第29話 チームワーク

どうすれば百名山のような美しい景色を見るような生活を日々できるか。

そこに至らない現状を歯痒く思いながら過ごしていた。


日本アルプスの縦走とか、海外における山旅とかを考えるにあたって

どう考えても土日の二日間じゃ足りない。

3、4日、あるいはもっとかかる。

エベレストみたいに海外も考えてるなら尚更だ。


会社で有給を取ればいけるかもしれないが

それで得られる自由なんてたかが足れている。


そのギャップをどうやって埋めるのか?ということにも頭を悩ませた。


少しずつだが「会社を辞める」という選択肢が浮上しつつあった。

浮上しつつはあったが、会社を辞めたあとの

生活費を補填する手立てもないので

やはり「いつもの日々」にUターンするだけだった。



僕は「陰のエネルギーが強い」と言われてきたが

このエネルギーは闇からの防衛に使うのだが

どちらかというと自ら闇に身をゆだね、勝手に堕ちていった印象。


ストレス解消しても平日は死人に逆戻り、

蟻地獄の穴から抜け出せない、そんな状態になっていた。


そんな自分の心境を反映したかのように、

会社も業務中はまるで死人だらけ。


チームワークが大事といっているが、チーム人員の仲がいいわけでもない。

一人一人が別々の作業をしており、実質は個人ワーク。


まるで人情味がない世界、それが僕にとっての会社の印象だった。


ーこれが土日に山行に行くと、全く世界が変わる。


皆のチームワークでうまくいった事例で言えば、

雲取山のケースが思い返される。


山好きのメンバーで集まって、雲取山の山頂での日の出を拝んだツアーのこと。


皆で料理してテント張って山頂目指して。

時に笑い、時に真剣に。


誰も離脱しないように慎重に登っていく。


11月と言うシーズンのためか、流石に平地でも肌寒いし

山の上の方に行けばどんどん寒くなっていく。


晴れている分には問題ないが、天候が悪くなると旗色も悪くなる。


天気を見るのが非常に大事なのである。


ましてや秋の真っ盛りでだんだん冬シーズンになりつつあるこの時期

体温管理というものがこれまで以上に大事になってくる。


登るに易い山とて侮れない。


そんな中で寒さに四苦八苦しながら、

山頂にたどり着いた感動はひとしおだ。

空気もよく景色も美しい。


雲取山の山頂には、日本三百名山について書かれた石碑があった。


百名山だけだと思っていたが、三百もあるのか。

途方もない世界だ。


山行の世界というのはかくも深く、終わりがないもの。


果たしてこの山行を極めることが僕にはできるのだろうかー。

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