エピソード5 死んだはずなのに

二人は運転室の調査を終え、レドが行った方へと進むことにした。

その場所は、エントランスだった。


「とても広い…二人で手分けして別々の部屋を探索したほうがよさそう。


「そうだな。ここで一旦分かれよう。集合場所はここだ。何かを見つけたら戻ってこよう。それじゃまたな。


「うん。」


二人は手分けして探索することにした。それぞれラグナは二階、サヤは一階の探索をする。


「開く扉が思ったより少ないな…鍵が必要…」


「おい、ラグナのパートナー。こっちへ来い。」


「レド?あなたもここにいたの。それと私の名前はサヤだ。呼び捨てでかまわない。」


「それじゃサヤ、俺は鍵を持っている。食堂のな。俺も後から向かうがお前のほうが先に行きたいようだし渡しておく。せいぜい気を付けることだな。」


「なぜ持っているのかは聞かないけど、ありがとう。先に進んでる。」


サヤは食堂へと向かった。食堂に行くにはエレベーターを使わなければならなかった。


「ラグナと離れてしまうな。危険…だけど、レドのあの感じからするになにかはあるだろう。よし、行くか…」


サヤはエレベーターに乗り、食堂へと向かった。食堂の扉の前に行くと、中から叫び声が聞こえてきた。


「やめろ!やめてくれ!俺がわからないのか!?船長!」


「!? 生き残り!?早く、人命救助が最優先よ!」


サヤは急いで鍵をあけ、食堂へと入った。そこには、とてもでかい顔が二つある、チェーンソーのような腕はまさに怪物と呼ばれるに相応しいものと、それに襲われている一人の男性。おそらく船員なのだろう。服がそうであった。


「まずい、襲われている!あれには私の体術は通用しない!早く逃がさなければ彼は死ぬ。急げ、急げ!」


サヤはすぐさま男性を避けさせ、その代わりに自身の左腕を失った。


「がぁっ…ぐっ…早く、逃げて!お願い!」


「本当にすまない!ありがとう!」


男性は千鳥足で逃げていった。しかし、これからどうするというのだ。片腕もなく、血が滴り落ちる音を最後に、サヤはチェーンソーによって腹を突き抜かれた。


………………………


サヤは倒れる。大量出血で死ぬのは間違いない中、走馬灯が頭をぐるぐると走り回る。


(人助けで死ねるなんて、私は幸運だ…あぁ、寒い…寒い…もう、駄目か…)


サヤは冷たく動かなくなっていくなか、自分の左腕が、いびつに変異していくのを確認し、意識を失った…


………………………


一方、エントランスで。レドは食堂へと向かっていた。


「あいつも探索を終えていないだろうし、そろそろ入るか…」


レドは食堂に入る。妙に静かだ。本当におかしいほど。そして目にはいるのはサヤを殺したあの怪物……の死体であった。


「でかい怪物!?生きては…いない?おかしい。こんなものを殺せるなんて人間じゃ不可能に近い…なにかがいると見て間違いなさそうだな…」


ザンッザンッザンッザンッ


刃物を引きずるような音を聞き、レドは銃を構える。その先にはさっきの怪物と同じぐらい、いや、それ以上にでかい。左腕が刃物のように変異した、化け物がいた。


「なっ!?くそっ、サヤはどこへ行った!?こんなやつを放って先へ進んだのはあり得ない…あいつも襲われたのか!?」


レドの独り言をよそに、化け物はレドへと向かってきた。が、突然雄叫びをあげる。


「&%*;::/&+%-」


まるで不協和音のように、耳をつんざく。そして、化け物は一目散に逃げ出した。階段をあがり、見えなくなったところで雄叫びは消えた…


「なにが起こったんだ!?あの化け物が逃げるなんて考えられない…」


そう言いながらレドは後を追う。その先には、サヤが血塗れで倒れていた。


「うぅ…ううぅ…」


「!! サヤ!おい、大丈夫か?」


「救急スプレーを…ポケットに…ある…うぅ…」


「わかった。少しいじるぞ。」


レドはポケットから救急スプレーを取り出し、傷口にかけた。すると、サヤは少し落ち着いたようで、安堵した顔をしていた。


「あり…がとう。レド。本当に…」


「目の前の怪我人を放っておくやつがいるか。当たり前のことをしたまでだ。」


「兄さんに、怒られ…ちゃうな…怪我するなって…言われてて…ははっ…なんでこんなこと話してるんだろ…」


「口を閉じろ。傷にさわる。今は回復に専念しろ。」


傷口に包帯を巻き、応急処置をしたあとサヤを抱え、エントランスへと向かうのだった…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る