第14話

※話に入るにあたって、本話は刺激的な内容が含まれています。 望まない方は今すぐ後ろボタンを押してください。※


















『小林美月の過去』


私が5歳の時の話である。


私の家族は、平凡な家族だった。 私、ママ、そしてパパの3人家族。


私の父は、平凡な中小企業の会社員で、母は家で主に、家事を担当する平凡な主婦だった。


私たち家族は、それほどお金が多いわけではなかったが、それにもかかわらず、お互いを愛し、尊重し、また大切にしながら、幸せに暮らしていた。


しかし、この幸せな生活に亀裂が入るような出来事は、私が5歳になって間もない頃に訪れた。


私の父は、ある日から会社の友達に勧められて、賭博を始めたのだった。それと共に、私の家族には、ますます大きな亀裂が生じ始めた。


ギャンブルをしてからというもの、父は日々家に帰るのが遅くなり、家に全く帰ってこない日も多くなった。そして、父親が家に帰ってくる時は、お酒をたくさん飲んだのか、いつも父親の顔と鼻は赤く染まったまま入ってきた。


そんな日が続いていたある日、父親は急に、会社から解雇されて家に帰ってきた。


父親が会社から解雇された理由は、他でもなく、賭博に使うために、会社のお金に手を出したためだった。そのように、父親は一瞬にして職場を失い、引きこもりになって、部屋の中に閉じこもって暮らしたり、外に出ては、家でほとんど姿を見せなかった。


そして、会社を解雇されて以来、父親はますます乱暴に変わっていった。


賭博で勝った日は、私と母に優しく接し、食べ物も奢ってくれる父だったが、賭博で負けた日は、私の母に悪口を浴びせ、暴力を躊躇なく振り回する父に変わった。


「あんたのような奥さんがいるから、私がゲームで負けるんだよ。」


「このくそやろうが。」


その度に母親は泣きながら、「どうか家族のことを考えてでも賭博をやめてほしい」と泣き叫んだ。


父はそんな母が気に入らなかったのか、そのたびに、私の母を殴った。そのように、父の暴力は日々増えていった。


そしてある夜だった。


両親の部屋から聞こえる、うるさくて喧嘩する音に、自分の部屋の中で寝ていた私は、目を覚まして眠りから起きた。


目が覚めたばかりの私は、自分の部屋から出て、うるさい音がする奥の間に、ゆっくりと歩いた。 すると、奥の間の扉の隙間から、一筋の光が流れているのが見えた。


奥の間まで到着した私は、単純な好奇心で、ドアの隙間から、頭を少しだけ押し込み、部屋の中を覗いて見た。


そんなことはするべきではなかった。


部屋の中を覗き見ると、部屋の中では、母が涙を流しながら、助けてというように、自分の前に立っている父に向かって、倒れたまま両手をこすっていた。そして、そんな母を見て父が言った。


「今日、ゲームで負けて悔しいんだよ、優しい言葉で言う時に、早く服を脱げ。 そうしないと。」


「あなた、お願いだからやめてほしいの…お願いだから…」


母は泣きながら、父に哀願するように言った。 しかし、父親は母親の哀れな姿にもかかわらず、腕をまっすぐ後ろに伸ばし、拳を振りながら、母親の腹部を殴った。


それと同時に、母親は苦痛に苦しむ悲鳴を上げ、床に力なく倒れた。


そして、父は腹いせをするように、倒れた母の顔を拳で何度も殴った。しばらくして、母は血まみれになり、あざのできた顔とともに、腕を伸ばして気絶した。


父は倒れた母の顔を手のひらで叩きながら、母が気絶したのを確認すると、手で母の服をゆっくり脱がせ、自分のズボンも脱いだ後、母を強姦した。


「言われた通りにすればよかっただろうに。バカな。」


「でも顔は結構きれいなんだよな。俺の妻。」


父は母を抱きしめた姿勢で、自分の下半身を動かしながら言った。


私はその場面を、ドアの隙間から息を殺して全部見てしまった。私は泣く声が父に聞こえないように、口を両手でぎゅっとふさいでいた。すぐにでもその場で叫びたかったが、叫びたい気持ちを抑えながら、口を塞いでいる手に力を入れた。もし、ここで少しでも声を出したら、父が私にすることは明らかだった。目から涙が止まらなかった。涙が流れ、また流れて、口の中に入ってきて、塩辛い味が感じられるほどだった。挫折感、父親に対する憎悪、悲しみ、裏切り、恐怖、希望をすべて失ったような気分をその時、深く痛感した。


翌日、母は目が死んだまま、居間で洗濯物を畳んでいた。母の顔は昨日のことを思い出させるように、紫色のあざでいっぱいで、歯はいくつか折れていた。母親の表情からは、希望というものが少しも見つからなかった。


そして、そんな母は、私を見ると、私のところに駆けつけてきて、私を抱きしめては、泣き続けた。私もそんな母の悲しみに、一緒に泣き出した。


そして、それから数週間後。


結局、私の母は心の病を得て、病院でくよくよとしていたが、間もなく、以前から持っていた持病で世を去った。それから数日後、母が亡くなったという知らせを聞いた時、私は部屋から一歩も出ずに、泣いてばかりしていた。


そして、母が故人になると同時に、私の父は暴行罪と強姦罪などの疑いで、警察に連れて行かれた。


母が亡くなった後は、母の妹が学校にも行かず、部屋の中にずっと閉じこもっている、私に訪ねてきては、私を拾ってくれた。

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