エピソード23 サプライズ

レドが進んだ先には、まるでコロシアムのような空間が広がっていた。


「はい!じゃあレド君にサプライズしようかー。ほら、会いたかったでしょ?」


そうコウヘイが言うと、奥から千鳥足でサヤが歩いてきた。

どうやら様子がおかしいが…


「サヤ!?大丈夫か?なにかされてな…」


「違う…私じゃない…レド…逃げ…」


サヤはそう言うと顔を上げた。それをみたレドは驚愕した。目は赤く染まり猫のような細長い眼孔。かつて、ラ・タリータでなった姿に似ていたが、どうも違うところがある。


「サ…ヤ…?」


「やめて…来ないで…殺したくなる…!」


言い終える前に、サヤは血眼でレドに飛びかかった。


「サヤ!戻ってこい!俺はそばにいる!」


そう問いかけてもサヤは返事をしなかった。返事をしたのは…


「もっとコロシタイ……ねぇ…レド…?」


サヤではない誰かだった。ニヤリと笑う顔にはもうサヤの面影はなかった。

歯は吸血鬼のようにとがっていて、眼は赤くギラギラと光っている。裂けるほどに笑う口。


「あら、こんにちはレド…私は…コウヘイ様に作っていただいた第二の人格……そうね…キルハ…とでも呼んで?私は彼の命令には絶対に従うわ…たとえ手を汚すことだとしてもね。」


「とりあえず状況わかるー?サヤに第二の人格を作った。僕がね。キルハは従順だ…なんでもするだろう…そう…なんでもね…!ウイルス散布の手伝いだってしてくれるだろうなー。そうしたらサヤは犯罪者になるねぇ。困っちゃうでしょ?ほら、僕の元にはキルハの人格を消す薬があるよ。とりにおいで。」


そういい、コウヘイはマイクの電源を切った。


「私の人格を消すなんて…酷いこといいなさるわコウヘイ様…でも…まずは信頼を勝ち取らないとね。アハッまたあとでねレド…次に会うときには…サヤはいないと思うけど…!」


キルハは笑いながら部屋を去っていった。


「………サヤに新たな人格を作った…?そんなこと可能なのか…?いや、なにより今は薬を手にいれないと…!ウイルスの散布など絶対にさせない!」


レドは決意に満ちた表情で、その場を後にした。

先に進むと、これ見よがしに地図が置いてあった。赤いバツ印の位置こそ、薬が置いてある場所だった。


レドは地図を頼りに薄暗い施設の中を進む…道中は、先ほどのような人間だったであろうものたちがうようよいた。


「この数だけ市民が被害をっ…!コウヘイ…絶対に許さん…!」


急ぎ足でバツ印の場所へと向かうと、そこは隣の部屋がマジックミラーで見える部屋だった。そこへコウヘイとキルハが入る。


二人はマジックミラーであることをわかっていて、レドがいる方に向けて銃を撃つ仕草をした。そしてキルハは自ら拘束具に入り、コウヘイはナイフを持つ。


「ねぇレド…みえてるかしら?これからサヤに変わるから楽しみにしててね…!」


そういうと、キルハは消えてサヤが戻ってきた。主導権は完全にキルハが握っているようだ。


「………う…頭いった…」


「サヤか!?サヤ!俺は隣の部屋にいる!今すぐそいつから逃げろ!」


「遅いんだなぁ。全てが。」


そういうと、奴はサヤの目にナイフを刺した。


「あっ……がっ…」


痛みで声が出ないサヤを見て、奴は笑った。


「やめろ!サヤを傷つけるな!」


「プッ…アハハハハ!」


笑いながら何度もサヤの腹にナイフを刺す。


「うぅ…あ…レド…助け…て…」


そういうと、部屋が真っ暗になった。レドはライトを持っていたため、電源をONにする。

そしてライトをつけた瞬間…キルハが目の前にいた。

キルハはレドに襲いかかり、レドの首を絞めようとした。


「サヤ、痛そうだったねぇ!おかしくて涙が出ちゃうわ!アハハハハ!」


が、レドが反抗する。笑うキルハの顔を殴り、レドは立ち上がる。


「……いるんだろ?サヤ…頼む…戻ってきてくれ…!」


「まだそんなこと言ってるの?あいつは私がいなければ戻っては……あっ…なによ…静かにしなさいよ!……くそっ自我が乗っ取られ…」


焦るキルハ、そこへコウヘイがくる。ため息をつき、


「やっぱ失敗だったなー。サヤちゃんに新しい人格作るとか…キルハ、もう死んでいいよ。」


「は?」


そう言い終わると、コウヘイはレドが止める前にキルハを'消した'。


「ほら、してほしかったんでしょ?やってあげたよ。時期に目を覚ますさ…じゃ、僕らは僕らでかたをつけようか?」


笑いながら言うコウヘイに、レドは殴りかかる。


「望むところだくそ野郎……!」


それは思いっきり顔面に当たり、コウヘイは吹き飛ぶ。しかしなお笑っている。


「僕が考えもなしに君と勝負すると思った?思わないでしょ?奥の手があるんだよ…」


そういい、自身の身体に薬を注射する。すると、みるみる体格が変わっていき、元の二倍ぐらいに膨れ上がった。


「ドーピングってことかよ……!」


コウヘイは殴りかかってくる。レドは死を覚悟した…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る