。
「あら、良い目をしてるわね。これはね、ちょっとクセのある転生者よ」
スクリーンに映る少年は、まるで炎の中で踊るように歓喜していた。
「俺、最強なのかもしれない!」
少年の名はハイアルト・ユーティアス。
この世界では、伯爵家の次男として生まれ変わっていた。
「転生特典:炎魔法 Lv.MAX...だと?」
ノゾミは目を丸くした。
「これ、チートすぎないか?」
リンカは肩をすくめた。
「彼が選んだのよ。でも、見ていてごらん。チートって、諸刃の剣なのよ」
ノゾミはユーティアスの成長を見守った。
魔法学院での威圧的な態度、周囲との軋轢、そして最後には家族からの勘当。
すべてが、彼の手に余る力のせいだった。
「くそっ、俺は最強の魔導士なのに。俺は勇者なのに...」
ユーティアスの独白を聞きながら、ノゾミは思わず声をかけたくなった。
しかし、リンカに止められた。
「あなたの言葉で、彼の人生が大きく変わる可能性があるの。慎重に」
ノゾミは我慢した。
そして、ユーティアスの暴走を見守り続けた。
森を焼き尽くし、街を灰にし、ついには魔王討伐の旅に出る。
その道中は、まさに炎の軌跡だった。
「神級炎魔法・ゴッドインフェルノ!」
ユーティアスの絶叫が響き渡る。
しかし、彼の前に立ちはだかる炎魔神イブリースは、その炎を浴びて愉悦の表情を浮かべるだけだった。
「きみ、気持ちいい炎をありがとう!最高の気分だよ」
ノゾミは思わず立ち上がった。
「おい、逃げろ!」
その声は、神のお告げとしてユーティアスに届いた。
「うるせえーーー!!」
ユーティアスの叫びと共に、イブリースの炎が彼を包み込んだ。
「これが最後か...」
一瞬の閃光。そして、静寂。
ノゾミは呆然と立ち尽くした。
リンカが優しく肩に手を置いた。
「これが現実よ。物語じゃない。でも、あなたならきっと...」
ノゾミは深く息を吐いた。
「次は...次は絶対に...」
彼の目には、新たな決意の炎が宿っていた。
これが、ノゾキ神としての真の仕事の始まりだった。
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