第13話  忘

‘’彼はどうなったんだろう…

あのコは居なくなったんだろうか?‘’

私は、結局何も出来なかった自分が悔しくて情けなくて眠れずにその夜を過ごした。


朝になり、私は居ても立っても居られず一人であのコの家に行ってみた。

彼女には、この嫌な出来事を早く忘れて欲しくて連絡はしなかった。

恐る恐る静かに中に入り、あのコの部屋に着くと扉はいたけど無くなっていた。

驚きながら部屋を隈なく探してみたが、何処にも見当たらなかった。有ったはずの扉の壁は痕跡すら残ってなかった。

暫く家の中を歩いてみたが、昨日の散らかり荒れた残がいの一つも無く、ただの古い廃屋になっていた。

私は夢でも見たかの様な変な気持ちになっていた。

ふと、庭を見るとヘコんだ穴はそこにまだあった。

‘’やっぱり、昨日の出来事は本当にあったんだ…あのコはここに居たんだ…‘’

そう確信して、私は急いであの公園に向かった。


彼が居るかも知れないと来てみたが、ここにも居なかった。私はただ彼に会いたかった。無事である事を確認したかった。

心にポツンと穴が空いてしまったそんな寂しさが込み上げてきた。

‘’彼は何処に居るんだろう…‘’

見上げた空が青すぎて痛かった。

涙が自然に流れ落ちた時、優しい風が吹き私を包み慰め癒やしてくれているみたいで温かく感じた。

彼女もこの出来事があったから来る事はなかった。やっと苦しみから開放されたんだから、それで良かったと思った。

一人公園で今までの出来事を振り返って考えていた。

‘’彼女に出会い‘’そして‘’あのコを知り‘’

そして‘’彼に会った‘’…

有り得ない事が次から次へと起こって慌ただしい日々だった。

私は毎日つまらなくて何かを求めていたけど、つまらない位の方が良かったんだと実感していた。


それからは公園に行く事は無くなって、学校へも普通に通う様になり平凡に暮らしていた。

彼女とは、たまに連絡しあってはいたけど会う事はなかった。あのコの話も彼の話も一切せず、あの出来事をお互いに忘れようとしていた。

きっと、それが良いのだと思っていた。

それでも、私は時々思い出してしまって眠れない日もあった。

そして思うのは

‘’あのコは何故?私を追って居たんだろう?

特別な事なんて何も無い、ただの何処にでも居る子なのに何故私なんだろう?

それに彼は、あのコと同じってどういう意味なんだろう?

あのコも彼も消えてしまったんだろうか?‘’

心の奥で妙に引っ掛かっていた私はモヤモヤしていた。

こんな日がいつまで続くか分からないけど、時間が何時か忘れさせてくれると信じて待っていた。

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