第18話 望
私には何の策も浮かばなかったけれど、それでも‘’あのコ‘’に会って今度こそ決着をつけなきゃいけないと思った。
何故色んな人を巻き込んでまでして今も私なんかに会いたがっているのか?
前に願いを言わなかったからだけなのか?
そもそも本当の目的は何なのか?
私が行けばその答えは出ると思った。
もしも此処に彼が居たら、こんな無茶な私を止めていたかもしれない。
今、彼は何処にいるんだろう?
あの時に‘’あのコ‘’に消されてしまったのだろうか?
不安と寂しさで涙が止まらなかった。
私は女性に連絡をして会う事を伝え待ち合わせ た。
女性はあの時の彼女の様に体が黒いシミになってしまっていて私を待っていた。
「決めたのね…
あなたの事は良く知らないけど、こんな事に巻き込んでしまって悪いと思っているわ。
‘’あのコ‘’に会えって言った私が言うのも変だけど、気持ちを強く持って絶対に負けないでね。
これからのあなたの未来の為に…」
女性はそう言って私の手に紫色の小さな棒を渡した。
「これは何ですか?」
「これは私の実家にあった御守。
嫌なモノを追い払うみたいだけど…効きめがあるかは分からないの。
けど持っていて気持ちは落ち着ける気がしたから渡しておくね。」
「ありがとうございます。」
手のひらサイズの小さな棒は優しい温もりを感じた。
私はそっとポケットにしまい心を落ち着かせた。
女性と‘’あのコ‘’が居ると言うビルの前まで来ると彼女が待っていた。
「どうしたの?
あなたは来ちゃダメよ。」
女性は彼女に帰るように言ったが彼女は言う事を聞かなかった。
「私のせいで、もう誰もキズつけたくないから私も一緒に行く!」
彼女の意思は硬かった。
「でも……
あなたは心が弱すぎる……
つけ込まれて危険なめに合うわよ!
きっと友達も危険なめに合うわ……」
女性は彼女を必死で説得していた。
彼女は私の腕を掴んだまま離れず
「私も一緒に行かせて!
あなた一人に嫌な思いさせたくない。」
私達はあの時、彼に任せて待ってるだけだった。今は私達が何とかしなくちゃいけない気がして、私は彼女の手を握り頷いた。
女性は諦めたようで私の肩を叩いた。
「私はあなた達に会うのは最後だと思うけど…
無事に乗り越えてね。私は祈っているわ。」
そう言うと背を向け歩き出した。
暫く行くと女性は少しずつ消えて居なくなってしまった。
静まった時間が恐怖を増していた。
私達はお互いに手を強く握って震えを抑えていた。
「あの人も皆と同じで‘’あのコ‘’に呑まれちゃった…」
彼女の言葉に私はこれから向かう先に望みがあるのか更に不安になっていた。
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