第2話
「じゃあ、三月の席は、そこだな」
そういって先生が指差したのは私の隣の席で、その子はみんなの注目を集めながら席に座った。
みんながひそひそと騒ぎ始める。
「かわいくね?」
「スタイルいいなー、うらやま」
「頭よさそー」
(.........当然だろ、私が描いたんだから。)
そう、私がこの子を描いたのだ。
描いた、ってことはつまり彼女は絵だったわけで...
(いやいや、えぇー)
そんなことある?
昨日まで平面上にいたのに、なぜか今彼女は私のとなりに座って涼しげな顔をしている。気になってチラチラ見てたらバチッと目があって、ニコッと微笑まれた。当たり前だけどかわいい。かわいすぎる。
「よろしくね、しおりちゃん」
「よ、よろしく、三月さん...........え、なんで名前知って...」
なぜだか悪い予感がする。
(いやいやいやいや、)
「よろしくね」
めちゃくちゃ可愛いはずなのに、まるで銃口を向けられたような威圧感だ。
(えええぇぇぇぇー)
この子、絶対わかってる......!
気づけばHRは終わってて三月さんはみんなに囲まれてた。
「どこから来たの?」
「いいにおいする、どこの香水つかってるの?」
「彼氏いる?」
「学校案内してあげようか?」
三月さんはご丁寧にも一個ずつきちんと答えてあげてた。
だが、「大丈夫、学校はしおりちゃんに案内してもらうから」と答えた瞬間、教室が静まりかえった。
(うわああああああああ)
最悪だ。
ほら、陽キャ一軍男子が(しおり、って誰だっけ?)みたいな顔してるし!!
気づいたクラスの中心の女子軍団が(はあ? コイツ?)みたいな目して見てくるし!!
(終わった...)
私の特に楽しくもなかった高校ライフが終わりを告げた。
私がドクロマークみたいな顔で固まっていると追い討ちをかけるように三月さんは言った。
「じゃあ、今から案内してもらうから!」
満面の笑みで言わないでくれ。怖いから。怖いから。
絶句してる周りを置いて彼女は私に雪のように真っ白な手をのばした。
(って、いたたたたたた肩引っ張らないでこいつ人体の仕組み理解してないんじゃないか?!)
思ってもみなかった強引な方法で三月さんは私を人気のない階段まで連れていった。
なんで場所理解してんだよ。
思わずツッコミを入れたくなったが我慢した。
「あ、あのさ...」
「なに?」
「私が昨日描いた子だよね? ファミレスで」
「そうだよ」
彼女が柔らかく笑う。当たり前じゃん、とでもいうように。
「絵...だったよね...?」
「うん」
「どうして...今ここにいるのかな......みたいな」
いかんコミュ障が発動してしまった!
「えと、その、だって昨日まで絵だったよね?!?!」
ふは、と彼女が吹き出した。
「焦りすぎ、ちゃんと説明するから聞いて?」
............
曰く、簡単にまとめると、私の愛が強すぎたのだという。
昨日の私の欝パワーは限界値で、見かねた神様が彼女を人間介に呼び起こしたらしい。
(恥ずかしい...)
つまり彼女には私が彼女のこと好きなのがもうバレていて、一般的な恋愛でいう「告白」をすっ飛ばしてしまったのだ。
そして同時にここで、神の存在が証明されました!いえーい!
もうわけがわからん。
たぶん彼女のはなしで注目する部分はそこじゃないはずなのに頭の中でいろんな考えが転がっていく。
「じゃあ、と、とりあえず今は何をすればいいの?」
混乱する頭で必死に救いを求めると、彼女はいたずらっぽく唇をにいっとあげた。
あ、その表情見たことないけどかわいい。
「告白でもすればいいんじゃない?」
「好きです」
好きです。
神絵師が自分の描いた女の子に恋をした話 @arumikann
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