裏 義姉 1
私が、前世の記憶を取り戻したのは、腹痛で寝込んでいるときだった
父があの女と子供を新しい家族だと言った時、腸が煮えくり返るかと思った。だから、こんなにもお腹が痛くなったのか、と見当違いな事を考えていた。
違う、あの女が碌でもないモノを食わすからよ。朝のスープは何か変な味がしたじゃない。誑かされる父も父だ。あの子、私の一つ下って、そんなに昔から浮気してたのね。サイテーだわ。
痛い、痛い、痛い。ロクでなしで、女から金をせびるしか能がない癖に。最低の男よ、あの野郎。え、誰の事。ワタルの事よ。あんな男、別れて清々してたのに。それなのに、待ち伏せして刺してくるなんて !
一気に、知らない女の記憶が蘇った。私、アイツにお腹を刺されて……、死んだんだわ。
体調が良くなる頃には、頭の中が整理された。加えて、自分が好きだったゲームの中に転生したのを自覚した。
「マリウス様に会える」
『
前世の記憶を思い出してからの私は、父の事も他のものもどうでも良くなり、彼に会うために勉強を頑張った。彼が関係するのは、トップクラスだけだったはずだから。
それから、もう一つ気が付いた。
そう言えば、
私には鑑定があったので、
ソフィリア・ソラナセア 10才
レベル1
職業 (未定)
スキル
魔法特性 水 風
習得魔法
加護
なに、大した事ないじゃない。それで勉強を頑張っているのね。どのルートでも難しそうだから。それに学園のトップクラスに入る必要もあるしね。
水と風があるのは、父の血かしら。
学園の入学は、色んな意味でホッとした。あの女から離れられたから。アイツ、私の持っている金目の物を偽物と取り替えたり、いびってきたり、どうしようもない女だわ。私が嫡子なのが気に入らないのね。
貴金属などは銀行の私書箱に預けておきましょう。何かあったときのために。
私の個人財産についても、きちんと手続きしておかないと。父がまだ真っ当だったときに色々と教えて貰っていて良かったわ。
義母と義妹が結託しなかったパターンだから、弟が生まれる可能性が出てきた。ヒロインが義母と結託しなかったら、弟が生まれるのは確定。
今だから思うのだけれども、あの女は自分の言いなりになる子供が欲しいから、義妹が言うことを聞かないならば新しいのを、という事なんでしょうね。
悪役令嬢側でのプレイで、弟が生まれるパターンがある。弟が生まれた時を解析した話では、噂話に差があって義母と義妹が結託していなかったパターンだそうだ。
義母と義妹の結託は、どうもランダムになっていたみたいで、ヒロインが転生者であっても、結託するパターンもあるそうだ。自分で選択できない要素も多かったのよねえ、このゲーム。
弟誕生の方は少なかったから、余っ程やっていないと判らないだろうけど。
あの子、どこまで知っているのかしら。でも、ちょっと感謝しちゃうわ。弟誕生パターンだと、マリウス様が必ず関わってくるから。なんでだか判らないけど連動しているのよね。
弟が生まれなくてもマリウス様が出てくるパターンも勿論あるのだけど、弟がいれば絶対出てくる。
そういえば弟誕生パターンだと、父は殺されるわね。毒殺だったかしら、どうでもいいけど。
学園入学試験は首席をとれた。いや、頑張った甲斐があった。これをずっと続けて、特待生としてこの学園に残れるようにしなくては。下手すると学費まで払って貰えない場合も考えとかないと。
経費についての振り込みが無いと事務から連絡を受けたときは、やはりかと思った。色々と家の事情を話し、特待生の申請をしてもらった。かなり事務の人に同情された。
ひたすら勉強に打ち込んでいて周りを見ていなかったから、同室の男爵令嬢とそりが合わなかったのだと思う。
彼女のクラスは3組だった。それほど成績が悪いわけじゃ無い。でも1組の私をやっかんだのも事実だろう。
この学園で1、2組は高嶺の花。元々上位貴族のためのクラスだったのだろうと思う。基本、上位貴族しかいないもの。でも、そこへ入った男爵令嬢は、皆気に入らないんでしょうね。
同室で直ぐばれるのに、私物が隠されたり、捨てられたり。すぐに寮監に訴え出た。寮監は私が男爵令嬢なので、何度も面倒を起こされて面倒くさいという表情だった。
寮監とのやり取りは何度目だったろう。そこへ同じクラスのエリカセア公爵令嬢カロネイス様が通りかかって、話を聞いてくれた。それで一気に事が動いた。
それからは、トントン拍子でカロネイス様と親しくなり、同室に。後から聞いたら、彼女自身が同室になるように働きかけをしたのだとか。
因みに渋っていた寮監は飛ばされた。
実はカロネイス様も転生者で、駒として私を囲い込もうと思ったのだという。それを知ったのは、料理人から貰ったお菓子のお陰。
入寮するときに、日持ちするお菓子を作って持たせてくれたの。あの料理人が来てから、食事の質の心配しなくて済むようになった。
あの人は色々と気を遣ってくれていて、よく
これは、入学祝いにと貰ったんだけどガラス瓶に入っていてとてお綺麗だったから、なんとなく直ぐには食べずに、机の上に飾っておいたのだ。
「まあ、綺麗な琥珀糖ね」
机の上で瓶に入れて飾られていた琥珀糖をみて、カロネイス様がそう言った。この世界には琥珀糖はない。知っているとすれば転生者しかいない。
カロネイス様の固有スキルが【ゲームウィンドウ】。
ゲームの時のようにナレーションや選択肢が映されるという。イベント開始も提示してくれるという。
何かをする前に選択肢が提示され、どの選択肢を選択するかで、その後が変わってくると言う。
しかもアドバイザー機能付きだ。ゲームウィンドウに示されるイベントで、どの選択肢をとったほうが確実かを的確にアドバイスしてくれるのだと教えてくれた。で、それを見てから行動を起こす。
「最初は、アドバイザーのお陰で随分と簡単だったんだけどね。この頃は段々複雑になってきたのよ。アドバイスも単純じゃなくなってきたし」
全エンディングを網羅してきたという自負があり、その状況も細かく覚えている私を、彼女は頼りにしてくれる。この【ゲームウィンドウ】が有るって事は、ここはきっと彼女が主役パターンなんだと確信した。弟のこともあるし。
イベントやゲームの選択肢を提示してもらえる彼女と、ゲーム知識豊富な私。良い取り合わせだと思う。
やっぱり主役だと、特殊なスキルを持っているのね。あの子にもあるのかしら。無いのは知っているけれど。後からでてくる可能性は否定できない。
でも、ヒロインが誰を狙っていたとしても、二人でタッグを組めば対応できるわ。まあ、カロの婚約者である王太子とマリウス様に手を出さなければ、見逃してあげてもいいわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます