エピソード32 サヤの両親

翌日の朝…レドは一人考えていた。


(今回の事件で一生隠し通すのは無理だと実感したな…二人でより幸せに過ごせる時間を増やしたい…となると、結婚か?でも早すぎる…)


サヤと結婚することを。レドはサヤと一緒にいるうちに、このまま一生サヤと添い遂げたいと思うようになっていた。しかし、二人は付き合って一ヶ月程で、まだ早すぎるという自覚もある。そこへ…


プルルルルルプルルルルル


「電話?でるか…はい、用件は?」


「レド!今そっちにむかってる!いいか、インターホンが鳴っても絶対に出るな!サヤに危険が迫っている!」


そう言い残すと、電話は切れてしまった。


「なんだったんだ?だがミヒャエルの奴…ずいぶん慌ててたな…警戒しておこう…」


「電話誰からだった?」


あくびをしながらサヤが起きてきた。


「ミヒャエルからだよ。お前が心配だってさ。」


「フフッ…お兄ちゃんらしいや…」


そこでインターホンが鳴る。


「あ、今出ま…」


「サヤ待て。実はミヒャエルから伝言があってな…インターホンが鳴っても出るなと忠告されたんだ。」


すると…


「サヤ!早く出ろ!お前はいつまでものろまだな!」


「もうお父さん落ち着いて!サヤちゃーん?でてくれる?」


レドからしたら聞いたことのない声だったが、サヤは気づいていた。


そう、サヤの両親であると…あのときのことがフラッシュバックして、サヤは息が荒くなる。レドもそれに気付きサヤを落ち着かせる。


「なん…はぁ…はぁ…なんで…?」


「しゃべるな。息に集中しろ。何も考えるな。」


「うん…」


またインターホンが鳴る。こんどはドアを叩きはじめる。


「早く出ろと言っているだろう!?なぜ言うことをきかないんだ!?」


「サヤちゃーん早くでてちょうだい!」


レドはサヤの耳をふさぎ、顔を合わせる。


「大丈夫だ…じきにミヒャエルがくる…!安心しろ…」


サヤは泣きながらうんと頷く。とても苦しそうだった。すると…


「お前らなにしてるんだ!早く立ち去れ!接近禁止命令が出されているだろ!」


「誰なんだお前は!俺たちは娘に会いに来ただけだ!」


「そうよ?何も悪くないじゃない!」


話が通じるタイプじゃなさそうだ。ずっとわめき散らしている。

そこで、レドはサヤを風呂場に隠して、ある人物に電話をすることにした。


「……ああそうだ。サヤの過去は知っているよな?……両親が押し掛けてきた。」


電話が終わるとサヤの方に行き、また落ち着かせる。

しばらくすると…


「うちのサヤに近づくんじゃねぇよ!くそどもが!」


そう誰かが言った後に殴るような音が二回聞こえた。するとわめき声はしなくなり、ミヒャエルが入ってきた。二人が風呂場からでると…


「サヤ!本当大丈夫?ごめんね…すぐに来れなくて…友達失格だわ…」


ギャリーとミヒャエルがいた。


「わっ…ギャリー!なんでここに…?」


「俺が呼んだんだ。サヤに危険が迫ってるってな。そしたらすぐ食いついた。」


次にミヒャエルがサヤを抱きしめる。


「ごめんな…兄ちゃんなにもやってやれなかった…本当にごめん…」


「お兄ちゃんも…?皆ありがとう…本当に…」


一段落したところで、四人はコーヒーをすする。


「なぜあいつらは家を知っていたんだ?なんの目的で…」


急に押し掛けてきたサヤの両親に、戸惑いを見せる。


「わからない…弁護士がなにか教えたんだろう。目的は親権を取り戻すことじゃないか?なぜかは知らんが。今は施設側にある。」


「あたしを呼んだことだけは正しかったわね?レド。」


「すぐ来そうなの、お前しかいなかったからな。」


「あぁん?」


二人が喧嘩を始める一歩手前で、サヤが感謝を述べる。


「ギャリー、お兄ちゃん、来てくれて本当にありがとう。それにレドも…一緒にいてくれてありがとう。」


「当然だよ。」


その後、四人はサヤの両親について話始めるのであった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る