ストレガトディ④

「えぇ〜、おじさん達マジで先生なの?」


「あははー、マジだってぇ。ちなみに俺はまだギリギリ二十代だからおっさんじゃねぇよ〜。おっさんはこのデカいおっさんだけ」


「………おぅ」


 放課後、俺たちは教室に残っていた女子生徒達に話しを聞いて回っていた。


 ちなみに霧島先生は生徒たちに「……り、理事長先生のお知り合いだから、し……失礼な事を言ったら、ダメですよ」と俺はたちを紹介した後 職員室へ戻っていった。


 こういう場面では瀬後さんは便所のデッキブラシ程度にしか役に立たないので聞き込みをしているのは主に俺だ。


「それでさ、俺たちは理事長先生に頼まれて生徒たちの健康状態に関するアンケートを取ってるんだけど」


 言って、ここ最近 倒れてしまった生徒達のことを尋ねてみる。女子生徒たちからはそこまで有益な情報を得られなかったが一つ気になることが聞けた。


「橘薫は新聞部だったのか?」


 話しを聞いた女子生徒たちと別れ俺たちは再び校内の廊下を歩いていた。


 時折りすれ違う生徒や教師から視線を向けられるが、こういうのは堂々としていた方が逆に不審がられない。


「話し聞いてなかったのかよ瀬後さん」


「いやぁ、ウチの空阿もいずれここに通ってる生徒たちみたいになるのかと思ってたら、ついな」


 目線が学校見学に来た親になっているんだが。何がつい、なのか微塵も分からないんだが。


「親馬鹿子煩悩極まれり、ってやつだな。と、ここが新聞部か」


 新校舎の二階奥 幾つかの空き教室が並ぶ中に『新聞部』というプレート掲げられた部屋がある。


 しかし扉を開いても部室の中には誰もいなかった。


「出かけてるのか?どうする神裂、部員が戻るまで待つか?」


「そうだな。茶菓子の一つでも摘みながら待つとするか」


 部員のいない新聞部の部屋に入るとまず目に入って来たのは無数のバックナンバーが補完されているラックだ。


 おそらく歴代新聞部の部員たちが作成した学生新聞を保管してあるのだろう、なかなかの量だった。


「結構 真面目にやってる部活なんだなぁ」


 適当にラックの中から一冊のファイルを取り出して開いてみる。


 発行年月日は1年前。内容はありきたりな学校行事や地域の催し物について。あとは各部活の活動報告などが載っている。


 特に目につくものはなくファイルを仕舞おうとすると、隣で同じようにファイルを広げていた瀬後さんがやたら真剣そうに内容を読んでいる事に気がついた。


「なんだよ、だいぶ早いけど空阿をこの学校に入れようかどうしようか悩み始めたのかぁ?やめとけ、やめとけ。この学校 結構偏差値高いっぽいし、あのメスゴリラみたいなガキの頭じゃとても無理だぜ」


「ウチの娘と同じ目線でしょっ中 言い合いしてるお前にだけは言われたくねぇ……じゃなくて、この記事だよ、コレ」


「あぁ?コレが何だよ」


「先月発行された物だ。この端っこに書かれてる記事」


 言われ、新聞のページを埋める為に割かれた小さな見出しに目を向ける。そこには『黒ミサ様の呪い』というややオカルティックなタイトルのコラムが掲載されている。


 内容は最近 生徒たちの間で流行ってる不可思議なお呪い『黒ミサ様』について。


 黒ミサ様を呼び出せば自分の悩みを解決してくれるが、その代償として黒ミサ様は呼び出した者の魂を奪い取ってしまうそうだ。


「……何だぁ、このコックリさんとエンジェル様の合いの子で二番煎じみたいなまじないは」


「内容も気になるが、そこじゃねぇ。この記事を書いた生徒の名前だよ」


 瀬後さんが指差す部分に注目するとそこには橘薫の名前が記されていた。


「この記事を書いた橘薫が一か月後に意識不明になった。しかも訳わからんお呪いとやらがこの学校じゃ流行ってるらしい、無関係だと思うか?」


「……呪術とかそっち系だとしたら、ちと面倒くせぇことになるかもな」


そんなモン呪術が絡んでるなら、尚のこと他の生徒たちが巻き込まれる前に何とかしねぇと」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る