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向井哲は雨之相談処の革張りのソファに座っていた。
コインランドリーと雨之相談処は一見普通の寂れた3階建ての建物かのように思える。
コインランドリーは言わずもがな、
外からの見た目通りで、床のタイルはところどころ割れたり剥がれていたり。
相応の見た目である。
しかし、雨之相談処はどうだろう。
アンティークと言われるのだろうか。
入口は重厚そうな年代物の扉であるし、
板敷きの床には高そうな絨毯がひいてある。
天井にはおしゃれなペンダントライトがぶら下がり、さながらおしゃれなバーのような雰囲気を醸し出していた。
目の前には窓に背を向ける形でこれまた立派な机と椅子が置いてあり、後ろは壁一面本棚となっている。
先程初めて来たときも驚いたが、2度目でもやはり周りを見渡してしまう。
どこかの迎賓館に迷い込んだような感覚である。
「すごいですよね。
私も初めて来たとき見回しました。」
きょろきょろ見ていたのがバレたらしい。
真子さんが笑いながら言った。
照明はペンダントライトとは言いつつもさながらシャンデリアだし、
細かなところまで雑貨が置いてあったりと、
見回してしまうのは許してほしい。
それにしても、初めてとはどういうことだろう。
真子さんがこの雨之相談処を作ったのではなかったのだろうか。
「ここは父が作ったんです。
家具とか照明とか雑貨も父の趣味ですよ。」
つまり二人は父の跡を継いでこの相談処をやっているのか。
心なしか真子さんが悲しそうな顔をしている気がした。
なにか確執でもあったのだろうか。
「さあ、ゴミ捨て場の作戦会議でもしましょうか!」
場の空気を変えるように真子さんがパンと手を叩く。
別に確執やらなんやらがあっても部外者の俺が突っ込むことじゃない。
誰だって触れられたく無い事の1つや2つあるものだ。
俺も…
彼女の笑顔が浮かんだが、すぐに打ち消す。
それにしても作戦会議とはどういうことだろう。
あのゴミ捨て場の一件は解決こそしてないものの、
なみちゃんと訪ねて、頼まれたことは終わったはずだ。
「事件は何も解決してませんよ。哲さん。」
真子さんは真剣そうな顔で言った。
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