◇16 大人しくしてろ!!
シシスゴマンダーの生息地までは約10km。途中から険しい森の中に入り、その先にシシスゴマンダーの生息する洞窟がある。
「私はケルピーで行くけど……君はカーバンクル?」
「え?」
「だって、ここから結構遠いよ?」
あ、そっか。アグスティン知らないんだっけ。じゃあアグスティンに頼んじゃいけないか。
『え、俺? 俺の出番? やったぁ!』
「いい?」
『任せろ!』
なんて言いながら巨大化したバリス。あ、やる気十分ですね。んじゃよろしくお願いしまっす。
対してエルフお姉さんは地面に膝をつき、祈るかのように両手を組んで目をつぶり、何かを唱え始めた。
けど、何を言っているのか分からない。というか聞き取れない。エルフ語とかそういうのか?
そして、彼女の目の前の地面に出現した青色の魔法陣。その上に青白い光が集まり出し……形を作った。
おぉ、アレがケルピーか。馬みたいで、なっがい角が生えてる。
……ん? なんか、こっち見て、びっくりしてない……? あ、あとずさりしてないか……?
『これだから低級は。どいつもこいつも腰抜けね~』
……あ、こいつか。最上位精霊の二匹がこっちにいるからか。てかトロワ、お前睨んだりとかしただろ。ビビってんぞ、ケルピーさんが。
「じゃあ先導するわ、着いてきて」
「分かりました」
いいか、絶対追い越さずに付いていくんだぞ。よ~くそう言い聞かせ、バリスの上に乗った。うん、まぁ乗り心地はいい。アグスティンよりは。あれ結構お尻痛いんだよなぁ。こっちはふわふわしてていいな。
と、余裕ぶっこいていた俺が馬鹿だった。
めっちゃ早かった。
「こらっバリスっ!!」
『やっふぉ~!』
「追い抜かすなっつったろ!!」
「あっちの森に入って!」
「すんません!!」
まぁ、こうなる事を予測していなかった訳ではない。期待を裏切らないな、お前は。
すんげぇ苦笑いだぞ、エルフお姉さん。
なんて事を思いつつ、森の手前で止まってもらい。ケルピーに乗ったエルフお姉さんを待った。ここからは険しい森だからちゃんと後ろをついていかないといけない。
「ちゃんと付いていかなかったらコロッケなしな」
『えっ!? やだやだやだ~!!』
『バリス、アンタの分は私が貰ったわよ』
『酷い事言うなよ~!!』
どんだけ食いたいんだよ、お前らは。食いっぷりもいいし。お腹空かないんじゃなかったのかよ。
『ルアンに乗ってもらえてるからって生意気よ!』
『お前はただ肩に乗ってるだけじゃねーか!!』
「
『してないも~ん!』
『してないしてない!』
お前ら、仲が良いんだか悪いんだか。まぁ喧嘩するほど仲が良いっていうしな。
けど、隣にいるアグスティン、じっとしててつまらない顔してるんだけど。ごめんな、喋らせてやれなくて。こいつらのコロッケお前にやるからそれまで我慢な。
そして、着いた。大きな洞窟だ。
覗いてみたら……なんか、変なにおいがするな。けど、魔力? なのかどうだか知らないけど、エネルギーみたいなのを感じる。これがシシスゴマンダーのエネルギーなのか?
「ここからは歩きで行くよ。静かにね」
「は、はい」
昨日、ここにはシシスゴマンダー以外の魔獣はいないと聞いた。まぁ、弱肉強食という言葉がぴったりだろう。そもそも魔獣の間ではこれが当たり前なのだそうだ。まぁ、動物みたいなもんか。
バリスにはいつも通り小さくなり肩に乗ってもらい、エルフお姉さんと中に進んだ。
うわぁ、森もちょっと寒かったけど、ここも肌寒いな。長袖にすればよかったかも。
「……感じる?」
「え?」
「身体、ビリビリするでしょ。これは、シシスゴマンダーの魔力よ。シシスゴマンダーの魔力が洞窟内に溢れ出してるの」
……ビリビリ、するか? ただ寒いだけなんだけど。
______________
防御力:∞
______________
あぁぁぁぁぁ、こいついたよ!! 無限のやつ!! チートステータス!!
やばい、バレたらヤバいぞこれ。あ、でも俺が魔力大量だって事はエルフお姉さんは知ってる。精霊使いって思われてるみたいだけど、精霊使いってこういうの出来るか? う~ん分らん!!
あ、そうだ、トロワがいるじゃん。トロワに助けてもらってますって事にしよう!
「ありがとう、トロワ」
『え?』
「お前は最高の家族だよ」
『えっへへ~、敬いなさい!』
『え~ずるいずるい!! 俺も!!』
お前らが単純で良かったよ、うん、ありがとう。あとでコロッケな。あ、そういえばとんかつみたいな、デカい肉を揚げたようなやつを見かけたような。今度はそれを買ってみような。
「ここからは注意していこう」
「あ、はい」
そろそろシシスゴマンダーがいる部屋に到着するらしい。気を引き締めて行かないとな。
シシスゴマンダーか。竜なんだろ? A級のお姉さんでも倒せないらしいし、結構強いって事だよな。
でもアグスティンより低級みたいだしな。となると、一体アグスティンはどんだけ強いんだ?
未知数ではあるけれど、でも味方でいてくれるなら万々歳だ。しかも家族だし。
「そろそ…」
「え?」
お姉さんが、そう言いかけて。
けど、お姉さんは言い切らずに止めた。
何かに気が付いた。いや、悪寒がしたんだろう。
俺も、頭の中で警告音がしたような気がした。
スローモーションが起きた様な、そんな感じで。
そして、俺達のいる道の壁が……
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