2
「あ、いいんですか!
ありがとうございます」
雨宮さんは嬉しそうに笑うと頭を下げた。
「それじゃあ、今日ってお時間あったりしますか?
給与面とかについてお話したいんですけど…」
そう聞かれて今日の予定を思い浮かべる。
引っ越しの片付けは残っているが、それもあと少しだ。
「全然大丈夫です」
頷きながら答える。
「良かったです
私、今からちょっと予定があって、
お昼すぎに相談所の方に来ていただけたら嬉しいです」
彼女はそう言って、上を指差す。
そういえばこの上に事務所があるんだった。
分かりました。と頷くと雨宮さんがあの、と口を開く。
そういえば、この人はなんでここにいるんだろう。
稼働している洗濯機は自分が入れた一つしか無い。
「今からここで…」
「真子ちゃんいるー?」
雨宮さんが言いかけた言葉は入口の方から聞こえた大きな声にかき消された。
「あ、ごめんなさい。お話中だった?」
50代くらいだろうか。
扉を開けたまま困ったように首を傾げている。
腕には中身が膨らんだエコバッグが2つぶら下がっていた。
「もしかして、そこのアパートに引っ越して来た方?」
女性は、とりあえず置かせてねと言ってエコバッグを机に置く。
「そうです」
どうやら、この人にも軽トラ一つで引っ越してくるところを見られていたらしい。
「昨日、ここで話してたのよ
大きい絨毯運んでたでしょ、大変そうだわーって」
女性はほら見えるでしょと窓を指さした。
向かいのアパートだけあってよく見える。
「お恥ずかしいです」
大きいものなど四苦八苦しながら運んでいたのを見られていたと思うと恥ずかしい。
「あ、良かったらあなたも参加する?
井戸端会議。洗濯物もまだみたいだし」
女性はいいことを思いついたというようにぱんっと手を合わせた。
たしかに洗濯はあと20分くらいは必要だが、、、
なんのことか分からず、思わず雨宮さんを見てしまう。
「ほぼ毎日ここで主婦の皆さんと色々お話ししてるんです
良かったらぜひ」
雨宮さんのその声にお菓子もあるわよと女性がエコバッグを広げる。
「じゃあ、ぜひ」
そう笑いながら言うと、女性は嬉しそうに、お菓子を握らせてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます