3
渡されたポッキーを食べながら、待つこと数分。
お菓子を渡してくれた女性、さよさん他に
5歳の男の子を育てるなみちゃん
近くに住んでいるおばあちゃんのせんさん
が集まった。
たまに、らるちゃんと言う20代の女の子が来るらしいが今日は来ていないらしい。
みんな思いも思いに旦那の愚痴などを話し始める。
そんなことまで、と思うような事もあったが、
そこは顔も知らない同性のために秘密にしておこう。
なるほど、たしかにこれは井戸端会議だ。
「そういえば最近、団地のゴミ置き場が荒らされるようになって…」
なみちゃんがふと思い出したようにつぶやいたのは、ごみの分別について話しているころだった。
分別のルールを守らない人が多くその愚痴をさよさんが溢していたのだ。
「それは大変ねえ」
先程まで、ぷんすか怒っていたさよさんが身を乗り出して言う。
ゴミ捨て場が荒らされるようになったのは一ヶ月ほど前かららしい。
団地の住人しか捨てられないように鍵がついており、誰が荒らしているか検討もつかないという。
「どうしたらいいんでしょう。」
そう言ってなみちゃんは肩を落とす。
「なみちゃん、今年、団地の自治会長だもんね」
せんさんがそう言いながらなみちゃんの背中をさする。
「張り紙とかは…」
自分がそう言うと、なみちゃんはうつむいたまま首を横に振って、もう貼ってます。と小さな声でつぶやいた。
皆かける言葉もなく黙り込んでしまう。
「何を探しているんでしょうね」
コインランドリーがしばしの静寂に包まれたあと、
雨宮さんが首を傾げて言った。
なみちゃんが、え?と顔を上げる。
「鍵がついているなら、荒らしているのは団地の住人だと思うんです。鍵の付いてないゴミ捨て場ならこの近くに山程ありますし。」
その言葉に皆一様に頷く。
「つまり、そのゴミ捨て場じゃなきゃいけないんだと思います。
誰かが捨ててしまったものを探しているとか。
前に捨てたものがまた必要になったとか。」
そこまで言って、うーんと悩み始めてしまった。
こめかみに手を当て、首を傾げている。
「すごいわ!真子ちゃん、探偵さんみたい!!」
さよさんが興奮を抑えたような口ぶりで雨宮さんを褒める。
せんさんも小さく拍手をしていた。
なみちゃんに至っては口が開きっぱになっている。
「一応、探偵なんです。」
雨宮さんは恥ずかしそうに肩をすくめた。
たしかにそうだ。
この人は仮にも上の探偵事務所で働いているのだ。
そして、自分を雇ってもらわねばならない。
「でも、おかしいんですよね。
一ヶ月に何回も起きているなら、その捨ててしまったものはもうとっくに回収されてるはずです。
なんで何回も荒らす必要があるんだろう…」
雨宮さんの言葉に皆顔を見合わせて、また難しい顔に戻る。
この地域では、曜日ごとにごみの種類が決まっていて、それが一週間周期で繰り返されている。
つまり、長くても探しているものがそこにあるのは一週間だけなのだ。
だめだ、考えても全く分からない。
やっぱりいたずらなんじゃないだろうか。
周りを見るとみんな考え込んでしまっている。
わかった人はいないらしい。
「あ、」
沈黙を破ったのはまたもや雨宮さんだった。
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