第15話 呑
こんな相談なんて‘’あのコ‘’を知る彼女しか居なくて、私は躊躇いながらもメールをしてみた。
久しぶりに直接会って話したいと返信が来て、あの公園で待ち合わせる事になった。
私が行くと彼女は大きく手を振って待っていた。
暫く会わない間に見かけはすっかり変わっていたけど、笑顔はあの時のままで何だかホッとした。
「元気そうだね~。
大学は楽しい?私は就職しちゃったから毎日忙しくしてるよ。」
「うん。まあね…
あのね…
あのコの話し…
したくないとは思うけど…
……
バイト先でシミのある女性に‘’あのコ‘’の事を突然聞かれて驚いちゃって、あなたに創したくて連絡したんだ…」
そう切りだすと、笑顔だった彼女は私から目線を外しバツが悪そうな顔をしてポツリポツリと話し出した。
「私が教えたの…
‘’あのコ‘’の事…
願いを叶えでくれるよって…」
私は彼女の意外な告白に言葉を失った。
「でも…もうあの家は無いんだよね!?
前に無くなったって…
あのコも消えちゃたんじゃなかったの?」
「まだ居るの…
‘’あのコ‘’はまだ居るの…」
「えっ!!何で…
あなたに会いに来たの?」
彼女は首を横に振り
「姿は見せないけど、私が一人になると話し掛けてくるの…
あの声…聞き間違えないし…
あの時の話もするの…」
もう消えたと思っていたのに、今だに居て更に彼女に付きまとっているなんて驚いていた。
「いつから?何かされたりするの?」
「最近になってから聞こえてきて…
何もされないけど…
私に誰か願いたい人を探して来いって…
連れてこないと今度こそ私を呑み込むって言うの…
私、怖くて…
それで近所に住む女の人に教えたの…
‘’どんな願いも叶えてくれるコを知ってるよ‘’って…」
あのコが彼女にそんな事させるなんて許せなかった。
「呑み込むなんて…
ただの脅かしじゃない?
だって姿見せないんでしょ?
声だけなら幻聴かも知れないし…」
そう言うと彼女はスカートをギュッと握りしめ震えていた。
「私も始めはそう思ったけど、毎日話しかけて来て…
あの時の事を思い出して…
呑み込もうとしていたし…
あのコが怖くて…
でも、このままどうしたら良いのか分からなくなって…」
彼女の気持ちは私でも同じだった。あんな嫌な思いをして苦しんでいた時間は忘れられないキズとして記憶に刻んでいた。私達はあの日の事を心の奥にしまって過ごして来た。
今になって彼女の前に現れて平穏を乱すなんて、気がおかしくなってしまいそうになって聞くしかなくなるのかも知れない。
だからと言って、また誰かに同じ苦しみを与えなきゃいけないのか、何故その手助けを彼女がしなくちゃいけないなのか、私はあのコが許せなかった。
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