11
「こんなもんですかね」
二人で片づけること10分。
ゴミ捨て場は、散らかす前よりもきれいになったんじゃないだろうか。
いちくんがふーっと息を吐き出し、伸びをする。
下に落ちたゴミを拾っていたからか体が固まってしまった。
思ったよりも時間がかからなかったのは、
おばあさんが荒らし始めてからすぐ声をかけたからだろう。
下に落ちていたゴミはすべて拾って分別したし、
ついでに他のごみ袋も種類ごとに分けておいた。
こんなに、やらなくても良かったんじゃないか
と頭をよぎったが、いちくんの満足そうな顔を見て、心の中にしまっておく。
「戻りますか」
「真子ちゃんは、そこのベンチですかね」
ドアを開けながら会話をする。
団地の一画にある小さな公園のベンチだろう。
そちらの方向を見ると遠目に談笑する二人の姿が見えた。
これはどうしたものか。
ベンチに座って仲良くおしゃべりしている二人の間には入っていける気がしない。
いちくんが横をすり抜けていくので慌てて追いかけた。
「ここからは真子ちゃんの腕の見せどころです
ちょっと離れたところで待ってましょうか」
そう言って、ふたりが座るベンチのちょうど反対側に位置する花壇のヘリに腰掛けた。
座れるように石の座面みたいになっている。
いちくんが、スケッチブックを取り出しまた絵を書き始めたので、俺もそれに習って、最近入れたスマホゲームをやり始めた。
これがまた面白いゲームで、
単なるパズルゲームなのだが程よく難しく程よく簡単で何よりCMがない。
あの長ったらしいCMに邪魔をされると、
ゲームなどすぐ飽きがきてしまうのだが、
これはそんなこともない。
我ながらいいものを見つけたと内心嬉しく思っていた。
ここ数日、数時間取り組んでいたおかげで、
いい感じにポイントも上がってきたのだ。
しばらくゲームに熱中していると、
隣から肩をたたかれた。
2,3ゲームはやったから、30分くらいは経っているだろう。
叩かれた方向を見ると、いちくんが前を指さした。
真子さんとおばあちゃんが話していた方向だ。
二人が仲良く話している光景は変わらず…
しかし、その二人に駆け寄る影があった。
あれは、おばあさんの部屋を訪ねて来たときに出て来た…
たしか、ひなちゃんと呼ばれていただろうか。
自信がないので、ここはひなちゃん(仮)とでもしておこう。
ひなちゃん(仮)は二人に駆け寄ると、真子さんに頭を下げる。
「話が聞こえる位置まで行きましょうか」
いちくんの言葉に頷き、二人で少し移動する。
真子さんに近づくと、ひなちゃん(仮)がこちらに気づいたようで少し会釈してくれたのでこちらも、会釈しかえしておく。
仕事帰りなのだろう。
少し髪がほつれている。
どうやら真子さんがいろいろ事情を説明していたようだ。
ひなちゃん(仮)が申し訳なさそうに謝っている。
「良かったら、一緒に温かいお茶でも飲みながら話しませんか?
私の家、ここから10分とかからないんです」
ひなちゃん(仮)は驚いていたが、おばあさんを保護してもらった手前、断れないのだろう。
曖昧な困ったような笑みを浮かべて頷いた。
対して真子さんは、そこからは何も読み取れないような、笑みをうかべている。
そうして、俺たちは場を団地の小さな公園から、
探偵へふさわしい場所、雨之相談処へ移すことになったのである。
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