第6話  雨

彼の言う事が本当なら彼女はあのコに持ってかれてしまう。

半信半疑ではあったけど、彼女のシミが進行しているのを見て彼に頼るしかなかった。


「それで、どうやってあのコに取り入るの?」

「まず、その娘に一芝居打ってもらうかな。

たぶん、あいつは話に喰い付いてくるから、俺があいつを騙す作戦だな。」

「そんなに単純に騙せるの?」

私の冷めた口調に彼は

「あいつは馬鹿だからな。騙せると思うけど、その後にあいつが仕返しに何をしてくるか謎だな…また暫く消えてくれれば良いけど…

こればかりはやって見ないとわからないな…」

彼の曇った横顔から、この計画が難解なものであると読み取れて私は不安になっていた。

「雨の日と夜はヤツの有利になるから、晴れた昼間に実行しよう。」

「雨の日と夜は何でダメなの?」

彼女は彼に聞いていた。

「どっちも暗いだろ?

ヤツは暗い中だと自由に変化出来る…

俺も一度だけ見たことがあるけど、あれは…ヤバいな…

とにかく不利になりそうな時は避けよう。」

彼の強く握り締めた手からするとかなり危険なんだと悟った。

「でも、暫く雨予報が出てる…」

彼女は携帯の天気予報を見て悲しそうにしていた。雨が続いてしまって日が経ってしまうと彼女のシミが拡がってしまう。

「で、どういう風に騙すの?

事前に打ち合わせしておこうよ。」

「まず,彼女がヤツに困っている友達が外にいるから会って欲しいって語り掛ける。

ヤツは美味しい話だと連れて来いって言うと思うから俺が行く。

それからは俺に任せておけ。」

私達はどうしたら上手く事が運べるか日が暮れるまで話し続けていた。

「仕方ないな、雨でも日が射す頃合いを見計らって集まるか。」

彼の一言で解散する事になった。


彼女を送り届けてから私は彼と歩いていた。

「ねぇ、彼女の前では聞けなかったけど、扉のあのコは彼女を自分のモノにしてどうするの?」

「ヤツは…彼女を自分の一部に取り入れて自分の力を維持させるんだろう。

直接見たり聞いたりした訳じゃないけど俺が知ってる限りでも何年も前から、願いを叶えたいって言う人達がヤツに会い消えている。」

前から存在していたなんて考えただけで恐ろしく現実離れしすぎて私には実感がわかなかった。

「そう言えば、私はあなたと何処で知合ったの?」

彼は呆れた顔をして苦笑いをしながら私を見た。

「そのうち思い出すよ。てか、思い出せよな。」

「教えてくれたっていいじゃない!性格悪いわね。」

彼のからかい口調に私はムカッとしていたが、何処か懐かしさがある彼を憎めなかった。

「あなたは、あのコと会っても代償みたいなモノを取られたりしないの?」

「心配してくれるのか?嬉しいね。

大丈夫さ、俺は無事に帰って来るよ。」

そう言い残し、彼は帰って行った。

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