第14話 再
あれから三年が経った。
私は大学生になり彼女とは疎遠になっていったが、気になっていたので時々彼女のインスタをたまに覗いて、見る限り元気にやっている様子を確認し安心していた。
そして私は、彼に何処かで会えるんじゃないかと思い、街を歩いていれば探してしまう自分がまだいた。
‘’もう、忘れなきゃね‘’
そう言い聞かせてはいたけど、自然に求め探し続いていた。
そんな空白を埋めるかのようにバイトを始めて毎日を忙しく過ごしていた。
ある日、バイト先のお客さんで一人の女性の左手に黒いシミがあるのを見つけてしまい戸惑った。
‘’まさか…あのコはまだ居るの?まさかよね…‘’
女性の黒いシミが、あの時に彼女が苦しんだシミに似ていて、私は動揺を隠すのに必死だった。
なるべく隅の方で女性に近づかないようにしていたのに、何故か呼び止められてしまった。
「ねえ、お姉さん注文いいかしら?」
私はドキっとした。
かなり離れているのに、女性は私に向かって声を掛けてきた。
そっと女性に近づき
「ご注文は何に致しましょうか?」
目をそらしたまま注文を聞くと
「あなた…
あのコ知ってるでしょ?
知ってるわよね?
私はあのコから、あなたを見つけるように頼まれたの…
知ってるでしょ?」
女性はトゲトゲしく言い寄ってきた。
私は‘’あのコ‘’と聞いて背筋が寒くなった。
「あ、あのコとは?……誰でしょうか?」
無理矢理平常な顔をして答えると女性はため息を漏らした。
「本当に知らないの??」
「は、はい。」
私の顔を疑いながら見て又ため息をついた。
「そう…じゃ、いいわ」
そう言うと女性は席を立ち注文もせず帰って行った。
思い出したくも無かった‘’あのコ‘’の事を突然知らない女性に聞かれるなんて思いもしてなかった。
あの女性は‘’あのコ‘’に会って願いをしたのか?どんな代償を求められたのだろう?と思うと怖くてたまらなかった。
‘’あのコはまだ居るんだ…‘’
あれから何年か経っているのに今更あの事を思い出し恐れなきゃいけないなんて運命を呪いたくなった。
私は聞かなかった事にしようかとも思ったが、それは無理だと自分でも良く分かっていた。
忘れよう忘れようと毎日をいても雨の日になると蘇ってきていた。
あのコの不気味な笑みとか怒りにかられた姿とか、あの日の時間は無かった事にはならない。
全てが本当に目の前で起こった有り得ない事実だから…
忘れられる訳は無い。
これからどうなるんだろうと考えると不安でたまらなかった。
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