第16話  渦

私は、彼女を‘’あのコ‘’から本当に解放出来ないのかと悩んでいた。

ずっとこのまま負の連鎖が続いてしまうのなら、この世から純粋な願いは願ってはいけなくなる気がし、そんなのはおかしいと思った。


私はため息ばかりの日々を過ごしていた。バイト先にまた女性が現れ私に手招きしてきた。

嫌だな…と思いながらも近寄り話しかけた。

「お客様、どうかなさいましたか?」

「あなたに大切な話があるの。バイトが終わったら、向かいの店に来て。」

そう言うと女性は出て行ってしまった。

私は女性の話しは‘’あのコ‘’の事だと察し迷っていた。

知らないと言ったのに、また来るなんて何かを読まれているのかも知られない。

でも、‘’あのコ‘’の事を知ってると認めたら、彼女が‘’あのコ‘’に言われて紹介した事も願いの先にある出来事も知っていたって事も分かってしまって怒り出すに違いないと思った。

けれど、今‘’あのコ‘’が何処に居るのか分かるかも知れない。

私は意を決して女性が待つ店へ行った。


「お待たせして、すみません。お話は何でしょうか?」

冷静な態度で女性の前に立ち軽く頭を下げた。

「来たって事は、やっぱり‘’あのコ‘’を知ってるのね?

私は‘’あのコ‘’に願いを叶えて貰ったの。そして、あなたを探すように言われたの。

大体の事は、‘’あのコ‘’から聞いていたから時間はかからなかったわ。」

「私の今を知ってんですか?」

私は知らないと否定もせず答えていた。

「あなたが大学生でバイトしてて、彼女と友達だって事位しか知らなかったわよ。

だから、彼女の周りから探って私があなたを見つけたの。

今は彼女にあまり会ってないのね…」

女性が何者かは分からないけど、私を探し出すなんて凄い人だと怖くなった。

「彼女の事を…恨んでいますか?」

「恨んでは無いわ。

自分で決めた事だからね。

私にはどうしても自分では何ともならない願いがあったから、‘’あのコ‘’を教えて貰って感謝してるわよ。」

‘’あのコ‘’へと導いた彼女を恨んでないと聞きホッとしたが、女性のコーヒーカップを持つ右手のシミがあのシミと同じだと分かり心が苦しくなった。

「で…話って何ですか?」

「あなたにお願いがあるの。

‘’あのコ‘’に会ってくれないかしら?」

「えっ!?何故ですか?

私には願いは無いですけど…」

‘’あのコ‘’に会えなんて、とんでもない事を言われ困惑していた。

「そうよね…

嫌よね…

でも、このままだと彼女は本当に‘’あのコ‘’に呑まれてしまうわね…」

「何で今更!?呑まれるって!?」

「彼女ね、‘’あのコ‘’に願いを聞いて貰ったのよ。そして色んな人を‘’あのコ‘’に紹介して、私になってあなたを探して連れて来るっていう代償を言い出したのよ。

多分、今は力を蓄えたからだろうね…」

彼女が‘’あのコ‘’に願ったなんて、この前会った時には言ってなかったから驚いていた。

私の知らない所で、また何かが始まっていると震えが止まらなかった。

まるで闇の渦に呑まれてしまう気持ちになった。

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