第16話(完)
涙がだんだん目の前を覆っていった。
拭いても拭いても涙が止まらなかった。
気絶していた美月は、気を取り戻したのか、そっと目を開けた。
彼女は私に抱かれたまま、泣いている私を見ては、
「来てくれたんだ....良太···ごめんね···私たちの子を···守れなかったみたい。」
彼女は元気のない声で私に言った。
私は、そんな哀れな彼女の声を聞いて、美月を抱いている血まみれの手に、力を入れた。
「何言ってるんだよ。全部私のせいだ···君を家に一人で置いて行くんじゃなかった···私こそごめん。」
そう言った後、私は、体の奥から感じられる怒りに、首を回して横を見た。
すると、そこには、頭が切られて落ちた、あの男の死体が床に倒れていた。
そして、それと共に、再び、憎悪と怒りが私の体の中で沸き上がり始めた。
私は、充血した目と、荒い息を吐きながら、床に落ちた包丁を、もう一度、持ちあげた。
そして、再び、その死体に向かって、手に持った刀を振り回そうとした。
しかし、それと同時に、今、自分がやっていることが、何の意味もないことであることに気づいた。
死体はすでに、何の動きも見せていない。ただ、冷えきって、魂も抜けた、肉殻にすぎなかった。
私は、それに気がづくと、手に握られた血で濡れた包丁の側面を見た。
そこには一つの悪魔が立っているだけだった。
包丁に映った自分の顔を見て、自分に対する嫌悪感が私を襲った。
波が押し寄せるように、一度に、虚無感が押し寄せ、すべてが無駄に感じられた。
短い間に、希望も、青春も、人間性も、何もかもを失った私は、結局、すべてを諦めることにした。そして、全てを諦めることにした私は包丁を両手で握った状態で、胸に刃を向けた。
手の震えが止まらなかった。 額と背中で、冷や汗止まなかった。
私は、愛する人を守るために一人を殺した。
それも、私の彼女である、美月のお父さんを。
私がこの世で生きている限り、一生、殺人したという罪悪感と、殺人者として、社会から厳しい視線を受けながら、苦痛を受けることになるだろう。その上、以前のように、美月との幸せな日々を送ることはできない。そんな日々を送るよりは、死んだ方がずっと増しだ。
私が胸にナイフを当てたのを見た美月は、目を大きく開けて、涙を流しながら、私を止めるために、私に手を伸ばした。
しかし、もう手遅れだった。
彼女の手が私に触れた時は、包丁はすでに私の心臓を貫通していた。
胸に包丁が刺さってしまった私は、胸から噴水のように血を噴き出しながら、力なく倒れた。
彼女はそんな私に近づき、鈴のような涙を流しながら、倒れた私を抱きしめた。
そして、それから、美月は私に向かって何か話し始めた。
「!(+>!>#&$*÷×(@[#($(÷。」
美月の口が、スローモーションのように動くが見える。
彼女は私に向かって、何か話しているようだったが、彼女が何と言っているのかは全く分からなかった。ざわざわと頭に振動が鳴るだけ。
そのように、時間が経てば経つほど。目の前にある彼女の姿は、だんだん後ろに遠ざかっていき,意識が薄れてきた。私は最後に、私と組んでいる美月の手に力を入れた。
「ごめんね。君を置いて行ってしまって… 次の人生も君と会えたらいいのに。君だけは、私なしでも、幸せに生きていなければならない....」
「さようなら。 美月、両親、友達。 そしてこの世界。」
そう呟いてから、まもなく、私の意識が途絶え、私はこの世を去った。
ヤンデレの彼女がしきりに私を誘惑する @shumikatsu8364
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