第22話 終
‘’あのコ‘’が消えると私の手は彼の中から抜けていた。
「消えたのよね?…」
私は辺りを見渡して本当に消えたのかを確かめていた。
「ああ、アイツは消した。
もう、出て来る事は無いだろ…」
彼は疲れ切って床に座り込んでいた。
「何で‘’あのコ‘’は私を狙っていたんだろう?
私は願わないのに…」
「アイツは、おまえの中にある‹希望の光›が欲しかったんだろうな。
闇の自分には作り出せない‹希望の光›を取り込んで更に違う闇に変化しようとしていたんだな…。」
私の中に‹希望の光›があるなんて思えなかった。
何処にでもいる人間だし羨んだり欲だってある。
不思議そうにしていると彼はクスリと笑い呆れていた。
「おまえは俺が願いを叶えるって言った時、
〜いいの、きっと何時かは淋しくなくなる日が来るから〜
って言ったんだ。
俺はそれから変われたんだ…。
始めは辛い目に合っている人の願いを叶えるだけだったのに、段々と噂が広まって欲深い人がやって来るようになって、俺は次第に自分の中で闇を作ってしまいヤツが現れ出したんだ。
そして、ヤツに上手いこと言われて願いの代償を頂くようになって、俺は苦しんでいた。俺は代償が欲しくて願いを叶えていた訳じゃないからな。
おまえに会って俺は強い意思を取り戻せて、ヤツとは分裂したんだ。」
彼は過去にあった出来事を話してくれた。
「ごめんなさい。私忘れていた…。」
「だよな。3年前に会った時に俺が分からなかったもんな。
世間の波に揉まれてユルユルだったけどな。
でも…おまえがおまえのままで良かったよ…。」
彼は私の頭をぐちゃぐちゃに撫でながら笑っていた。
「彼女…
もう返って来ないよね?…」
「仕方ないさ…
彼女は本当の意味で闇に呑まれちまったからな…。」
しんみりと彼女を思い出し悲しくなった。
「じゃ、そろそろ行くわ。」
彼は立ち上がり私に背を向けた。
「行くって?? 何処に!?」
私はやっと会えた彼と離れたくなくて引き止めた。
「俺は…
自分のせいでヤツを作り出して、沢山の人を犠牲にしてしまった。
二度と同じ事を繰り返さないために、この世から消えなきゃいけない…。」
振り向きも゙せず呟いた彼は私の手を振りほどいた。
「でも、‘’あのコ‘’がした事は、あなたのせいじゃないよ。」
「俺は人を救うために作られたんだ…。
だから人をキズつけた以上、此処にはいられないんだ…。
じゃあな…」
そう言う彼の体から白い煙が出て居なくなってしまった。
私は一人残され、淋しくて泣いていた。
…何時か淋しくなくなる日が来るから、おまえのままでいてくれよな…
優しく吹く風とともに彼の声が聞こえた。
〈終〉
からから 桜 奈美 @namishi
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