エピソード11 裏切り


三人が運転室へむかっている最中、サヤはレドの手を握って、


(早く目を覚まして…お願い…)


と祈っていると、レドのポケットから一枚の紙が落ちた。

サヤはそれを手に取り読む。


ーーーーーーー


俺はモーリスの組織に入ったとき、すぐに奴が黒だということに気づいた。


それを隠し通すのは大変だったが、後悔はしていない。


モーリスとガルタナが繋がっている証拠を掴んだ。あとはこれを信頼できる人物に渡すだけ。


俺は正義のためならどんな手段でも辞さない。たとえこの命を落とすことになろうとも…


ーーーーーーー


「なにこれ…この命を落としてもって…ばか。レドのばか!そんな簡単に命を捨てるなよ!起きろ!このあんぽんたん!」


レドは意識を取り戻した。


「……っ!!うるさいぞ…サヤ。なにを騒いでる?」


サヤは泣きながら叫んだ。


「この手紙なに!なにがこの命を落としてもだ、レドを大切に思ってる人だっているんだよ!私だってそうだしラグナもそうだ!」


「あ…その紙読んだのか…?」


サヤは鼻水をすすりながらレドに抱きついた。


「レドのばか!!ばかばかばかぁ…」


レドは抱きつかれたことに驚いたが、抱き返した。


「…すまなかった。心配かけて…もうこんなことはしない。だが、やることがある。ラグナの元にむかわなければ…」


「なんで…?だってレド撃たれて…」


レドは防弾チョッキを着ていて、ほぼ無傷であった。

それに気づいたサヤは頷く。


「うん。この船を跡形もなく吹っ飛ばそう。世界のために。」


一方ラグナたちは運転室へとたどり着いた。


「この中のどのスイッチだ?………えーと、これか。」


ラグナは赤いスイッチを指差す。そのとき…


「ナタリア、なんのつもりだ。」


ナタリアがクライアとラグナに銃を向けた。


不敵な笑みを浮かべ、ナタリアは言った。


「私はウイルスのサンプルを回収してある組織に売る約束をしてるのよ。つまり、あなたたちは邪魔でしかない。」


「俺達は騙されていたってことか…」


「そうよ。私はそこのサンプルを回収してから船を爆破させる。もちろん、あなたたちも含めてね。」


そういい、ナタリアはキャリーケースへと目を向ける。


「そうはさせるか。」「そうはさせない。」


誰かがそう言い、部屋へ入ってくる。


「俺達が止める。」


「私達が止める。」


二人は運転室へ入り、ナタリアへと銃を向ける。


「あなたの目的は阻止させてもらう。これ以上事件は起こさせない。」


「あら、裏切り者は他にもいるわ?誰かしら…ねぇ、レド。」


「…くっ!!」


「嘘をつくのはやめろ。レドがそんなことするわけがない!ね、レド?」


そうレドに言うと、レドは銃を下ろし言った…


「その通りだ…俺は…運転室までウイルスを運んだ…ナタリアに渡すために!」


「っ!!!」


「ほらわかる?あなたたちは最初っから私達の手の上で踊らされていたのよ!そうでしょうレド。」


裏切られたことに怒りと悲しみを覚え、サヤはレドへ銃を向ける。


「最初から騙していたの!?全て…?なにもかも…?」


サヤからの敵意にレドは胸が苦しくなる。しかしレドは言った…


「もちろん最初はそのつもりだったさ。でもこっちには事情があってな。裏切らせてもらう。ナタリア、サンプルを俺達に渡せ。もうこんなテロ事件は起こさせない!」


「な!?私を裏切る!?ふざけんじゃないわよ!」


そう言い捨てて、レドへと銃を向け発砲した。


レドは死を覚悟した。

だが…弾丸がレドに当たることはなかった。弾丸はレドを庇ったサヤの腹に命中していたのだ。皆が驚いている間にナタリアは船の爆破ボタンを押し、ウイルスを持ち去っていった。


サヤの意識が遠のいて行く。


「はは…無茶…したな。」


「なぜ俺を庇った!?お前を裏切っていたんだぞ!そんなやつを助けるなんて…」


「信じられたから…あなたのことだけは…信じることができた…そんな人初めてだった…だから庇ったの…それだけ…」


サヤの言葉に、レドは心を痛める。


「本当にすまない…俺はサヤに肩を貸しながら応援要請のヘリに向かう!二人はナタリアを追ってくれ!」


「裏切っていたことに色々言いたいが今は聞こう。俺達はナタリアを追う!任せろ!」


そういい、二人はナタリアを追っていった…

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