第10話 キングカート1
「聞いていると思いますが、今日優斗くんの家でご飯食べるので、よろしくお願いします」
「え? 聞いてないんだけど」
俺はそれを聞いて驚いた。そんな話は聞いたことがないんだが。
「え、忘れたんですか?」
「そんなこと言ってたっけ」
「由衣ちゃんが言ってたじゃないですすか、一緒にご飯食べたいって」
「ああ、そんな感じのことを言ってたな」
あれは由衣のわがままだと思っていた。
「それで一緒に食べるっていう感じになったんじゃなかった? こんなメッセージも来ていますし」
そこには「莉奈ちゃん明日食べに来てねー」「はい!行きたいです」「嫌だったらいいんですよ、でも私としても来てくれたらうれしいです」とやり取りされている。俺は知らなかったが、今日は莉奈が俺の家でご飯を食べる日だったのだ。
「おお、そうだったのか」
「楽しみですね」
「そうか、俺は急に言われて困惑しているんだけど」
「え? 私としては伝わっていると思ってたんですけど」
「そうなのか? だってそんな話聞いたことねえし」
「優斗君のお母さんが伝えていると思ってました」
「ああ」
「いらっしゃーい莉奈ちゃん」
喜びながら由依が言う。
「こんにちは由衣ちゃん」
「ありがとう来てくれて、私いろいろ話したいことがあるから覚悟しといてね」
「うん」
「莉奈気を付けとけよ、こいつ話したら長いから」
「お兄ちゃんそんな言い方ある?」
「あるぞ普通に」
「ないでしょ」
「由衣相手だったら普通にある」
由衣は普段から俺にわがままによるストレスを与えているし、これぐらいの意地悪は許されるだろう。
「私は器大きいから許すけどふつう殺されるからね」
「お前にか?」
「いや、私は大人だから殺さない」
「そうか」
「というか私別にお兄ちゃんと話したいわけじゃないんだけど」
「何だよその言い方」
相変わらず由衣はわがままだ。
「というわけで莉奈ちゃん話そう!」
「ごめんね私は優斗くんとしなきゃならないことがあるから」
「それってエッチなこと」
「なわけあるか!」
何を言い出すんだうちの妹は。
「そうですよ、優斗くん行きましょ」
「おう」
「二人とも六時ぐらいにご飯だからそれ目処で」
「ああ、わかった」
「楽しんできてね」
「はい!」
莉奈は強くそう言った。
「あっでも楽しんでってそういうことじゃないからね」
「由衣流石にしつこいぞ」
「ごめーん」
そう由依が謝る、全く困ったものだ。
優斗の部屋
「莉奈さっきは由衣がごめんな、変なこと言って」
「私は別にエッチなことしてもいいんですよ」
「俺はそんなこと全く考えてなかった、後あいつ絶対エッチなことの内容知らないとと思うから気にするなよ」
「はい!まあ私は何回も言っている通りいましてもいいんですけど」
「まだ早いわ!」
まったく莉奈は何を言い出すんだよ。俺だってそういうことを考えたことがないわけではないが、さすがに二日目は早すぎるし、高校生でそんなことしてもいいのか?
「でだ、ご飯まで何する?莉奈さっき俺としたいことがあるとか言っていなかったか?」
「いえ、別に私は明確なやりたいことがあるわけじゃなくて、優斗くんと何かをしたかったからそう言っただけです」
「そうか、莉奈は何かやりたい奴はあるか?」
「オセロとかは昨日やりましたもんね、あ! 電子ゲームとか?」
「電子ゲームって、別にゲームでいいだろ」
「ゲームだったらボードゲームも入っちゃいますし」
「ゲームって言ってボードゲーム入れる人は現代にはいねえよ」
「そうですかね?」
「絶対そうだろ」
「それで何のゲームをしますか?」
「うーんそうだな」
そう言って俺は棚からゲーム機とカセットを持ってくる。その中にはアクションゲーム、野球ゲーム、戦争ゲーム、カートレースゲームなど他所多様なジャンルがある。
「何がいい?」
「私このカーレースがしたいです」
「じゃあやるか」
「はい!」
そう言ってカセットをゲーム機に差し込みゲームの電源を入れる。ここでいうカートレースゲームとはキングカートというゲームで、アイテムを使ったりなどして遊ぶ、普通のカートレースゲームである。
「そういえば莉奈は得意なのか?」
「いえ、初めてです」
「初めて?」
「はい、というか私自体ゲームはほとんどしないので」
「そうなのか」
「だから頼りにしてます、師匠!」
「お、おうなんかその呼び方新鮮だな」
新鮮と言うかそう呼ばれたことがない。
「そうですか! なら何回も言ってあげます! 師匠!」
「別にそんなに言わなくてもいいけどな」
それに、師匠なんて呼ばれるほどにはゲーム上手くないのだが。
そしてコースをランダムに選ぶ、最難関コースである海がたくさんあるコースに決まった。
「うわ、難しいコースじゃねえか」
「はい、いけますかね」
「コースを変えるか?」
莉奈は初心者なんだし。
「いえいいです」
「初心者なのに?」
「でも大体のやり方は知ってますし、Aボタンで進んで、進行方向はこのボタンで帰るんですよね」
「まあそうだな、後は周り角でRボタン押したら速度を落とさずに回れるっていうぐらいだな」
いわゆるドリフトだ。
「そうなんですね師匠」
「ああ」
「じゃあスタート!」
そう言って莉奈はOKボタンを押す。
「莉奈、これ曲がれるか?」
目の前に岩が何個もそびえ立っている、その崖に当たったらスピードダウンするのだ。
「あ、曲がれない」
そして莉奈の車は岩に直撃する。
「うう、どんどん抜かされていく」
「どんまい」
「というか優斗くんどんどん抜かされてませんか」
「うるせえ、俺だって得意じゃないんだよこのコース」
実際このコースは本当はやりたくはなかった。難しすぎるんだよ! 障害物多いし、カーブ急だし。
「なるほど、下手なんですね」
「いや下手じゃねえ。それに今現在進行形で最下位の人に言われたくねえ」
それも大分十一位から離されてる最下位だしな。
「仕方ないじゃないですか、このコース難しいんですって」
「それは俺も同じじゃないか」
「でも、優斗くんは経験者じゃないですか、前提条件が違いますよ」
「前提条件が違うって言ってもなあ、俺だって得意じゃないんだよ。それにこのコースは人間のやるコースじゃないし」
ほんと、このコース作った人、絶対性格悪いわ。
「じゃあなんでこのコースにしたんですか?」
「仕方ないだろランダムだし」
「じゃあ次は簡単なコースお願いしますよ」
「無理、次のコースもランダムだし」
「そんなあ」
「諦めろ」
結果は俺が四位で莉奈が最下位の一二位だった。
「優斗くん結局四位じゃないですか」
「まあな、最初のあれは久しぶりだったから生じたものだから。というか師匠呼びはどうなったんだよ」
「最初ミスってましたし」
「仕方ねえだろあれは」
「まあ優斗くんに格下げというところでしょうかね」
「そうか、俺としてはなんで最下位なのに偉そうなんだよと言いたいところなんだけど」
「別にいいじゃないですか、私は地獄を味わったんですから」
実際莉奈は最終的には一位から半周遅れところが一周遅れしていた。
「でも安心しろ、次のコースは簡単だぞ」
「そうですか、それはうれしいです」
そして次のレースが始まる。
「で、なんで最下位なんだよ」
「難しすぎますって、このゲーム自体が」
「そうか。でもそれにしても下手すぎねえか」
「そういうんだったら、きちんと教えてくださいよ」
「そうは言っても莉奈がこのゲーム選んだんだろ」
「まあそうですけど」
「なら自分で何とかしたほうがいいんじゃねえか?」
「教えてくれないんだったらボイコットします」
「おい、やめろ」
それにそれをして困るのは莉奈だろ。
「ならなんで上手くいかないのか教えていただけませんか?」
「ああ、そうだな、まずキャラが悪いな」
「キャラですか?」
「このキャラはスピードタイプで上級者向けなんだ、スピードが速い代わりに曲がりにくいという特徴を持つな」
実際ロマンと言う側面が強すぎて、そこまで実践的じゃないしな。
「じゃあ変えたほうがいいということですか?」
「ああ、初心者用のキャラやったら、このキノコヘアのキャラだな」
「かわいいですね」
「スピードというのは最高時速という意味だから、常に五十パーの力しか出せないスピードタイプより、このスピードは出せないけど常に百パーの力を出せるキャラやったら、こっちの方がいいだろ」
俺は解説する。実際初心者は絶対このキャラのほうがいいのだ。
「たしかに、でもなんで始める前に言わなかったのですか?」
「悪かったな、忘れてたんだよ。言うのを」
普通に失念してた。
「そうですか、ところで優斗くんもそのキャラ変えた方がいいんじゃないんですか?」
「俺は良いんだよ別に初心者じゃないんだから」
「でもぶつかりまくってませんでしたか?」
「それを言われると弱いな。けれど俺はロマンが好きだから、このキャラは変えん」
実際、好きなキャラを使ってプレイしたほうがいいしな。
「じゃあ私も変えません」
「いや、お前は変えろよ、初心者なんだから」
「優斗くんが変えるなら変えます」
「お前、俺を脅してないか?」
「脅してません」
「わかったよ、俺は妥協して普通の型のこいつにするわ」
「じゃあ私もこのキノコで」
「名前呼んでやれよ」
「優斗さんが最初にキノコ頭って言ってたじゃないですか」
「そうだけどよ」
「じゃあ私このキノコ頭を使いますね」
そして次のレース。
「あ、曲がりやすいです」
「そうかそれはよかった」
「優斗くんも上手くなってません」
「そりゃあ、さっきのキャラが難しいキャラだからな」
速すぎるから曲がりにくいし、最高速になるまでに時間かかるからなあ。
「でもこっちのキャラ使った方が絶対いいですよ」
「でもなー、俺スピード求めたいからな」
「じゃあさっき五十パーしか出せないスピード型うんぬんはどこ行ったんですか?」
「俺は七十パーの力を出せるから良いんだよ」
単にロマンを求めたいだけだ。
「本当ですか?」
「本当だよ」
「しかし、そのキャラだと優斗くんめっちゃ一位取れますね」
「まあコンピューター相手だしな、そりゃあ勝つよ」
この簡単なキャラだしな。
「そうだったらそのコンピューター相手に一位取れないレベルの私って」
「大丈夫だよ莉奈、センスはあると思うぞ」
「ありがとう、ほめてくれて」
「いやいや」
「ところで優斗くん敵なしなんですし、オンラインでやったらどうですか?」
「オンラインだと俺は結構最下位なんだよ」
オンラインはレベルが違う。猛者しかいない。大体、オンラインなんて、コンピューター相手に飽きた人たちがやるやつだ。俺たち素人が手を触れていい領域ではない。
「そうなんですか? まあいいじゃないですか、やりましょうよオンラインで」
「そんなこと言うなよっておい!」
気が付けば莉奈はオンライン対戦モードに指を置いていた。
「え、だめですか?」
「だめだろ、俺なんて雑魚なんだから」
「でも、大型キャラを使わなかったら結構強かったじゃないですか」
「そう見えるだけだよ、あのネット上の化け物見たらやる気なくすぞ」
「そうですか、やりましょう!」
「なんでだよ!」
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