第4話 鹿ヶ谷事件

諏訪上社

木村宗高  「千野殿、山吹御前を姫に迎え、めでとう御座います」

千野栄朝  「ありがとう御座います」

宗高  「山吹殿は中原殿の娘殿と聞きましたが」

栄朝  「数年前から、筑摩の学校へ通っております

        山吹は同教でありました」

宗高  「どのような処なんでしょうか」

栄朝  「宗高殿の父、信綱殿は下野国足利の藤原氏とお聞きする

        此処だけのお話でよろしいか」

宗高  「栄朝殿、何時からの友でお思いです」

栄朝  「お怒りになるな、中原殿は信濃の国司まで

        お勤めなされたお方、京の事から、大陸の事まで

        儒教から法、神道、仏教、武術、特に弓については

        達人の域でありまする」

宗高  「栄朝殿、このところの言動はそこに有ったのですね」

栄朝  「学校には、伊那、筑摩、美濃、善光寺

        の豪族も沢山きておられます

        なにより、木曽より兼遠の養子、義仲殿と言うお方がおりまする

        中原学長の御子や山吹は「駒」と呼んで

        只ならぬ雰囲気を持っております

        影では、京の源三位 馬場頼政殿の弟君の噂が御座います」

宗高  「栄朝殿、私は諏訪木村家に預けられ諏訪神氏の事しか

        知りません、中原学校に推挙願いたい」

栄朝   「馴染みの宗高殿、道中の友に、なれば

        道中も楽しかろう、父にごねてみましょう」


宗高は元服と同時に栄朝と学校に行くことになる

早春、上社には既に馬が数頭来ていた、

夜明け前に出立、夕刻には筑摩に

一ケ月交代で筑摩と佐久を行き来し

秋には諏訪に帰る生活が数年続くのである

休みの日は中原家族の館に呼ばれるようになっていた

筑摩・佐久で宿泊していたが、費用は

中原学長から出ていた

駒王丸は諏訪の金刺氏に預けられ

宗高、栄朝、駒王丸は何時も行動を共にするように、なっていった

駒王丸は諏訪の金刺氏に預けられ、宗高の妹を娶る

1176年

九条院(藤原呈子)が亡くなり、政界はにわかに動揺する

1177年

鹿ヶ谷事件  

(西光疑獄事件)法王の側近が清盛討伐の合議   

白山事件で延暦寺を対抗しなくてはならなくなった法王は平清盛に延暦寺        討伐を指示

清盛は延暦寺を敵にしたくなく、陰謀をめぐらす、多田行綱を使い

軍勢を鹿ヶ谷へ転進し、法王の側近を拘束する

法王の側近

西光、成親、俊寛、基仲、中原基兼、惟宗信房、平資行、平康頼、師高、成親


平康頼 (中原兼遠 一郎)

清盛の策略で薩摩国鬼界ヶ島へ流される

「つひにかく 背きはてける 世の中を とく捨てざりし ことぞくやしき」


二年後、熱心な熊野信仰の仲間(法王)に助けられ帰京

「ちはやぶる神に祈りの繁ければなどか都へ帰らざるべき」


木曽の軍師・書記となる


法王と清盛の対峙がはっきりとするのである

1179年

信濃善光寺が焼失、飛鳥京の時から、京の鬼門の守りを数百年務めていた

善光寺焼失は京の民、朝廷を不安に陥れていた

その年、後白河法皇の不吉な予感が当たるのである

鎌倉政権の発端となる義仲挙兵が信濃で始まるのである


治承三年の政変にて後白河上皇幽閉 院政が終わる

宗盛は法王側の所領を没収する事で、政変の後始末をするが

以仁王の所領も没収してしまう

平安宮


平宗盛  「仲綱殿、昨日九条で貢の立札馬列を見たが、良馬じゃ

     信濃の馬は色艶もよく、よく走ると言うではないか」

源 仲綱  「海野の牧、木曽の牧で鍛えた駒でございまする」

平宗盛  「明日、春宮坊に連れてまいれ」

源 仲綱  「あの馬列は仲家殿の貢ぎでございまする」

平宗盛  「噂で聞いたが、義弟、仲家殿には外に弟君が居るとか」

源 仲綱  「仲家の事は知らされておりません」

平宗盛  「よいよい、鹿ヶ谷の康頼の件で

     木曽から兼遠殿を召喚したが一向に応ずる気配がないのだがな」

源 仲綱  「・・・・馬列より、見繕い持参致します」

平宗盛  「列で持ってまいれ、八条に帰り良く熟考するが良い」


平宗盛は清盛と後白河法皇の対立の中で疲弊していた

宗盛の無礼が最高潮に達していた頃である

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