第19話  砕

私達は恐る恐るビルの中に入ると‘’あのコ‘’の高笑いが聞こえて来た。

「やっと来た~

やっと来た~」

腹ただしいその声は辺りに響きわたり不気味な空間を作っていた。

周りを見渡して‘’あのコ‘’を探してみたけど姿は無く、声だけのこの状況に私達は恐怖に潰されそうになっていた。

そんな時、ポケットに入れていた女性から貰った御守が温かくなり私の心を落ち着かせてくれた。

「私に用があるんじゃないの?

来たんだから、姿を見せなさいよ!」

私の言い方に怒ったのか突風が吹き出した。

すると隣に居た彼女が私の手を話した。

「ねえ、連れてきたんだから、私を解放してくれるんでしょ!?

約束でしょ!!」

気丈に言い放った彼女は私の知る弱々しい彼女では無かった。

「えっ!?

どうしたの?

連れて来たって?解放って?」

私は驚きを隠せず、アタフタしながら彼女に問いただした。

「ゴメンね。

始めから私はあなたを連れて来る事が条件で願いを叶えて貰ったの。

あなたを此処に連れて来るには、色々な段取りが必要だったの。

それに‘’あのコ‘’が自分の時が満ちてから連れて来いって言うから、すぐには連れて来なかったの。」

私は唖然として動けなかった。

「やっと来た~

やっと来た~

………

約束だったな。

さあ、おまえは僕の中で解放されるが良い!」

その声と共に凄い勢いで彼女は引っ張られてしまった。

咄嗟に彼女の手を掴んで引き止めようとしたが、すざましい力に敵わず私は手を話してしまった。

「約束が違うわ!何で私があんたの中に入らなきゃいけないのよ!」

みるみるうちに彼女は部屋の奥へと引きずり込まれてしまった。

「彼女を返してよ!!」

‘’あのコ‘’は私の叫びを馬鹿にするかの様にまた高笑いを始めた。

「おまえ、騙されたんだよ。

大事に守ってきた友達の彼女にね。

彼女は自分の欲と引き換えにおまえを連れてきたんだよ。

それでも返して欲しいのかい?」

嫌味な言葉でケタケタ笑い続けていた。

‘’あのコ‘’の言っている事が私の心に刺さり悲しくなっていた。

「私は………」

「ほらね。

人なんてそんなものさ。

友達だろうが恋人だろうが家族だろうが、自分の欲の為なら平気で裏切られるのさ。

分かったろ?

誰かに悪いとか、そんなの綺麗事さ。

だから自分の願いなんて簡単に手に入れるべきなんだよ!」

高笑いを続けながら勝ち誇った様に叫びだした。

「でも……

それは違うと思う。

誰かを犠牲にして願い何て叶えるべきじゃない。

そんな事より…

彼女を返してよ!

私の大事な友達なんだから!」

歯を食いしばりながら言うと

「おまえは僕には分からない感情を持っているんだな…

やっぱり、僕の無いものは手に入れないと…」

小声で呟いた声は漏れて聞こえていた。

「………

じゃ、彼女を返す事がおまえの願いなのか?」

‘’あのコ‘’は探る様に問いかけてきた。

〜アイツに願うなよ〜

「ね、願いじゃないわよ!」

私は彼の言葉を思い出し、慌てて否定した。

「またーー  願いでしょ?

彼女を返して貰うって願いでしょ?

それ以外考えられないじゃん。」

言葉巧みに誘導しようとしていた。

「違うわ!!

…………

彼女を返してと言うのは、命令よ!

今すぐ返しなさい!!」

思いつきで言った私の言葉に‘’あのコ‘’は怒りをあらわにして暴れ出した。

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