第11話 キングカート2
「私はキャラこのキノコのキャラにしますけど優斗君はどうします?」
莉奈が質問した。
「さっきと同じキャラで」
なんでもいい、それが俺の本音だ。莉奈は知らないかもしれないが、オンラインはカーレースゲームに自信がある人がするモードだ。俺は半年前に何回かやったが、フルボッコにされた。
「わかりました」
と、莉奈がOKボタンを押しまくる。
「優斗君優斗君早くコントローラー握ってください、始まりますよ」
「はいはい」
「ところで優斗君数字低くありませんか? ほかの人たちは五百以上ありますけど優斗君は四七六じゃないですか」
「負け続けたって言ったじゃねえか」
まけたら当然レートが下がる。とはいえ九位以下からくらいしか下がらないけど。つまりそう言うことだ。
「あとなんか私の数字五百になってますけど優斗君より高くなってますね」
「初期値だからだろ、それより始まるぞ」
「あ、はい」
「え、この人たち速くないですか?」
「これがネットの世界だ」
俺たちはレースの主戦場になっているところよりもだいぶ後方にいた。莉奈も俺も前の連中に追いつけなかったからだ。
「十一位の人に言われたくありません」
「莉奈も今十二位じゃねえか」
「私は別にいいんですよ、初心者なんですから」
「それだったら俺も初心者だ」
「優斗さんは何年このゲームをやっているんですか?」
「五年だ」
「それで初心者ですか?」
「うるせえ」
五年前に初めてやっただけだし、ずっとやっていたわけじゃない。一年くらいほぼやってなかった時もあったしな。
それより前を見てないと落ちるぞ」
「あ」
莉奈の前にガードレールのようなものがあり、ぶつかった。初心者が落ちないようにつけてくれている奴だ。
「話しているからだ」
「優斗君だってぶつかりますよ」
「そんなことわかってるよ」
俺はそう言い、華麗によけて見せた。見よ、これが経験者だ!
「ぶつかればよかったのに」
「俺の不幸を望むな!」
「あ、このアイテム変身するやつでしたよね」
「聞けよ、てか豪運だな」
莉奈の手持ちには最強のアイテムがあった。それは使ったら無敵状態になって、前に自動で進んでくれるというアイテムだ。莉奈の手持ちにはそれが二つもあった。ちなみに俺はさっきから普通のアイテムしか出ない。
「はい、私運が取りえですから」
そうだった莉奈は運がすごくいいんだった。完全に忘れていた。
「優斗さん早くこっちに来てくださいよ」
気が付けば莉奈は四位にいた。
「アイテムのおかげなくせに」
アイテムの力で順位を上げたくせに偉そうな。
「でも運も実力のうちじゃないですか」
「それはそうだが」
「というわけで優斗君も頑張ってくださいね」
「はいはい頑張りますよっと」
ちなみに俺は今九位だ。
「あれ、私なんで十一位なの?」
「運がそんな長く続くわけあるか、さあ二位様をあがめろ」
「さっきネットは地獄って言っていませんでした?」
「こういうこともあるさ」
「結局十二位ですか」
「結構奮闘していたと思うぞ」
「うるさいです六位さん、ネットの世界は地獄なんじゃなかったのですか?」
「どうやら俺にとってはもう地獄じゃないのかもな、莉奈とは違って」
もしかして成長してたのかもしれない。とは言うのも最後にオンラインでやったのは一年半前だからだ。過去の俺が負け続けていただけで今の俺が負けてる訳じゃ無い。
「もう一戦やりましょう」
「え?」
「勝てるまで私はやめるつもりありませんから」
「え、このゲームにはまったっていうこと?」
「はい、そうですね、勝てるまでやめるわけにはいきません」
「莉奈ってそういうキャラだっけ?」
まさかこんなに負けず嫌いだったとは。
「別にそこはいいじゃないですか、それよりもう始まりますよ」
「そうだな」
「見てください優斗君私まさかの1位ですよ!」
「そうか、よかったな」
「えへへ」
「でも前ちゃんと見とけよ」
「わかっていますよそんなことは」
「そうか」
「て、え?どんどん抜かされていくんですけど、私何かミスしてます?」
「当たり前だ、初心者が勝つなんてことあってたまるか」
「でもなんてこんなに抜かされるんですか?」
「莉奈、お前は考えてないだろうが、お前は遠回りしている状況なんだ」
「どういうことですか?」
「と、アブね、ぶつかりそうになった」
危ない、目の前に障害物の敵キャラがいた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、まあ要するにだが、そこの回り道があるじゃん」
「うん」
「そこの周り角をぎりぎりで回れば速く行けるっていうわけ」
「次の周り角でやってみます!」
「こうですか?」
「ああ、そういう感じだ、そうしたら走行距離も短くなって早く進めるっていうわけだ」
さっきの莉奈は完全に外回りのコースを走っていた。そりゃあ抜かされるわけだ、先に言っとけばよかった。
「なるほど、覚えときます」
「まああんまり攻めすぎて崖から落ちないようにな」
「はい!」
「やりました八位です」
「それはよかったな」
「まあ優斗君は十一位だったんですけどね」
「教えるのに夢中だったから仕方ないだろ」
「それはありがとうございました」
素直だな。
「いえいえ、さてできるのはあと一回という感じだな、行くぞ!」
「はい!」
「やった二位です!」
「よかったな、でも半分アイテムのおかげだろ」
「でもいいんですよ、勝てたんですから」
「よかったな」
「でも優斗さんは残念でしたね、最後にマキビシを踏んでしまったんですから」
「ああ、あれがなかったら五位にはなれていたわけだからな」
「でも現実は」
「十位だ、残念だ」
「どんまいです」
「ありがとう、慰めてくれて。さあて、もう一回やるか」
「もうあんまり時間ないって言ったのは優斗君じゃないですか」
「いや、負けたきりで終われないよ、それにまだ母さんに呼ばれてないしな」
呼ばれるまではご飯の時間では無い。
「まあそうですけど」
「よし、やろ」
「私としては気分のいいところで終わりたいんですけど」
「じゃあ俺一人でやるわ」
「いや、優斗君がやるんなら私もやりますけど」
「じゃあ勝負な!」
「優斗君」
「ああ、わかっている。もう一回やるぞ」
結果は俺が十一位で、莉奈が十二位だった、まさかの二人とも順位が下がる結果となったわけだ。
「莉奈」
「はい、もう一回やりましょう」
今度は俺が十一位で莉奈が九位だった。
「莉奈」
「はい、全然だめですねお互い」
「ああ、まさかこんなにだめになるなんてな」
俺が九位で莉奈が八位だった。というかもう莉奈に負けかけているというのはどういうことなのだろうか。
「ま、まあでも順位は上がってますから」
「俺としては莉奈に負けているのが気に入らないんだけどな」
「なんでですか」
「莉奈が初心者だから」
「私には才能がありますから」
「嘘つけ、半分運の力だろ」
「いやいや、それが才能なんですよ」
「なんかむかつくなあ」
天から与えられたギフトでイキられてるのは。
「ムカついてください、ところで始まりますよ」
「ああ、そうだな。負けないぞ莉奈」
「はい!こちらこそ」
「やった莉奈に勝ったぞ!」
「ひと順位だけでしょ、それよりも順位のことを喜んでくださいよ」
「ああそうだな、最後の最後で四位になれるとは」
「私も何とか六位になれましたよ。アイテムの力にはあんまり頼ってないでの六位ですよ! 満足です」
「それはよかった、じゃあ下に行くか」
「はい!」
「あ、二人とも降りてきた!」
「ああ、お待たせ」
「ちょうどよかった、今食器とか運んでるんだけど、優斗、由衣を手伝って」
「ああ、わかった」
「あ、私も手伝います」
「ありがとう」
そう言って莉奈と由衣と俺はせっせと料理や食器を運ぶ。
「ありがとうね、助かるわー」
「いえいえお母さま、今日はご飯を食べさせてもらう身なんで」
「お母さまって俺のお母さんだぞ」
「いいじゃないですか、彼氏のお母さんなんですし」
「まあそうなのか? いや違う気がする」
結婚とかしてないんだし。婚約者でも無い。
「まあ私はうれしいわよ、夢でしたもの息子の彼女からお母さまと呼ばれることが」
「まあ本人がいいならいいか」
「お兄ちゃん口じゃなくて手を動かしてよ」
「わかってるよ」
「さてとご飯にしましょ、三人ともありがとうね」
「うん」
「あ、でもお父さん待たないとだわ」
「ああ、たしかにな」
「えーもう食べようよ」
「そういうわけにはいかないわよ、あの人は私たちのために働いてくれているわけだし」
ガチャっと玄関のドアが開いた
「お父さんだー」
そう言って由衣は玄関のほうに走っていく
「優斗君のお父さん、緊張します」
そりゃあ彼氏の父親とのご対面だから緊張するよな。
「そうか、あの人少しうざいかもしれないから気をつけろよ」
「そうなんですか?」
「ああ、少しうざい質問をしてくるかもしれないからな」
「そうなんですか」
あの人だったらいろいろ変なことを言ってきたとしても不思議ではない。正直言って由衣のあのうざさは遺伝だと思っている。
「ただいま優斗に、母さんそして莉奈ちゃん」
「お帰りなさいお父さん」
父親が帰ってきた。
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