第16話 再び「山頂」を目指す者

会社で溜まるストレスというのは尋常じゃなく

1日でも早く会社を辞めてクリーンな状態になりたい。


もしくは「このストレスをおとなしく受け入れてやるから

もっと給料上げてくれよ」という

恨み節ポエム炸裂したくなる。


それくらいのペースで日々ストレスが溜まっていく。


僕は会社のために生きているわけじゃない。


しかし物質世界においては起業にせよ普段の生活にせよ、

「資金」というものが必要というしきたりがある。


誰もタダじゃあいいことは教えてくれないし、

「働かざる者食うべからず」というわけだ。


学生時代の僕のチャレンジとしては

「自分が行くのはIT企業一択しかない」と思い


就活ではIT企業への就職を決めた。


当初はシステム開発の仕事、

とりわけゲーム制作に興味があったので

そういった業務に就けるのを希望していた。


「世の中に面白いゲームを提供する」という「山頂」を目指していた。


しかし自分が希望する仕事ができない部署に配属されて以降

「夢」というものをかなぐり捨てる選択をせざるを得なかった。


その結果、僕は「現実」を見て生きることを決めた。


僕が希望する仕事を与えられる部署に入ったはずの入社同期が

日々激務に打ちのめされ、死んだ顔をしていて

気がついたら同期が次々と辞めていく。


そんな同期連中の有り様を見ていたから

希望した仕事ができなくてよかった、


となんとか自分を納得させていた。


周りの先輩にも「今の仕事は開発より楽だから」と

諦めるよう諭されてきたのもあって


僕は次第に人生を「諦める」方向に向かっていった。


「希望した仕事なんて所詮は絵に描いた餅でしかない」


と、「夢」というものを嘲り切って捨てたつもりだが


今の仕事をやっていて時折、

何のために戦っているのかわからない、


そう思うと、心にモヤがかかってしまうのだ。


モヤモヤすると眠くなってしまい、集中力が落ちてしまう。


モヤモヤしたところで、所詮考えてもどうにもならないから

コーヒーをひたすら飲んで眠気を、

自分の気持ちを誤魔化しながらここまでやってきた。


「夢なんて所詮幻想」と切って捨てたが

実は無理にでも考えないようにしている自分がいた。


夢をかなぐり捨てた僕は思考停止し「会社の奴隷」と成り下がった。


会社にいいように使われる奴隷に成り下がったが

自分がコーチングというものを学んで実践していくと


どうしてもその生き様が納得できない。


かつて諦めてしまった自分の気持ちを奮い立たせたい。


その気持ちが根底にあった。


何もかも捨ててしまった僕自身に対してセルフコーチングしていくうちに


「やりたいことだけして生きていきたい」という気持ちが再燃した。


しかしそれを仕事で表現することはできず

やはりそこにフラストレーションがたまる。


煮え切らない気持ちをぶつけるためにアウトドア、山行の趣味を始めた。

煮え切らなかった思いを、全て山登りにぶつけてしまいたい。


ITの仕事では山頂を目指せなかったが

山行ではその思いを発散して、山頂を目指したい。


その結果「日本百名山を全部登ろう」という目標が出来上がったのであるー。

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