第3話 最初の決意 2


 メイドさんが戻ってきた。温和しくベッドに戻っていたので問題は無い。


「さあ、どうぞ」

「ありがとう」


と差し出されたコップを受け取って、笑顔で答えるとメイドさんは嬉しそうにしてくれた。

水には、少し果汁が入っているようで美味しかった。


「さ、もうしばらくお休みになってください」

と寝かしつけられたので、素直に布団の中に入った。

さて、こうして寝ていても考えることは出来る。


 まあ、ゲームや小説の舞台に転生するっていう話を好きではあった。でもさ、本当にそんなことになるなんて絶対ないよねって思っていた。


それにストーリーを知っている存在が入るだけでもバグでしょ、ストーリー通りに行動したって上手くいくはずないじゃん、とも思っていた。


いや、だから物語になるのだし、そこが面白いのだけど。転生モノの小説を読んでる時は、楽しんでいた。でもさ、それが自分の身の上に起こって現実になるなんてなったら、話が違うわよ。

しかも、定石ならヒロインが転生者の場合、多くは残念系で、身を滅ぼすし。


ちょっとだけ、考えたことがある。もしかして、全部仕組まれているとしたら ? どうなんだろうって。要するに、最初から失敗するような、そういう子を配置しているんだとしたら?


いえ、確かにね、物語なんだから作者がそう仕組んでいなければ、そうなるはずないわよねって。そういう話では無くて。


本当に異世界転生で、ゲームと同じだとしたら、実際のその世界が、こうして存在しているならば、この場合は、神様かな。この神様、何がしたいんだろうって。


例えば、ヒロインに酔いしれる子を配置して、どんなパターンで没落するかを検討しているとか。神様のシミュレーション?

でも、人の人生で実験するのは、やめて欲しいと思う。

私の人生がかかっているのですよー。


ま、仕方ないか。こうなったら、穏やかな人生が送れるように画策しないと。


 そういえばヒロインが転生者だった場合、知らずに浮かれちゃうってあるのかな。

ほら、Web小説だと、だいたい逆ハーや隠れキャラ出現を目指したりするじゃない。


そういう場合は、自分に都合の良いことばかり考えて自滅パターンが多い。自滅、嫌だな。

もしかして、こんな所にも地雷がある?


乙女ゲームのヒロインになった転生者の言い分ですごく気になるのは、「自分はヒロインだから」ってやつ。

いや、ちゃんと考えてみようよって思う。


ゲームだって失敗するでしょう、選択ミスもあるでしょう。それなのに、自信満々でヒロイン故に何とでもなるという。


ゲームの盤上にいるかもしれないって言っても、実際にみんな生きているのだから、全てがゲームと同じ選択をするだけで済むわけ無いよね。


それに、自分自身がバグなんだから、本当のとは言えないじゃない。その分、ノイズがあるはずだ。


でもさ、それらの行動ががあったという可能性、捨ててはいけないかも知れない。


例え本当にゲームの中だったとしても、攻略方法を知っている存在がいること自体バグだと思う。

バグがあるってことは、どこで引っかかるか判らない。考えすぎと言われそうだけど。


でも失敗するヒロイン達って、ヒロイン補正でそうなるパターン、あるとしたら? 気がついたら、頭お花畑化現象!

そう考えると、怖い。


そう仕組まれているってことでしょう。そういえば、さっき、自分に都合の良いことを考えてたな。義姉の話が狂言だったのではとか。

ほんと、気をつけなきゃ。



 今の時期だと学園に入学するまでは義姉は2年、私は3年猶予があるはず。学園では6年間の寄宿生活になる。


学園に入る前にあの義姉を攻略するのは、無理だろうな。別の学園に行くとか、学園には行かないっていうのも難しい。


貴族は皆スティルペース学園へ入学し、魔術を取得することが義務化している設定のはず。余程の事がない限り、試験に落ちるという事はないと思う。


まったく魔力が無いなんてことにならない限りね。確か入学試験に魔術への適正が測られるんだったわ。


でも神殿や鑑定士も魔術適正が鑑定できたはず。あれ、ヒロインって鑑定もっていたわよね。


【鑑定】

試しにそう唱えてみると、わお、ちゃんと鑑定できた。え、習わなくても鑑定ってできるんだ。


ソフィリア・ソラナセア 9才

レベル1

職業   (未定)

スキル  鑑定Lv1 隠蔽Lv1

魔法特性 火 水 土 風 闇 光 聖

習得魔法

加護


ああ、聖魔術への適正がある。聖女にされる可能性があるってことだわ。


しかも特性は全属性持ちか。なるほど、これなら賢者コースも、魔導師コースもありだわ。あれ、隠蔽っていうのがある。隠蔽を鑑定してみると


隠蔽:相手の鑑定レベルが自身の隠蔽レベルと同等あるいは低い場合、任意の属性を隠蔽できる。


この隠蔽を使ってコースを選択できたわけね。よし、決まった。もう、今から隠蔽を使おう。これから3年間、隠蔽を磨こう。それで聖魔術を隠してまずは聖女ルートを消そう。聖女ルートでなければ、王太子とか寄ってこないだろうから。


あと風と水以外も隠せば、賢者や魔導師になるのも防げるかも。一応、男爵家系って風か水がよく出るっていう話を聞いた気がする。後で確認しとかないと。それくらいは残しておかないと魔術特性が何も無いというのも悪目立ちするかもしれない。


後は生活魔法を習得して、火や土なんかは基礎的な部分だけできることにしよう。生活魔法は魔力さえあれば使える設定のはず。


まあ、ここがゲームの世界だったとしてもマルチエンディングの世界だし、似た世界というならば端から結果が決まっているわけじゃない。

ゲーム補正とかは、ないかな? 無いと良いな。


浮気者で人のモノの攻略対象者なんていらない! だから乙女ゲーム路線は無視!そういう選択肢があっても良いはず。


 ヒロインで、対象を攻略はしないとして。この世界には魔法がある。

聖女にも、賢者にもなりたくないけど、魔法少女はいいかもしれない。ゲームの舞台である学園では目立たないようにしつつも、魔法はたくさん覚えよう。

魔法をたくさん覚えられて、たくさん使える。そういう仕事、ないかな。


そういえば。冒険者がいた。確か、いくつかイベントを熟すのに冒険者ギルドに、行ってた。そっか、冒険者になるのも良いかも。


手に職をつけるってやつ。どうせ男爵家の次女だから、外に出ても構わないよね。政略結婚とか面倒そうだし、家は義姉が継ぐし。


 婚約破棄を大々的にやっちゃうような王子が王太子って。国が終わってるよね。

ということは、情報収集して、魔法の実力をつけて、国外脱出まで視野に入れといた方がいいかな。それにも冒険者、うってつけ。


そこら辺、キチンと調べておこう。外国語も習っとかないと。言葉ができないと、仕事もできず、詰みになる可能性もあるから。奴隷とかに売られたりしたくない。


取り敢えず、冒険者になるのを視野に入れとこう。

やることは沢山あり、時間は限られている。

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