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俺は、団地の建物の陰にいちくん、真子さんと隠れていた。

それにしても、おばあさんが来る方向は物陰で大丈夫だとして、傍から見ればなんとも怪しい三人組である。


通る方向は見ずに、3人で腰を下ろしているのだが大丈夫なのだろうか。


「おれ、おばあさんが通らないか見てきます」


真子さんに言うと、首を振られた。


「いちくんが気づくので大丈夫ですよ

私達全員張り込みに関してはずぶの素人なので、

いちくんの力に頼りたいと思います」


大人しく先程の位置に腰を下ろす。

いちくんが、エンパシーを使って探しものをしているおばあさんに気づく。

それを後ろから見るという作戦らしい。

いちくんの方を見ると優しく微笑まれた。


「たぶん気づけると思います」


俺から目線を外して下に下げる。

目線を追うと、細長い草がきれいな三つ編みになっている。

どうやら草で暇を解消していたみたいだ。


器用なものだ。


真子さんもその隣で本を呼んでいるし、

俺もなにか暇つぶしの道具を持ってきた方が良かったかもしれない。




「今日はもう帰りましょうか」


3、4時間待っただろうか。

仕方無しにスマホをいじってしまって、を繰り返していたら、唐突に真子さんに声をかけられた。


6時から時間を潰して待ちくたびれたが、まだ夜の10時だ。

おばあさんがゴミ捨て場を荒らすのはもっと夜が更けてからの可能性もあるのではないだろうか。


 「まだ10時ですけど…」


スマホを取り出して時間を確認する。

やはり10時だ。


あ、と真子さんが気づいた顔をする。


「実はなみちゃんに事前情報を聞いておきました。

一緒に暮らしているひなさんはおばあさんの娘さんで、毎日22時頃には帰宅するそうです。


これまで、おばあさんが夜に徘徊したという噂は0。


また、お仕事に出ている間はおばあさんが一人でお散歩する姿が度々見受けられています。


ひなさんがお家にいる間に外出する可能性は低いです。」


先に説明しておくべきでした、と頭を下げる。


「いやいや、全然

そういうことなら帰りましょうか」


そうして、今日はなんの収穫もないまま、

俺たちは帰路についた。





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