エピソード9 サヤの過去

エントランスへとたどり着いたサヤ。

駆け足でレドが去ろうとしているのを見て


「レド!待って!伝えたいこと…が…」


「俺は急いでるんだ。頼む、今度に…」


「キャロルのこと…で…はぁ…はぁ…」


「あいつになにかあったのか!?早く教えてくれ!」


サヤはパニックになっていた。伝えようとしても言葉が出ないで、喉でつっかかる。絶対にレドを傷つけることになるとわかっているから。


サヤは過呼吸になる。過去のことがぐるぐると頭を回る。


「なんでそんなこともできないんだ?お前は屑だ。どうしようもないゴミなんだよ。」


息が苦しい。苦しい。苦しい。サヤは泣きながら…


「ごめ…なさ…全部…私が悪いの…ごめんなさいごめんな…さ…」


そのまま倒れてしまった。


「サヤ!?どうした、大丈夫か!?」


そこへ、ラグナが到着した。


「おい、なにがお起きたんだ!?サヤの発作が…こいつはパニック障害なんだ…なんでそれが今…?」


「すまない…俺が焦らせたから混乱してしまったんだ…パニック障害?昔サヤになにかあったのか…?」


「あぁ、こいつは親に虐待されていたらしい。身体的暴力と精神的暴力を与えられていたんだ。そのとき、サヤの兄も虐待を受けていたらしい。サヤ曰く、守ってくれたとか。」


「サヤにそんな過去が…本当にすまない…」


少し冷静を取り戻したサヤは、返事をする。


「ううん…レドは悪くないよ。悪いのは私なの。いつまでも過去のことを引きずっているなんて、よくないよね…でも時々フラッシュバックして、こうなっちゃう…」


「いいや、お前は何も悪くないさ。悪いのはお前の親だ。お前に責任は何もない。」


サヤは、今まで感じたことのない幸福感に満ちて笑った。


「そんな風に言ってくれたのレドが初めてだよ…ははっ…ありがとう。あ、そういえば用があるんだよね?早く行ったほうがいいよ…」


「すまない。この埋め合わせは必ずどこかでする。またな。」


サヤはレドが行ってしまったことに少し寂しくなったが本人はそのことに気づいていなかった。彼を想っていることにも…


「大丈夫か?それじゃ、カジノに向かうとするか。」


「うん…行こう。」


そこに一本の無線電話がかかってきた。


「あぁ、やっと繋がった。大丈夫かね?二人とも。」


「心配ご無用です、ボス。」


「クライアとナタリアが本部へと帰還してきたんだ。そして、今二人の捜索に向かわせてある。君らはおそらく囮だったのだろう…」


二人は状況を理解する。


「それと、ラ・タリータにウイルスのサンプルが保管されていることが濃厚になった。それと応援を要請してある。全員が船から脱出したらウイルスごと船を吹き飛ばす。ラ・タリータの運転室にスイッチがあるはずだ。」


そこで通信は終わった。


「ラ・タリータの爆破…それが一番安全な策だよね…」


そして、二人はカジノへと向かった…

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