第11話  狂

あのコはまるで物語に出て来る悪魔のような怪物みたいな姿になり私達の前を塞いでいた。

「さあ、願いを言うんだ!」

あのコのガナ声が家中に響きわたり私達の恐怖を増していった。

「おまえ、一度会ったヤツとは会わないんじゃないのか!」

彼は彼女を指差し言い放った。

「本来なら一度願いを叶えた人間とは会わん。

それが掟だからな。

しかし、彼女が願いをすると言ったから、そっちのコのシミを消したのだ!

なのに、逃げるとは何様だ!

さあ、願いを言うのだ!」

あのコの怒りは家の物にあたり色んな物が飛び交っていた。

「おまえは掟を破ってまで何故に執着してんだ!?」

「関係ないだろ!!

ゴチャゴチャうるさいヤツだな!!」

あのコと彼はそんな言い合いをしていた。

「私は……」

私が言いかけると、あのコは怪しげな笑みをし見ていた。

その時、彼が慌てて止めようと私の前に立ち首を横に振った。

あのコは迫り寄り

「さあ、さあ、早く願いを聞かせてくれ。」

と急かしていた。

徐々に詰め寄られ、戸惑いながらも恐怖を振り払うように私は心の中で

’大丈夫…大丈夫…

きっと大丈夫‘’

と強く唱えていた。

彼は私と彼女を守る様にあのコとの間に立ち塞がってくれていた。

そんな彼を見て、あのコは何かを思い出したみたいで

「おまえ…確か前に…居たな…」

あのコは彼の顔を見つめ考えていた。

「…あっ、あの時か!また、邪魔しに来たんだな!」

「うるさいな!

とにかく彼女はダメだ!おまえには渡さない!」

彼とあのコは因縁があるようで睨み合いを続いていた。

「そこをどけ!おまえ、俺に敵わないって知ってるだろ!?

わかってるなら、大人しくしていろ!!」

家の中なのに、強い風が吹き地響きを鳴らしていた。


私と彼女は抱き合い身を守り、飛ばされないように必死で立っていた。

「邪魔なヤツめ!!

なら、おまえから俺に取り込んでやる!」。

あのコの大きく開けた口はブラックホールの様な空間が出来ていた。

このままじゃ、彼があのコに呑み込まれてしまうと思い

「あなたは願いをしない人には何も用は無いでしょ!彼は関係ないでしょ!」

私がそう叫ぶと

「こいつは人じゃないから、願いなんて関係ないのさ。

俺の邪魔をするから呑み込んで消してやる!!

ただ、こいつが俺の中で上手く溶け込むかはわからんが、面倒だから取り込んでやる!!」

怒りに駆られ荒れ狂い、彼を勢いよく吸い込もうとしていた。

彼は私達を守りながらも必死に耐えていた。

私は彼の背中を見ながら

‘’彼が人じゃないってどう言う事?‘’

と驚いていたが、それよりも今はあのコに皆んな吸い込まれてしまいそうで耐えるのに精一杯だった。

あのコの言っている事は全く理解出来なかった。

このまま威力を増しているあのコに、私達は呑み込まれてしまうのかと諦めかけていた。

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