第3話 黒
私は平凡でつまらない日々に、いつも何かを求めて過ごしていた。
多分、皆そう同じなんだと思う。
満足した日常を送ってる人なんてこの世に何人いるんだろう…
私は突然現れた彼女に手を引かれあの家に行き、新たなワクワクがあると期待していた。
彼女の扉の話が謎に聞こえて魅力的に感じた。
でも、不思議だと感じて見ていた彼女はきっと普通のどこにでもいる女の子で、彼女も私と同じで何かを求めてたら、たまたまあの家の扉に出会い自分の理想の夢を描いているんだと自分に言い聞かせていた。
有り得ない話を聞きいれるには、そうじゃなきゃ理解なんて出来なかった。
会いに行かなきゃいいのに、彼女の不幸な出来事が可哀想で気になってしまい会いに行っていたが、あれからあの家の扉の話しは気まずくて聞けなかった。
暫くは普通の他愛ない話をして過ごしていた。
彼女の左眼の周りに黒いシミが出来始め、それに気づいた時から私は何か聞いちゃいけないだろうと見て見ぬふりをし続けいた。きっとそのうち消えて無くなるだろうと思う事にしていた。
それから何日か経ったある日、
「やっぱり左眼だけじゃダメだったのかな?…」
突然泣きながら彼女は言い出した。
「どうしたの?また何かあった?」
そう言いながら彼女の顔を覗き込むと、彼女の左側全体が黒いシミになってきていた。
「これどうしちゃったの?」
「分かんない…けど日に日に左眼から拡がって、もう体半分が黒いシミが出来ちゃって…」
泣きながら彼女はシミを隠そうとしていた。
「病院に言ったの?」
「うん…でも検査とかしても理由が分かんなくて…今までにこんなシミは見たこと無いとか言われて…」
確かに、彼女のシミは黒でも何とも言えない色をしていて、まるで焼け焦げた感じで痛々しくも見えた。
「このシミ、痛いの?」
「ううん…痛くない…
でも、鏡で自分を見られない…」
元々彼女は白く綺麗な肌だから、左右のギャップがハンパなかった。
「あのさ…左眼…
本当に…願いの代わりに扉のコにあげたの?」
彼女は頷いて涙を拭っていた。
「じゃ…聞いてみようよ。
扉のコに…
何か少し怖いけど…」
彼女は更に泣きながら頷いていた。
「でも、あのコにまた何かねだられたら、どうしよう…」
「あのコって…お願いと交換で何かを欲しがるなら、お願いしなきゃ大丈夫だよ。多分…」
震える彼女の体をさすりながら私も震えていた。
内心、扉の向こうに何かがいるなんて怖すぎた。一体何が出て来るんだか分からない。それとも、やはり彼女の妄想で開けても何も無いかもしれない。どっちにしてももう確かめるしか無いと思った。
彼女の黒いシミが何なのか、どうにか治せる方法があるのなら私は力になってあげたかった。
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