第23話 3年生になりました


 3年生の始業式を迎えた。


「皆様とまた、こうしてご一緒できて嬉しいわ」

3年生の新学期が始まり、ルフィ様は、優雅に微笑まれた。成績トップを爆走するのは、ルフィ様だ。

彼女を見ていると才女というのは、こういう人のことを言うのかとつくづく思う。結局、女子5名は1組を保持している。まあベスト5はほぼほぼ女子だしな。

自分が女の子で、友人が女の子ばかりなせいかクラスメートの男子のイメージが薄い。あまり口をきく機会もないし。この頃は、皆のお陰で絡まれることもないし。



 始業式を迎える前の春季休暇も、彼方此方あっちこっちへ出掛けた。この長期休暇で薬草は粗方集まった。アクシィア様も自分で薬草を採取することもあるそうで、色々と教わった。

漸く薬に必要なものが揃った。いや、琥珀とか入っているのはちょっとびっくりした。薬になるって色々あるんだなあ。琥珀に関しては、ケルクス伯爵が産地ということで、ギネヴィア様が都合してくださった。薬にするのは、そんなに上質の物で無くても良いということで、友人価格でお手頃なものを融通して貰えた。

運がいいだけでなく、周りにも恵まれてるのを感じている。


多めに採取した薬草は、いいお値段で取引してもらえた。この春休暇でも幾つか依頼をこなしてきたので十分な資金も貯まり、調薬に必要な素材は全種類揃えた。頑張りました。


そんなこんなで、ようやくアクシィア様に解毒薬を依頼するところまで辿り着いた。

薬は近々手に入る目処がつく。次の夏季休暇で男爵様に渡そうと思っている。どう説得して飲んでもらうかという問題は残っているが。母を躱す必要があるからな。


義姉と立場が逆転して、男爵様からの資金援助がなくなっても、学年五位以上でキープできれば特待生になり、奨学金を受け取れる。今の所、大体4位までをキープしてるので、なんとかなりそうだ。

この先を考えれば、やはり学園は卒業しておきたい。そう考えるようになった。今は魔法を学ぶのが楽しくて仕方がないからだ。



 さて、3年生になり気を引き締めなくちゃならない。楽しくて、結局1組のままだ。義姉の年代は、王子、宰相の息子、魔法騎士団団長の息子、騎士団の息子とか色々と跋扈している。全員が1組にいるはずだ。国の中核になろうという人達だからね。やっぱり優秀じゃないと困るんだろうなあ。


勿論、全員婚約者持ちだ。因みに宰相の息子であるガルシニア公爵令息スヴェン様の婚約者はルフィ様だったりする。知ったのはつい最近。

そうすると、ルフィ様も悪役令嬢候補ってことですか。そいつは、とても怖い。敵う気しないよなあ。


ルフィ様に婚約者のガルニシア様について聞いてみた。

「そうですわね。誠実で真面目堅物というのが第一印象。そう見せかけておいて、なかなか腹黒いのですわ。あの方は」

というのが、ルフィ様談。左様ですか。

「上の学年には、王太子殿下を筆頭に、公爵家の嫡子や騎士団などのお偉い人の子息などがいて、中々すごそうですわね」


「ネフィリウム騎士団団長の御子息は、1組を維持していらっしゃるので、試験の成績は良いのは間違いないのですが。どうも思考力という点が少々足らないと、耳にしましたわ」

賢い脳筋?

「そう言えば、ギネヴィア様は魔法騎士団団長のディモカルプス伯爵家から是非にと乞われたて、ご子息と婚約なさったのですよね」

おお、クールなイケメンのローガン様の婚約者はギネヴィア様だったのか。


「ええ。あの方は魔法にしか興味が無いようで。お義母様も心配していらっしゃるんです。それで確りと奥向きを支えられる人間をという事で望まれましたの。普段は口数が少ない方なのですが、魔法に関する話になると止まらなくなるんですの」

魔法オタク?

成る程、ギネヴィア様は確りしているだけでなくよく人を見ているし、気の利かせ方が上手いから、望まれたんだろうなあ。


家同士の付き合いなどがあると、表側だけでなく裏側も見え隠れしているようで。ただ、皆様の意見が一致しているのは、ご子息達の顔は良い、という点だ。だから、観賞用ですね、と。


「えっと、憧れたりとかあるのですか」

そう突っ込んで聞いてみると、

「まさか。人は顔だけではありませんわ。鑑賞するには良いのですけれど。それに、皆様にはお家同士の決めた婚約者が決まっております」


「そうね。結婚するとなると相手の爵位に合わせた生活ができないならば、肩身の狭い思いもするでしょう。そのためには、相手の家に合わせて学ぶ必要があるのですよねえ。できれば同等、もしくは少し下ぐらいが良いかもしれないと、この頃思いますの。後は家の経済事情などもありますしねえ」


「私も、将来の宰相になるかもしれない方の妻になるため、学年一位は譲れませんわ。奥向きは勿論のこと、領地経営などもある程度任されることになっていますので。上級生になったらそうした授業も選択しようと考えていますの」



「ソフィは何か気になる方がいますの ? 」

「いえいえ、滅相も無い。王家の方や側近候補の方が上の学年にいると耳にしたので、どのような方々なのかなと気になったのです。来年、もしかするとお目に掛かることもあるかと思うと、何か失礼な事をしてしまうと大変だと思いまして」


「そうですわね。来年は4年と5年の合同授業がありますものね」

「私達と接している様子を見ている限りでは、ソフィはおかしな事はしてませんから大丈夫ですわ。気になるのでしたら周りの人たちに合わせていれば、大凡は問題はないでしょう。多少癖のある方はいらっしゃいますが、居丈高な方々ではないですから。それに学園内ですもの。基本的なマナーができていれば大したことはありません。何か疑問があれば私たちに聞いて下さればいいわ」

「そうですか、良かった。ありがとうございます。」


触らぬ神に祟りなしを心がけよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る