第24話 本番前でも、ご用心


 ここから先は別の意味でも正念場になる。ゲーム開始まであと1年になったからだ。ゲーム期間は、4・5年生の2年間になる。

この学園では4年生になると5年生との共同授業がでてくる。

3年生までに身に付けた魔法や剣技などを元にして実践を取り入れることになるのだ。


実践形式でダンジョンに入ったり、大がかりな錬金術や魔法を鍛錬したりするのに、上級生と組む。自分達で採取してきた材料で、調薬や魔導具の作成という項目もある。


とにかく、この実践授業では、5年生が4年生の補佐をするという形になるそうだ。自分たちが教わったことを、後輩にアウトプットして再確認するのだろう。先生方もいるしね。

そうそう、4年生になるとダンジョンに行くそうな。学園で管理している場所と、そうでない場所と幾つかあるらしい。


 ダンジョン、この世界にもあるのは認識してたけど、行っていない。ダンジョンって一人でヒョコヒョコ行けるような場所じゃないしね。実は、マリウスさんに会いたい理由の一つがダンジョンだったりするんだ、これが。

ダンジョンに行くためのアドバイスが欲しい、そう思っているから。他の人に聞くという手もあるにはあるけど、やっぱり聞くなら師匠と仰ぐマリウスさんに聞きたい。師匠って呼ぶなって言われたけど。

話がそれた。



 で、ゲーム期間前の3年次がなぜ正念場かというと、この学年から上級生との関わりが少しずつでてくるからだ。このって奴が厄介で、これが4年生になった時のルートと結びついていたはず。

利用している校舎は、1年から2年生までは別区画だったんだ。基礎教養用の校舎ってことらしい。

それで、3年生から6年生までが同じ区画になっている。今までは遠くで義姉の姿を見かけるかどうか、っていう程度だったけど。今度からは校舎内ですれ違うってこともありうるわけだ。


また、先生方の研究室もこちらの区画に位置している。1・2年生の校舎と3~6年生の校舎の丁度中間地点にあるのだ。今までは、授業の後に教室で質問するとかが多かったけれど、直接先生の研究室へ訪れるのが簡単になった。休み時間では質問が終わらない時などは、時間をもらって休憩室などで対応してもらっていたのだけれども、そういった手間がなくなる。ちょっと、嬉しい。


 要するに3年生になると近くで4年生と会う機会がでてきちゃうってこと。

だから、3年生になる時はトップクラスである1組から外れようと思っていたんだよね。クラスレベルが同じだと、時間割や何かの関係ですれ違う確率がどうも上がるっぽいから。


思い出のシーンっていうのがあって、3年生の時に攻略対象者'ズしょあくのごんげんとのちょっとした出会いが散りばめられているんだよなあ。それが4年生の時にあの時の君か、ってやつになるんだよな、確か。で、そん時にヒロインは君も1組だったんだよねっていう会話があったような気がする。だから、なんだとかかんだとか言ってたような……。でもゲームは4年生から始まっている。あれは、ヒロインに選択の余地はないな。決まっているような物だった。攻略対象者が決定した時点で、その出来事が語られる。うーん、なんだろうこの違和感。


そう言えば、このゲーム、悪役令嬢物のスタンダードを目指した割には、転入生とか言うのではなかった。転入生というのが定番だと思うんだけどな。こうしたすれ違いというか出会いに関しても、自分で選択するような感じではなかったような気がする。

私もピンクブロンドではないし。銀髪でオッドアイ、我ながら派手だが。


そもそもこの学園としては、転入生はあり得ない。他の学園では、平民の学校から4年に編入生があると聞いた。ギルドのミリィさんも言ってた。

「優秀な子は、学校を卒業すると推薦で学園の4年生に編入して、合計で6年間の教育を受けられる」

って。

でも、このスティルペース学園は、一切編入生は受け付けていない。


魔法教育の系統云々で、1年と2年にはここ独自の基礎教育がなされていて、それを受けていない生徒を受け付けられないからという話だ。

例え、王族の庶子が見つかってもだ。どうしても、ここに入学したいならば、年齢が幾つであっても1年生からやることになる。


あれ、なんでだろう。そんな設定をする必要って、ゲームなら関係ないはずだ。妙な所に拘りがあるのかな。

そういう意味でも、設定がゲームらしくない。私が勝手にゲームだと思い込んでいるんじゃないかってちょっと思った。でも、知っている事が多すぎるという点では、否定できない。

それでも、ここは私にとっては現実なんだ。だから、ゲームがどうのというのではなく、自分がどうしたいか、何ができるかを考えて選択していこう。


極力、ルフィ様達と一緒にいて、一人にならないように気をつけよう。そうして、攻略対象者'ズトラブルのもとには近づかないようにしよう。それでも、攻略対象者'ズ浮気者達に巻き込まれるかもしれないけれど。何があっても、自分を見失わないようにしていこう。


ステータスの偽装は止めないけど、これからも勉強は精一杯やる。いざという時には奨学金欲しいし。奨学金を考えれば、1組で上位に居続けるしか無い。

それと、1組に残った理由の一つは、授業内容にある。

実は、魔導具作製の選択授業が、4年生から始まる。魔導具を作るそうで、楽しそうだよね。これができると、将来的にその道に進めるかもしれない。


これのために3年生から錬金術とか付与魔法、魔方陣の授業が始まるのだと聞いた。このうち付与魔法と魔方陣については、1・2組しか習わないという話だ。

他のクラスの場合は、付与魔法と魔法陣の授業を4年になってから選択するそうだけど、他の授業との兼ね合いで難しいらしいのと、魔導具作製の授業についていくのが大変らしい。付与魔法や魔法陣を知っている前提で授業が組まれているのだとか。

要するに魔導具について勉強したいならば、1・2組に居続けなければいけないのだ。


攻略対象者’ズに会わない事と新しい授業、頑張っていこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る