第3話

 もともとこのアッシュレイクは他の街からの人が集まり出来上がって街だ。周囲が主に平地で近くに川も流れている。北東にあるオノガ山脈は大きく弧を描くように連なり、野生動物も多いくいる。また、このオノガ山脈は山向こうにあるメルヒルネからアッシュレイクを守ってくれるちょうどいい壁にもなっていた。

 

 ダンタンは、そのオノガ山脈の麓にあった。主に農業と狩猟を生業としている。大体はそのまま親の家業を継ぐが、都会で成功を夢見る若者がちらほらと現れてアッシュレイクへやってくる。


 ミリーの尋ね人は、まさにその夢見る若者の一人だつた。

「三月前くらいからこちらにダンタンのトマスがお世話になってると思うんですが。赤茶の短髪で目つきがちょっと悪い‥‥‥」

「ああ、あいつなら五日前に追い出したよ。ここ最近は家賃は滞納するわ常識ないことするわ、こっちは散々さね!

 あんなトマスの知り合いかい。なら滞納してる家賃払っとくれ!」


 東区に入ってすぐのところにミリーの目的地はあった。一階が何かしらの商店で、その上の階を賃貸にしているここではよくある建物だ。

 家主の老婆は、店先のロッキングチェアでうつらうつらと船を漕いでいた。

 気難しそうな老婆だった。膝の上では白髪混じりの三毛猫が置物のように寝ていた。


 意を決してミリーは声をかけた。老婆はすぐに目を開けてミリーへ顔を向ける。昼寝を邪魔されて機嫌が悪いのか、深く刻まれた皺がさらに深くなる。トマスの名前を出すと、カッと目を見開き口から唾を飛ばす勢いでミリーに食ってかかった。


「来てばかりのときは態度もよくてね。こっちも感じがいいと面倒焼きたくやるだろ?だから気を配ってやってたんだがね。

 一月過ぎたあたりからだったかね。夜中うるさいやら共同利用のところは汚しても掃除しないやら、しまいには窓から外にゴミを投げだしてね。金は払わないルールは守らない。強制的に追い出してやったよ。最後にケツでも蹴っ飛ばしてやりゃよかった」

「そんなぁ‥‥‥トマスのやつなんてことしてくれたのよ‥‥‥」

「あんたはトマスの知り合いだろ?家賃一月分滞納してんのは払ってくれるんだろうね」

「なんでわたしが払うんですか!?」

「同じ生まれで顔見知りだろ。そのよしみで尻拭いくらいしてくれないとこっちは迷惑なんだよ」


 ずいっと老婆はミリーへ距離を詰める。


「迷惑料込みで八万ディールさね。

 ほら、さっさと支払っとくれ!」

「嫌ですよ!わたしは払いませんよ!それになんですかその金額!八万ディールって、いくらなんでも高すぎやしません!?」

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