エピソード43 ミファー

ドアの向こうから声が聞こえてくる…


「ここが君がしばらく過ごす家だよ。優しいお姉さんがいると思うから安心してね…」


「あいつ俺のこと話題に出さなかったな…」


「レド、静かに!来るんだから…」


ドアが開き…


「お待たせ…この子だよ。名前は…自分で言える?」


「はい…」


子供は警戒している様子で、家をキョロキョロと見ている。


「こんにちは。私たちが一緒に過ごす人だよ。私がサヤで、奥の男の人はレドっていうの。」


「…わかりました…」


「ここは、あなたに酷いことをする人はいないよ。お名前はなんて言うのかな?」


優しく尋ね、様子を伺うと…


「…ミファーです…」


「ミファーちゃんでいいかな?早速、家のなか探検しよ!


「はい…」


やはり人を怖がっている様子で、敬語で話している。


「兄さん、ありがとう。もう大丈夫だよ!」


「わかった。ミファーちゃん、お兄さん帰るから…お姉さんたちと過ごしててね。」


「………」


そして、ミヒャエルは帰っていった…


「じゃあミファーちゃん、お家の案内してもいいかな?」


「お願いします…」


「無理はしないでね…俺たちは、それを望んでないから。」


家の案内をすることになった。


「ここがお風呂場だよ。お風呂は一緒に入る?それとも別がいいかな?」


「一人がいい…」


「うん。ゆっくりやっていこうね…」


やはり、なかなか心は開いてくれないようだ。


「こっちが寝る部屋だぞ。一緒が嫌だったら俺たちはソファーで寝るからな…遠慮なく言ってくれ…」


「寝るの一人だと怖い…いつも叩かれるから…」


怯えた様子で言ったミファーをサヤが抱きしめる…


「ごめんね。びっくりさせちゃって…私もね、お父さんに叩かれたり酷いこと言われたりしてたんだ…だからミファーちゃんのこと、少しはわかるよ…」


「そうなんだ…」


少しだけ警戒を緩めてくれたようで…


「やっぱり、お風呂サヤさんと一緒がいい…」


「じゃあ、二人でお風呂入ってきたらどうだ?俺は夕飯の支度する。」


「ありがとう、レド。ミファーちゃん、お風呂入ろうか。」


「うん…!」


二人は内心ホッとした。


サヤとミファーはお風呂に入る…


「頭洗うから椅子座ってもらっていいかな?」


「ありがとうございます…」


「ちょっとあったかいのかけるからね…」


ミファーの長い髪の毛を丁寧に洗い、湯船に浸かる。


「ミファーちゃん、レドのこと怖い?」


「レドさんは悪くないけど…ちょっと怖い…」


「そうだよね。まだ何も知らない人だもんね…じゃあ少しお話しようかな…」


そう言うと、サヤはレドとの思い出や、失敗談を暴露しまくった。


「ふふ…レドさん面白い…!」


「そうなの!かっこよくて、面白くて、私にとってすっごく大事な人なの…ミファーちゃんにも、いつか絶対そんな人に出会えるよ!」


「うん。ありがとうサヤさん。」


少しずつ、ミファーは心を開き始めているのであった…

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