第10話 消
あのコは私の投げ捨てた言葉にスグに喰い付いては来てはくれず、暫く怒りをあちこちに撒き散らしながらブツブツと何かを言っていた。
傷んだ家の柱は今にも折れてしまいそうで、頭を抱えしゃがみ込んで様子を伺っていた。
私が無謀な賭けだったのかと弱気になっていた時、ガタガタ鳴っていた家が急に静かになり、あのコに目を向けて見ると私を静かにジッと睨みつけていた。
「僕が彼女のシミを消せれば、君は願いを言うんだな!」
「あ、あなたが消せればね…
でも、あなたには出来ないでしょ?」
私はあのコの気迫に負けじと弱気になっていた自分を隠して強気で言い放った。
あのコは一瞬襲い掛かる様な仕草をしたが、私は必死で怖さを見せまいとこらえていた。
暫く無言でいたあのコは言い出した。
「分かった……
僕には出来ない事は無いって証明してあげるよ!
彼女のシミなんて簡単に消せるって見せてあげるよ。」
そして大きく広げた手はみるみる間に輝き出し、またブツブツと何かを言い出した。
一声したかと思うとあのコの体は元の白く丸い綿に戻っていった。
それを見て私は急いで隣の部屋の彼女の様子を確認しに行った。
彼女のシミは少しずつ消えて無くなって白い肌になっていた。私は嬉しくて彼女を抱きしめて泣いていた。
「良かった…良かった!」
彼女もシミが消えて安心して泣いていた。
ホッとしたのも束の間で
「僕の力を信じたろう?
さあ、君の願いを言って。」
あのコは元の弾む声で私に話して来た。
この後の事を考えて無かった私は彼女を抱きしめたままブルブル震えていた。
さっきまでは気が張って強気を装っていた私だったが、彼女のシミも消えて安心してしまって返事に戸惑っていた。
「彼女のシミは消えたよね?
ちゃんと見たよね?
さあ、僕に願いをしてよ!」
私が応えに迷っていると側にいた彼が小声で囁いた。
「全力で走れ…」
私達は目を合わせタイミングをみて無我夢中で玄関へと走った。
「な、何!?
何処へ行く! 待てー!!」
ドスの聞いた怒鳴り声であのコが暴れ出した。
外の雨が強くなり雷まで聞こえて来た。
あのコの怒りがまた家中を揺らし動かし私達の後ろで叫び続けていた。
私達はここから逃げ出すのに精一杯で振り返りはしなかったが、気配であのコがすぐそこまで迫っているのが分かった。
玄関まで遠くは無いはずなのに、なかなか辿り着けなくて焦りながら逃げ惑っていた。
あと少しで出られる所まで来た時、目の前に何とも異様な姿をしたあのコが現れて睨みつけていた。
私達はその不気味な姿と鋭い目つきで動けなくなってしまった。
「何処に行く気だー! 願いをまだ聞いてないぞ!」
怒りかられ今にも襲いかかって来そうだった。
「俺様の力を信じたろう!!
さあ、願いを言うんだ!!」
あのコの口調は乱暴になり私達を行かせまいとしていた。
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