第5話 呪
私達は扉のコから彼女のシミを治す方法を聞き出せないまま途方に暮れていた。
彼女の姿を見て、このまま身体全部が真っ黒になっていったらと考えると居ても立っても居られなかった。
「私があのコに聞いてみるよ。」
「ダメだよ! 私こんなんになちゃったんだよ。あなたも同じ目に遭ったらどうするの?あのコは何かを求めてくるよ…」
「でも、どうすれば良いか聞かなきゃ…
一度会った人とは会わないって言ってたから、私ならあのコに会えるよ。」
私は苦笑いをしながら怖さを隠していた。
「でも…でも…」
彼女は両手を力強く握り拒んでいた。
「あのコは願いの代償に何かを求めてくるんでしょ?
私は願わないから大丈夫だよ。」
私はヘタに願って彼女のようになってしまうのは嫌だと思っていた。だから決して願わず、あのコから彼女のシミが無くなる方法を聞き出そうなんて甘い考えで言っていた。
「それは無理じゃねえか」
そう言って現れたのは見たことがある顔の男の子だった。
‘’あれ? 誰だっけ?…‘’
背の高い彼を私は見たことがあったが思い出せずにいると
「相変わらず不機嫌な顔してんな」
隣に座り込んで私をマジマジと見ていた。
「誰? てか、何なの?人の話に割込まないでよ!」
嫌味な言葉に苛ついて彼を突き放した。
「何だよ。困ってんじゃねーの?俺なら助けらるかもよ。」
彼は私達を見下ろしながらドヤ顔をしていた。
「だから、あんたは誰よ! 助けられるとか気安く言わないでよね!」
「これだろ?」
彼は彼女のシミを指差していた。
「これはそんな簡単に無くならないぜ。まあ、呪いみたいなもんだからな。」
「呪いって…
今時そんなナンパの仕方誰もしないわよ。私達は忙しいんだから、面白いがってないでサッサと消えてくれない。」
私は彼を追い払うよう手で払ってみせた。
「本当にいいの? また俺を帰すの?」
「またって…私何時あんたと会ったのよ?」
突然割り込んで気安く話して来る彼に苛ついていた。
「あなたなら、このシミ治せるの?」
彼女は彼の袖を掴み引き止めていた。
「治せるっていうか、消せるかもしれない方法を知ってるかな。
あんた、ヤツに願い事したろ?」
扉のコの話なんて詳しくしていないのに、私達は驚いていた。彼が何で願い事を彼女がしたのかのか知っているのか聞いてみた。
「何で知ってんの? あんたも願い事したの?」
「まさか〜。願い事なんてして喰い尽くされるなんてゴメンだね。
俺には願いなんて無いし、出来ればヤツにも関わりたくないしな。」
呆れ顔で言う彼の口調は私達を馬鹿にするかのようで腹が立っていた。
「どうすれば良いの?助けてくれるの?」
彼女は彼に更にすがっていた。
彼は私を横目で見ながら
「おまえが頼んだら協力してやる」
「な、何で私が頼むのよ!」
「おまえ、この娘を助けたいんだろ?」
彼の言い方が気に入らなかったが彼女を助けたいのは事実だった。
「たくっ、おまえは素直じゃねえな。まあいいや。」
彼は頭を掻きながら彼女の眼帯の中を隙間から覗きソコから拡がっているシミをジッと見ていた。
「左眼あげたんだ。あいつ何て言ってねだったんだ?」
「左眼ちょうだいって…」
「他には?」
「他に?…」
彼女は思い返しながら考えていた。
「じゃ、その時にあいつが言ってた事言ってみな」
「願いを叶えてあげたから、とりあえず左眼ちょうだいって言ってた…」
「それだな…」
私達は顔を見合わせてキョトンとしていた。
「あいつの汚いやり方だ。とりあえず…って言って一つ手に入れて、そこからヤツの分身を浸透させて最後には全部頂く。」
彼の話に背筋が寒くなった。
「そんなの…
あのコは何者なの?」
私が聞くと彼は少し悩んで考え込んでいた。
「ヤツが何者か何て知ろうとも思った事ないな…。
昔から突然現れて誰かを自分のモノにしたら消えて居なくなる…
ヤツはズルくて関わるとロクな事が無いから見て見ぬふりをしてきたけど…
おまえとは会わせたくないからな。」
彼は私の頭をぐちゃぐちゃに撫でニヤけながら言った。
彼とは何処で知合ったのか分からなかったけど、妙に側にいると安心出来て苛つくけど憎めなかった。
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