◇8 ウサ耳結構可愛いな
ネコ耳親子も見送った事だし、さて、俺も行きますか。
門番に教えてもらったけど、ここをまっすぐ歩くと大きな噴水の広場があって、そこを右に曲がると一番大きな建物があるらしい。そこがこの町の役場だそうだ。
門から進んでみたけれど、何だか日本から外国に海外旅行に来たような感覚だ。まぁ外国に来た事は間違ってはいないか。
でも、気が付いたことが一つ。
なんか、いろいろとデカくないか?
周りの家、入り口のドアが縦にも横にもデカいし、家自体もデカい。2階建てのはずなのに、3階建てみたいな大きさになってる。まぁ、周りを見渡すと獣人が多いんだけど、門番の人たちみたいにデカい獣人が多い。
トラ? ヒョウ? ライオン? みたいなやつらがデカい。非常にデカい。いいのか、これ。ぶつかったら吹っ飛ばされないか?
まぁ気を付けていればいいか。騒ぎを起こさないよう気を付けよう。
『人間って生き物は色々と面倒なのね~。ただ国に入るってだけで、ヤクバ? に行かなきゃいけないなんて』
小さくなって俺の肩に座っていたトロワがそう呆れていた。
まぁ身分を確かめないといけない所は面倒だけど、それは自分達の身の安全のための大事な事だ。今見える活気にあふれた国民達が笑って過ごせてる理由に、この仕組みも入ってる。まぁ一部分しか見ていないからこの国が安全で平和なのかは分からないけど。
……それより、だいぶ注目されてるな。その原因はこの服装か。周りには他国から来た人も何人かいるけれど、まぁ似たり寄ったり。だから明らかに違うこの服装を珍しく思うのは普通の事だ。
それに、パラウェス帝国の奴らは俺の着ていたこの服を目撃している。ここはパラウェス帝国の隣の隣だけど、噂は流れるのが早いからアイツ等の耳に入る前に着替えなければ。
と言っても、服屋は全然見当たらない。役場に行く前の方がいいだろうけど……あれ、あそこ服屋か?
まぁ周りと同じくお店はデカい。それに建物の前が全部開いていてオープンになってる。そう、ドアがない。変な建物だなと思ったけれど、周りを見渡してもそれっぽい建物はそういうのばかり。そういうのが普通なのか。
店の外観は、古くなく新しくない。入ってみたら、うん、古着屋さんみたいな感じだな。マネキンとかはなく、ハンガーにかけてずらっと並べただけ。
けど、デカい服ばかりだな。まぁここの人達はデカい人たちばかりだからわかるけど。あ、小さいのあった。
よさそうなサイズのを一つ一つ取って見てみるけど、ファンタジーに出てきそうな、そんな服ばかり。外で見た人達が着てたような服だから、何か適当にこん中から選ぶか。
『青なんてどう? ルアンに似合いそう!』
「バレるから喋るな」
『え~』
ったく、勝手に喋るなって。今は陰身魔法で姿を消してるんだから。店内に人は……
「何かお探しですか?」
いた、この店の人が。ふさふさ耳が付いているから俺と同じく獣人か。この町では、だいぶ獣人が多いみたいだな。
トロワとの会話、聞かれてたかな。
「獣人の方でしたらこちらをどうぞ!」
うん、気付かれてなかったみたいだ。まぁ聞こえていたとしても、姿が見えないから空耳ぐらいに思ってくれるだろう。
「最近の流行りですとこちらが人気ですね」
へぇ、獣人用の服って尻尾出すための穴とかあるんだ。尻より上、腰よりちょっと下あたりにあるんだけど、今俺の履いてるジーパンだとちょっと痛いんだよね。でも、これなら痛くなさそうだ。
流行とかはさておき、とりあえずシンプルで目立たなそうな服を見繕おう。
「お客さんは、どちらからいらしたんですか? 見たことのないお洋服ですね」
「ちょっと遠くの田舎町です」
世界からして違うから、ちょっとではないけれどまぁいいだろう。
遠くからなんて大変だったでしょ、と言いつつ紙袋に入れようとしてくれてたけど、着ていきますと言って止めた。
じゃあタグだけ外しましょうか、とハサミに似たもので金額の書かれたタグを切ってくれた。へぇ、こんなのあるんだ。
紙袋も渡してくれて、ここに脱いだ服を入れて帰れるようにしてくれた。大体地球と同じか? なら助かるな。
「わぁ! お兄さんお似合いです! お兄さん背も高くて細身だし顔も整ってるから注目の的になっちゃいますね!」
……なるか? まぁ今俺あの人気俳優似の顔だしな。注目されるのは嫌だけど。でも得する事があるかもしれないし、いっか。
さっさと役場行こ、そう思い支払いを済ませて店を出た。
支払いではちょっと苦労したけど、あのお姉さんが親切な方で助かった。Gには金貨と銀貨、銅貨があるらしい。一万Gが金貨一枚、1,000Gが銀貨一枚、100Gが銅貨一枚だそうだ。
値段とか見ても細かくなくお金は3種類。日本円より簡単だな。助かった。
門番に教えてもらった通り、行き着いた先にはとても大きな建物があった。ファンタジー漫画でよく出てくる大きなギルドの建物とか、そういう感じのところだ。うん、やっぱり玄関でかっ。
中に入ってみると、とても広い空間に、横に長く並ぶカウンターテーブル。テーブルを挟んで役場の職員と客が椅子に座って話をしているのが何人も見える。忙しそうだな。
わ、役場の職員全員獣人だ。ウサ耳に猫耳、垂れ耳とか様々だ。頬にヒゲの生えた人もいる。
「ようこそ、本日はどういったご用件ですか」
やべぇ、ウサ耳だ。可愛いスカートを履いた美人職員さん。初めて見たわ。これも異世界の
「ついさっき初めてここに来たのですが、お恥ずかしながら身分証を無くしてしまいまして。門番の方にこれを渡されて、ここに来ました」
「なるほど!」
ではこちらにおかけください、と一箇所空いてる席に案内された。
うん、なんか日本の役場みたいだな。人は違うけど。
「こちらに来たということは、無くされたのはパスポートということでお間違い無いですか?」
「え?」
「あ、ギルドカードお持ちでしたか?」
「あ、いえ。パスポートです」
「分かりました。では少々お待ちください!」
と、一言言って、俺の渡した書類を手に席を外したウサ耳美人職員さん。
今の話を聞くと、身分証にはパスポートと呼ばれるものと、ギルドカードというものがあるみたいだ。門番、何も言ってこなかったな、そういうの。ちゃんと仕事してんのか?
そしてまた戻ってきたウサ耳美人職員さん。何かトレーを持ってきて、俺の前に出してきた。トレーに置かれていたのは、名刺のような銀のプレート。紋章みたいなのが彫られている。
「こちら、新しいパスポートになります。紛失ということですので、再発行には1万Gかかります」
1万Gか。この国に入る時の通行料とだいたい同じだな。そんな事を思いつつ、金貨1枚を置いた。
「パスポートは入出国の他にも、宿泊時や神殿での治療だったりと使用する場面が沢山ありますから、次は絶対に無くさないでくださいね」
ほぉ、結構使う場面がありそうだな。宿にも使うだなんて、危なかったな。
神殿での治療って言ってたけど、神殿って病院みたいな? あれか、ヒールとかの回復スキル持ってる人がいたり? ありそうだな。
「お兄さんはギルドには所属していないようですが、これから入る予定はございますか」
「え?」
「もしよろしければ、こちらで書類をご用意いたしますよ。ギルドに行ってからまたここに来るのは大変ですからね」
なるほど、ギルドに入るとこっちでも手続きをしないといけないってことか。面倒くさいな。
「すみません、俺、田舎から来たものですから、ギルドとか分からなくて。もしよければ教えてくれませんか」
「あ、レレラス出身でしたよね。では、私からご説明させていただきます」
ウサ耳美人職員さんは、丁寧に教えてくれた。
ギルドにはハンターギルド、商業ギルドの二種類がある。同じ職業の人達が集まった組合のようなもので、入る事により仕事の
ハンターギルドは、集められた依頼を遂行する組合だ。魔獣の討伐、護衛、採取など。
依頼内容は、比較的安全なものから、命懸けのものまで様々だ。その代わり、危ないものほど稼げるお金の金額が上がってくるみたいだ。まぁ命を懸けるのだから当たり前だな。
商業ギルドは、商品を売買する商売の手助けをするギルドだ。商売を始めるにあたっての援助、商品を売るためのちょうどいい商会探しなどをしてくれる。
身の保証と個人情報保護か、何とも魅力的な話だな。
「ギルドは全国各地に設置されていまして、全てのギルドに情報が行き渡るようになっています。ですから別の場所で何かございましても、すぐに対応してくださる事でしょう」
情報が全国に行き渡る、ねぇ。
今の俺は、一応追われる身だ。と言っても何も悪いことしてないけど。だから、何かしでかして帝国の奴らに見つかるなんてことは避けたい。
きっと帝国の中にもギルドはたくさん設置されてることだし、あいつは皇帝だ。ギルドを利用して俺を探すことだって出来るかもしれない。
「……う〜ん、難しそうだからちょっとやめとこうかな」
「えっ?」
「じゃあ、ありがとうございました」
そそくさと、役場を後にした。ウサ耳美人職員さん、ありがとうございました。
『なぁ、これからどこ行くんだ?』
「とりあえずメシ」
さっき、パスポートと一緒にここの町、〝トメルリ町〟の地図を貰った。ギルドに役場、宿屋に食堂、酒場の場所もマークで記してある。とりあえず、よさそうな所を探してみようかな。
あ”~、マジで腹減った。
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