第7話 時
あれから2日間雨が続いて皆で集まる事は出来なかった。
3日目の午前中は少し日が射して行動出来そうだったので集合しようとなり待ち合わせ場所まで行くと彼は早くも来て待っていた。
が、彼女がなかなか来なくて連絡してみると
‘’ちょっと待っていて必ず行くから‘’
とメールが来た。
「早く来てくんないと雨が降り始めちまうな…」
彼は空を見上げ不安そうに言った。私も見上げながら無事に成功するのか不安になっていた。
お昼近く彼女はフードのコートで体を覆い俯きながら歩いて来た。
「ごめんね。なかなか家から出られなくて…」
ボソボソと告げて顔はあげないでいた。
「大丈夫? 何かあっ…」
私は彼女の顔を覗き込んで言葉を失った。
彼女はもう殆どの皮膚が黒いシミになっていて、本来の彼女が分からなくなりそうになっていた。
「今日が最後のチャンスになりそうだな…」
真剣な眼差しの彼を見て私は息を呑んだ。
このチャンスを逃せば彼女は消えてしまうかも知れないと考えるだけで怖くなっていた。
「私…大丈夫かな?…このシミ消えるのかな?…」
泣きながら彼女はうずくまってしまった。
「大丈夫だよ!しっかりして!私も彼も一緒に頑張るから。」
彼女を励ましながらも自分にも言い聞かせていた。
私達はあのコのいる家の前まで来ると顔を見合わせ大きく深呼吸をした。
私が進もうとすると彼が引き止めた。
「おまえは外で彼女が出て来るのを待ってな。」
そう言い彼女と家の中に入って行った。
私は一人残され心細くなってジッとしていられず玄関まで入って行った時、外はぽつぽつと雨が降り始めて来ていた。
古い家は奥にいる彼女達の声がつつ抜けで玄関の私にも様子が分かった。
「友達に会ってくれない?」
「いいけど…君の隣に居るコじゃなくて、玄関にいるコとなら会っても良いよ~」
扉の中のあのコの声までしっかりと聞こえていた。
「玄関には誰も居ない。何で俺じゃダメなんだ?」
「だって…君は願い事ないだろう?それに君とは会いたくない。」
外は雨音が聞こえ日差しが無くなっていた。
「いいじゃねぇか、とりあえず会って話を聞いてくれ」
彼は強い口調で言うと
「それが君の願い事かい?」
「違うけど…」
「ほらね~」
彼はさっきまでの威勢が無くなっていた。
私は心配になり、奥の部屋へと入って行った。
「ほら、やっぱり居るよ。僕の一番欲しいコが…」
彼女達は驚き私を見た。
「何で来たんだ!おまえは外にいろ!」
彼は慌て、彼女はガクガクと震えていた。
「そのコになら、会ってもいいよ。てか、会いたいな~」
意味深な言葉に頭が真っ白になり私は動けずにいた。
彼は私と彼女の手を引いて外に出ようとした。
「彼女のそのシミは後少しで埋ちゃうよ。時間は無いね~
でも、彼女がいけないんだよ~
願いと交換で僕に譲ってくれたんだからね~」
扉の向こうで、そう言い高笑いを始めた。
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