第2話
小林の前で、彼女をナンパしようとする男たちは、小林が彼らの提案に断るジェスチャーを見せると、その男たちの行動はますます荒々しくなった。
左の男が彼女の片腕をつかみ、小林はそれに抵抗するかのように踠いたが、力の差からか彼女の腕をつかんだ男の腕はびくっともしなかった。私はその場面を見て、
「これはやばい。 今すぐ小林を助けなければ、彼女がこれからどうなるか分からない。」
と心の中でそう呟いた。
これ以上は、見ていられなかった。私は、もう何も考えず、ただ小林を助けなければならないという思いだけで、すぐに彼女のところに駆けつけた。
そして、ナンパされている現場に来た私は、小林を連れて行こうとする男たちにいった。
「私がその子の彼氏なんですが…」
先ほどまで走ったせいで、少し息切れしながら頭を落とした。言葉の先をつぶして言ったために、隣から見れば少し馬鹿に見えたかもしれない。
少し時間が経つと、私は、すぐに自分が変なことを言ったことに気づいた。 私は、彼女を助けたいという気持ちだけが先立ち、うわごとを言ってしまったのだ。 私が彼女の彼氏だなんて。
私は念のため、首を回して街灯に背を向けている小林の姿を見た。
案の定、彼女はうつむいて何も言わなかった。彼女の顔は、影がかかったかのように暗い。 どうやら私は彼女を怒らせたに違いないなかった。
小林をナンパしようとした男たちは、私のいうことを聞いて、眉をひそめながら疑いそうな表情を浮かべた。
そしてしばらくして、茶髪の男の手によって私の首筋が持ち上がった。 その男たちはどうやら私の言うことを信じていないようだ。
彼らは私を殴るつもりなのか、全身から軽快な音を立てて肩と拳を解き始めた。 私は、襟首に握られている手から逃れようとしてみたが、彼らのかなりの強い力に抵抗することはできなかった。
私は、目をじっと閉じて、そのまま殴られることを待った。男たちは、そんな私の顔を見ながら、少し苦笑し、腕を後ろに伸ばした。
そしてその時だった。
そんな私の姿を見ていた小林は
「そう...私が彼のガールフレンドなんですが…?」
と少し小さな声で、男たちに向かって言った。
私はそんな彼女の言葉を聞いて、びっくりした。 彼女が、私が言ったうわことに乗り込んだからだった。何より、彼女が自分を私のガールフレンドと名乗るこの状況に、顔が赤くなり、恥ずかしさを感じた。無論、気分はとても良い。
その男たちは彼女のいうことに、暫くの間、お互いを見つめ合いながらためらったが、結局、諦めたようで、舌打ちをしてから私を床に叩きつけた。そして、その男たちは、不満な顔で、小さな声で何かを呟きながら、背を向いて、道に沿って、歩いていった。
床に尻もちを打つと同時に、お尻から頭の先まで、腰を伝って電気が流れるような感じがした。
私は痛みで、手を後ろにして、腰を軽くたたいた。
コンコン。
でも、こんなに簡単に諦めたようでよかった。と私は、どんどん遠くなっていく彼らの後ろ姿を見ながら言った。あの男たちは、ああ見えても、良心は持っているらしい。
その男たちの姿が消える頃、小林は私に近づき、感謝すると言って微笑んでくれた。 彼女の笑顔は、相変わらず天使の笑顔そのものだった。
そして彼女は、感謝の意味で自分がおごると言い出した。 小林は、私に何か食べたいものはありますかと聞いてきた。
私は。彼女の言葉を聞いて、この機会を逃したくなかった。 この絶好のチャンスをだ。
私は息を大きく吸い込み、決心した表情で口を開いた。
「その代わりに、今から私とデートしてください。」
と床にひざまずいて、小林に向かって手を差し出し、彼女にデートの申し込みをした。
小林もこのように猪突的なデートの申し込みは初めてのようで、慌てた表情を浮かべた。
彼女はあごに手を当てて少し悩んだ末、彼女はまるで童話の本から出てくる姫が、王子の手を握るように私の手をそっと握り、デートの申し込みを受け入れてくれた。
彼女と手が触れ合った私の顔は、赤く燃え上がり、爆発寸前だった。
***
私たちは少し歩いて、小さなカフェに入った。 人はそれほど多くはいないカフェだった。 ここは彼女がよく来るカフェだから、カフェに行くならこっちにしようと彼女が言ったのだった。
店に入った私たちはまず、ざっと店内を見てから、四角い木製のテーブルを挟んで、向かい合うように座った。 そして店員に注文を簡単にした。
店員が行った後、私たち二人は最初は、何から話せばいいのか分からず、二人とも目をじっとしていられずに、そわそわしていたが、私が先に勇気を出して自己紹介をした。
"私は、松本良太。1年6組の。こ..これからよろしく頼む。"
思わず声が震えていた。もっとかっこいい声で話したかったが、あまりに緊張したせいで、それはできなかった。
小林も私の自己紹介の後、簡単に自己紹介をした。
"あたしは、小林美月。。。よろしく。"
と彼女は少し、頬を赤くした顔で話した。その顔も可愛いと、私は彼女のその顔を見ながら、心の中でそう呟いた。
そして私は、話が始まったのをきっかけに、小林に先ほどあったことについて聞いてみながら、話を続けようとした。
幸いなことに、彼女は私の言葉に答えてくれ、私たちはお互いについて話し始めた。
そしてだんだん彼女と会話をしながら、私は彼女に趣味について聞くことになった。
"小林は、普段、暇なときになにするの?特に趣味はない?。"
正直、気になった。 小林のような美しい女性はどんな趣味を持つかと。
小林は顎に手を乗せて、私の質問にしばらく悩んだ後、口を開いた。
"あたしは、小説を読むこととか。。。えっと、料理するのが好きかな。。。"
彼女は少し首を傾げながら言った。
私は彼女の答えに驚き、少し目を大きく開けた。 なぜなら、私も小説を読むのが好きなだけでなく、料理には自信があったからだ。
私は、ちょっと上ずった声で、自分も小説を読むのが好きで、料理は幼い頃から母に教わったことがあって、自炊できるほどの料理の腕は持っていると、小林の答えに相槌を打った。
共通点を持っているという事実に、私の胸はどきどきしていた。
彼女も私の返事に驚いたらしく、私の返事を聞いて、彼女の大きな目をより大きく開けた。そして、両手を自分の口元に当てた。その姿はまるで、驚いたミーアキャットに似ていた。
少しの静寂の後、今度は、彼女が先に口を開いた。話す彼女の目は、キラキラと輝いていた。そんな彼女の姿は、私に少し興味を持ち始めたように見えた。彼女が話す度に、彼女の柔らかそうに見える、くれない色の小さくてきれいな唇が、とても魅力的に動いた。
小林は話しながら、自分が文系であり、一人で本を読むのが大好きなので、将来、出版の方で働いてみたいと、結構興奮した顔で、私に言った。
私は。また、そんな彼女の言葉に驚き、自分も文系であり、将来、作家になる夢を持っていると答えた。もちろん、これは答えるための嘘ではなく真実である。 私はずっと前から、作家の夢を持っていた。
小林も私の答えに、より私に興味を示し始めたように見えた。
私たちは、その時、暫くの間、お互いを見つめ合った。
今、私の目の前に座っている、性格も優しくて、とても魅力的な、私と趣味も似てて、将来の夢も似ている美しい女性。
小林 美月(こばやしみづき)。
私は、これが運命であることを確信した。
私たちは、そうからかなり長い間、カフェに座ってお互いのことを話した。話を交わしながら、私は、彼女が高校に入ってから一人暮らしを始めたことを知った。そして、彼女の母親は、実は、彼女が幼い頃に事故で亡くなり、それと同時に、彼女の父親は家を出て、小林は母親の妹のもとで育ったことも知った。また、彼女は家でベルという名前の猫を飼っており、以前、都心の街を歩いていたら、ある人にキャスティングされそうになったハプニングがあったことなどを知った。
もちろん、小林から彼女の母親が、彼女の幼い頃に、事故で亡くなったという話を聞いた時は、より詳しく聞きたい気持ちだったが、やはり、聞くことは辞めることにした。
突然、この和やかな雰囲気を台無しにしたくなかったからだ。
私たちの会話は、まだ終わりそうになく、私たちはカフェで、運ばれた飲み物を飲みながら、もう少しお互いについて会話をした。小林は、私が話すとよく笑ってくれた。
笑う彼女の笑顔は、あまりにも明るいせいで、彼女の笑顔を見るたびに、私の顔も自動的に微笑んだ。
小林が笑うとき、彼女の顔をよく見ると、彼女は微笑むたびに頬の両側にえくぼを見せた。 人差し指ですっぽりさしてあげたい可愛いえくぼだった。
私もまた、彼女と会話をしながら、思わず笑ってしまうことが多かった。 小林と会話するのがとても楽しかったからだ。 彼女は本当に人を笑わせるユーモアのセンスに優れていた。
そうやって、お互い、楽しく話をしていた時、私は思い切って彼女に携帯電話を差し出しながら、連絡先交換を申し込んだ。 緊張してしまったせいで、携帯電話を握った自分の手に汗が染み込み始めた。
小林は、うつむいて携帯電話を渡して来る私を見て、少し戸惑った表情はしたが、私の気持ちに気づいたらしく、再び明るい顔に戻り、私の連絡交換にうなずいてくれた。
不安とは裏腹に、快く承諾してくれた彼女に、勇気ある者が美女を得るという言葉が、このような状況を物語っているのかもしれないと、私は思った。
私たちは、カフェでもう少し会話をし、黄色い太陽が半分水平線に沈む頃、私たちはやっとカフェを出た。
外に出てから、携帯の時計を見ると、画面には6時50分を示していた。私たちは日が暮れるのも知らずに、約2時間もお互いのことについて話したのだった。
カフェを出た私たちは、横に並んで道に沿って歩き始めた。他の人から見れば、カップルに思われるかのような、とてもいい雰囲気だった。
私たちは、道に沿って歩きながら、時々お互いの顔を見て目が合い、頬を赤くした。
私は、今までは何も気づかなかった、いや本当に彼女に変な点はなかったかもしれない。
むしろ彼女はとても魅力的な異性としか思えなかった。
***
私たちはそれぞれの家に行く前に、公園へ少し散歩することにした。 小林が先に私にそう言ったのだった。
正直、彼女からそのようなことを聞いたときは、驚きと同時に、体の奥から喜びがこみ上げてきた。 彼女も私ともっと話がしたいようだったからだ。
もしかしたら、彼女も普段あまり起こらないイベントを、私よりも楽しんでいるのかもしれない。
私は道の上を歩きながら考えた。 このまま時間が止まって、彼女とずっといたらいいのにと。
いつの間に、公園に到着した私たちは、公園のブランコに席が空いているのを見た。それを見た小林は、私の手をぎゅっと握って、私をブランコの方へ連れて行った。
こうやって、彼女と手を握るとは予想外だったが、彼女のこんんな子供的な面も、可愛く感じられた。風で髪が靡く彼女の後ろ姿を見ながら、思わず笑いが出た。
ブランコの上に座って、脚をまっすぐに伸ばすことと、後ろに向けることを繰り返し、優しく動きながら、私は、隣のブランコに座っている小林に、少し緊張した姿勢で、注意深く聞いてみた。
「小林は、人気も多そうだけど、今まで告白してきた男の中で、気に入ったり付き合ってみたいなと思った男はいなかった?」
実は、彼女がどんな人が好みなのかを聞こうとしたが、話の要点が少しずれてしまった。
彼女は顎に手を当て、首を左右に少し傾げながら、私の質問に少し悩んだ後、特に気に入った男はいなかったと答えた。
「特に、いなかったと思う。」
彼女の答えを聞いてから、私は、もう少し勇気を出して、彼女に直接聞くことにした。
「小林は、どういう人が好み?」
彼女にそういった後、手に汗が染み付いてきた。
彼女は私の言葉に少し笑って、
「良太、みたいな人?かな?」
と少し、いたずら交じりで言った。
私は、一瞬、顔が赤くなるのを彼女にバレないように、手で顔を隠した。彼女は、そんな私を見て、手を唇に当てたままそっと笑った。
「あ、ごめん。(笑) 私は頼もしい人が好き。」
小林は、相変わらず、笑みを口元に浮かべながら言った。
私は、そんな彼女の言葉に答えることが出来ず、自分の顔を彼女に見せないために、彼女がいる反対方向に、首をそらした。頭が熱くなりすぎて、一瞬、風を引いたかと思うくらいだった。
それから、少し時間が経ち、私たちの間には、しばらく沈黙が流れた。聞こえるのは、ブランコの鎖がきしむ音だけ。
そろそろ話の種も尽きてしまう頃だったし。空は暗く、時間は遅かった。もう彼女も私も、別れてお互いの家に帰らねばならなかった。
しばらくして、隣のブランコに座って、不安そうにじっとしていられなかった彼女は、突然、腕を伸ばし、私の袖をそっとつかんだ。
彼女の突然の変な行動に、私は少し慌てたが、隣で私の服の裾をつかみ、うつむいている彼女に、大丈夫かと聞こうとしたとき、小林は私の腕の袖を握っていた手に力を入れ、私が想像もできなかったことをいった。
「今から私の家に来る?」
小林は、うつむいていた頭を上げて、小さな声でささやくように私に言った。私の顔を眺める彼女の目は、やや涙で潤って光って見える。
私は、急な彼女の提案に戸惑ったが、私は、まだもう少し彼女と一緒にいたかったし、何よりも、彼女の提案を断ることはできなかった。
目も前にいる小林は、私が提案に断れば、すぐにでも泣きそうな表情をしていたからだ。
結局、今夜は彼女の自炊部屋に行くことになった。
私は、彼女と一緒に、彼女の自炊部屋に向かいながら、家にいる両親を心配させないために、「今日は友達の家で遊んで帰るよ。」と携帯メールで送った。
私の両親は友達の家で夜遅く遊ぶことで、特に文句を言う方ではなかったが、礼儀としてだった。
そうやって彼女の自炊部屋に向かっていると、私はふと気になった。 彼女が自分の家に私を招待した理由が。
普通、女性は自分の家に誰でも連れて行ったりはしない。
私は正直、嬉しかった。 彼女も私が気に入ったようだったから。
道を歩きながら、適当に家に呼んだ理由を察してみたが、まさかそんなことが起きるだろうかと私は思った。
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