エピソード33 大作戦

「それで…なぜサヤの両親が突然現れたかについてだが…」


「ああ、なにか検討がついたのか?」


ミヒャエルが何かに気づいた様だ。


「多分だけど…介護じゃないか?あの二人はそこそこの歳だ。それにあの二人は気付きサヤを必要とした…それが妥当だと思う…それ以外だったら思い浮かばん…」


「サヤを傷つけといて必要になったら手のひら返しってこと?ますます腹が立つわあのくそ野郎ども!」


ギャリーは拳を握り、怒りを露にする。


「あいつらをなんとかできる方法を探そう。サヤはあいつらのことを思い出すだけでも、苦しまなきゃいけなくなる…ミヒャエル、警察で何か手を打てないか?」


「過去の虐待の記録とかを漁るしかない…だがその記録が残っているかどうかもわからない。約二十年前のことだしな。」


皆、頭を抱える。

どうにかしないと、サヤの身が危ない…


「そうか…だが、もしそうだとしたら…」


「打つ手無し…」


「あいつらがいつ戻ってくるかもわからない…なにもできないってなによ…!?」


震えるサヤの手を、ミヒャエルが握る。


「サヤ、事が済むまで俺の家にくるか…?」


「ううん。いつまでも過去に囚われてちゃいけないよね…立ち向かうよ…!」


「あいつらの心を挫く何かが必要だな…」


「さっき少し殴…叩いてやったけど、また来そうだったもの。相当な爆弾が必要ね。」


四人は試行錯誤する。そこでレドがあることを思い付いた…


「ハッタリにすぎないが…サヤの職業を知らないとすると…こんなのはどうだ…?」


三人はレドの作戦を聞いた…


「それ…大規模すぎない…?それに協力してくれるかどうかなんて…」


「いや、間違いなく成功する…!いい作戦だと思う。」


「俺の仲間にも聞いてみる。そうすればかなりの威圧になるぞ。」


四人はレドの作戦に賭けてみることにした…



翌日…


「実は…そうなんだ…サヤの両親が……本当か!?ありがとう!恩に着る…」


「俺の妹がな…そう…虐待されてたんだ…協力してほしいんだが…」



そして運命の日がやってきた…そう…サヤの両親がもう一度押し掛けてくる日が…


「おい!早く開けろ!まだ言うことをきかないのか?役立たず!」


「いい加減開けなさい!私たちの言うことを聞いたらどう!?」


サヤはドアを開ける。


「もうお前らには縛られない!私はお前たちの道具じゃない!」


「なっ!口答えしやがって!お前のその顔が昔から気に入らないんだよ!」


父親がサヤへ拳を振り下ろす。だが…それをレドが止めた。


「俺の女に触んなくそ野郎が!」


「こんな男と付き合っているの!?目を覚ましなさいサヤ!」


「目を覚ますのはそっちみたいだけどな!」


二人は強い光にライトアップされる…


「!?」


二人は振り向く。そこには…


「君たちについてはよく知っている…虐待をした子供に自身の介護を要求する奴だと…な?お前たち…」


オルガナがそう言うとギャリーとミヒャエル、ミヒャエルの同僚、同じ部署の皆が返事をする。


「俺たちの女神に近づくな!」


「事情は聞かせてもらった…そんなことは許されない!」


皆銃を向ける。その騒ぎに住民たちも家から出てきた。


「二度とここに近づくな!いや、この町から出ていけ!」


「出ていけ!!」


サヤの両親は公衆の面前に晒されやむなく退散した。

作戦はこうだ。サヤとレドが所属する部署の仲間、ミヒャエルの同僚、オルガナに協力してもらい、両親を驚かす作戦。いわゆるハッタリってやつだ。両親はそれに見事ひっかかり逃げ出したというわけだ。


「あー…住民の皆さん、落ち着いてください!今のは演劇の練習です。もちろん銃は本物ではなくオモチャの銃です。巻き込んでしまい申し訳ございません。」


「あら…そうだったのね…頑張ってくださーい!」


住民の皆は納得して家の中へと戻っていった。作戦は見事成功した。


「オルガナさん、部署の皆、お兄ちゃんの同僚さん…本当にありがとうございました!私のためにこんな大規模なことを…」


サヤとレドは、来てくれた皆にお礼をする。


「いいんだよ、女神ちゃん!いつもの笑顔見せてくれたらチャラだよ!」


「いやいや、君たちの果たしたことに比べたら大したことないさ!」


「あれがミヒャエルの妹…かわいすぎるな…」


皆笑顔でサヤを励ます。


「克服…できたか?」


「うん!皆がいるから!」


無事にサヤは両親との因縁を解決し、皆との絆もより深くなった。


両親の方からなにか言われると思っていたが…オルガナの組織を恐れなにもできぬまま町を出ていった。と風の噂が聞こえてきたのはここだけの話…

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