第4話

数日後。


あっという間に、私と小林が付き合っていることは学校全体にうわさが広がっていた。


私が小林と交際しているという噂が学校に広がった時、クラスで感じられる、私に対する友人たちの視線は大きく変わっていた。


それは、大きく二つに分けることができた。


一つ目は、私のような平凡な子が、学校で有名な小林美月と交際しているという事実を信じられないような視線。


2番目は、どのような経緯で付き合うようになったのか気にするような視線だった。


休み時間になると、普段は絡むこともないクラスの女の子たちが私の机を囲むように次々と集まって聞き始めた。


「美月ちゃんとはどうやって知り合ったの?」


「誰が先に告白したの?」


「どうやって告白したの?」


などなど、あちこちから女の子たちが質問してきた。 一度にあまりにも多くの質問が入ってきたため、誰の質問から答えるべきか戸惑った。


女の子たちに囲まれて慌てていた私は、横に瞳をそらすと、何人かのクラスの男の子たちが、こっそり私を見つめているのが見えた。 彼らの表情には悔しさと殺気が込められていた。 私はそんな彼らを見て、しばらく背中がぞっとするような感覚を覚えた。


私は、無論、聞いている女の子たちの質問に本当のことを話すことはできなかった。 出会ってまもない頃に、勢いでセックスして付き合ったとは言えなかったから。


もし、私が真実を言ったとしても信じてくれないような気がした。 今頃、小林はどうやってこの状況を乗り越えているだろうか、と気になり始めた。 私はこの状況を乗り越えるための別の答えを考えなければならなかった。


私は再び、小林の家に行った日のことを思い出そうとした。 しかし、もやもやとするだけで、いくらじっくり考えてもすぐには出てきそうになかった。


「あの松本、聞いてる?」


「今、彼女のこと考え中?」


「松本?今、私たちを無視してんの?"


私がしばらくぼーっとしていると、女の子たちは私をじっと見つめ、私たちの言うことを聞いているのかと少し怒った。


私は怒る女の子たちに申し訳ないと謝り、お腹が痛いという言い訳で、クラスの友達の視線を全身に受けながら、教室から逃げるように出ていった。


教室から逃げ出した私は、すぐに男子トイレに向かった。


男子トイレに入ると、幸い、男子トイレの中には誰もいなかった。私一人だけだった。


トイレに着いた私は、手を膝に乗せた姿勢で、先ほどの私に聞いてくる怖い女の子たちと、男の子たちの顔を思い浮かべながら、ため息をついた。


「はぁ…」


そして顔を上げて、目の前にある鏡の中の自分を見つめたまま、これから他の子たちに、私がどんな経緯で、小林と付き合うようになったかを、説明するか考えた。


そう頭を絞りながら考えていると、しばらく経って、男子トイレの外から聞き慣れた声が聞こえてきては、小林が私を呼んだ。 どうやら彼女は、私がトイレに入ったのを見たようだ。


「良太君、今、時間ある?」


「えっと.. どうしたの?」


「話がしたくて··· 今、学校の屋上にきてくれる?」


小林はトイレの向こうで、私に聞いた。


「もう少ししたら、すぐについて行くから、先に行ってて。 "


私はそういって、彼女の提案を承諾した。 そして、もうすぐ会う小林に、悪い姿を見せないため、鏡の中の私の髪の毛を手で撫でてきれいに整理した。


しばらくすると、トイレの外から足音が遠ざかるのが聞こえた。 多分、小林が先に屋上に上がっているんだろう。


髪をきれいに整えた私は、水で顔を洗った後、トイレから出て、彼女と約束した場所である学校の屋上に向かって歩き始めた。


屋上に上がってみると、小林が先に来ていた。吹いてくる風で彼女の髪が踊るように吹き飛んだ。 風に乗って小林の芳しい香りが、私の鼻に流れ込んできた。


彼女は、私が来たことに気づいたらしく、私に優しい笑顔を見せてくれた。


私は、私に向かって笑ってくれている、小林が立っているところまで行き、しばらくして、着いた。 すると、近づいてきた私に、小林が口を開いた。


「ごめん、私のせいで苦労してるみたいだね。。。」


小林は心配そうな口調で私に言った。

彼女も私と同じ考えをしているようだった。


「いや、私は大丈夫。 すぐにおさまると思う。」


私は大丈夫だということを、彼女に見せるためにポーカーフェイスを保ちながら、いつもの言い方で話した。


「うそつき…」


「さっき女の子たちに囲まれて困っていたみたいだけど?」


小林は少し口を尖らせながら言った。

彼女はその状況をどこかで見ていたようだった。 そして、小林は何か不満でもあるような顔で、下唇をそっとかんだ。


「はは..女の子はそういうことに興味津々だからな。」


私は手を頭の後ろに当てて大げさに言った。 ちょっと気まずかった。


「ところで、小林は友達にどう言ったの? その、私たちがどうやって付き合うようになったのかについて。」


私は、小林に聞いてみた。 もし、彼女がすでに彼女の友達に話していたら、私も彼女が言ったのと同じ答えを、友達に言うつもりだった。


私のいうことを聞いて、急に、小林の頬が少し赤くなって風船のように膨らんだ。


「その前に良太君、苗字じゃなくて名前で呼んでくれる?」


小林は寂しそうな顔つきで言った。


「ごめん、ごめん、、、 私も思わず習慣的に…」


私は、そんな頬を膨らませた彼女を見て、かわいいと思った。


「あ..とにかく、私は友達に私が先に良太君に告白したと言ったの。」


小林は私のいる方は見ずに、遠くを眺める目で前だけを見たまま言った。


私は彼女の答えを聞いて少し驚いた。


まあ、考えてみれば、美月が私を家に招待して誘惑したのは事実だった。 結局、あんな結果になったけど······


そうやって彼女と話している途中、休憩時間が終わる鐘が鳴り始めた。


私とみづきは鐘の音を聞くと、屋上を下り始めた。 そして別れる直前に、下校を共にすることを約束し、各自のクラスに戻った。


私たちはこの日以来、ますます親しくなった。 学校の昼休みには昼食も一緒に食べ始め、学校が終わったらカフェや飲食店に一緒に行ってデートしたりもした。


特に、美月とそこで何かをしていたわけではなかったが、ただ彼女と顔を会わせながら、彼女と一緒に話すだけで十分楽しかった。 美月も私と同じく、そう思っているように見えた。


もちろん、私たちはただ遊んでばかりしていたわけではなかった。 高校で成績を維持するためには勉強をしなければならなかった。 それで、私はよく美月の自炊部屋に行って、そこで彼女と一緒に勉強した。ある時は、彼女が一緒に勉強しようと、私をよく彼女の自炊室に連れて行ったりもした。


しかし、私たちはまだ盛んな高校生でもあり、あの時のことをまだ忘れていないのか、たまにコンビニでコンドームを買ってセックスしたりもした。


主に、ミヅキのほうが誘惑してきた。 私は彼女が誘惑するたびに彼女の恍惚とした誘惑を振り払うことができなかった。 最近、その回数がもっと増えたような気がする。ある時は、勉強よりはセックスばかりして、家に帰ったこともある。


そして、ある日は、学校で何人かの美月の友達が私に訪ねてきては、彼女が私との交際以後、自分たちとは遊んでくれないという不満を吐露した。 さらに、私に直接来て、みづきと別れよと言った子もいた。


私はその度に困ったが、いつも美月が優しい言葉で友達をなだめながら解決してくれた。


そして、私がミズキと交際を始めて3ヶ月くらいになった頃。


私は彼女を両親に紹介することにした。


「美月、来週うちに来て、私の両親に挨拶でもしない? "


私がこの言葉を彼女に伝えた時、美月も最初は少し悩んでいるように見えたが、結局、うなずきながら笑顔で私の提案を承諾してくれた。

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