第10話 山旅の道具は高い

会社のコンクリの中っていう、

霊峰とは全く無縁で神もへったくれもない、


無情なる日常を離れて、神様がいる山に行くことが


チャネリングではないが

何か必要なことが自分に降りてくる


そういう感じだったのかもしれない。


ストレスばかり溜まる平日の仕事では、神様も喜んではくれまい。


然れば神に会おう、ゆえに早速山に行くしかあるまいよ。


と、ここで改めて自分の格好を振り返る。


「Tシャツとジーパンで山登るやつはいない。山をナメてる。」


「どんな低山でも舐めてはならない、

 自然はいつ私たちに猛威を振るうかわからないんだ。」


そんなふうに先日の山行交流会で言われたので

まずはどんな格好で山行に望むのが良きか

そこから検討する必要があった。


どんなに低い山でも気候が変わればどうなるか分からない。


正直、高尾山ですら天候が荒れればどうなるか分かったものでない。

行楽日に人が多いという条件が重なれば、危険度は増すばかり。


そういうわけで東京の新宿まで足を運び、

山行道具を店員に聞きながら一つ一つそろえることにした。


新宿に行ったのは、東京ならなんでも揃ってると思っていたから。


コンパスに地図に山用のシューズ、上下の服、リュック、

さらには防寒具、雨よけのカッパ…、


あとは雪山用シューズ、非常食…、


あと何があったか分からないくらい、買い物をした。


山用品は何を買うにしても高い、高い。

1ヶ月分の給料が、この1日であっという間に消し飛んでしまったのだ。


山行道具は必要なものが多すぎてお金が回らない、

というのは山行愛好家共通の悩みのようだ。


当時は山行道具が高いものだとは知らなかった。

これでは月々の生活が回るまいよ。

どんだけ年収を稼がないとならないんだ。


よく父はこんなものをやっていたなと感心するばかりだった。


実際山行ショップに行ってみてみると、値札を見て仰天する。


武装には多額の費用がかかるということだ…。


100万円の試験を受けに行った後に

高額かかる趣味に突撃と、結局「何も反省していない」。


ー結局、なんで山に登る必要があるの?


反省にはもう少し長い歳月がかかることを、

その当時の私は知るよしもなかったー。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る