保健委員 井上君の場合
僕の学年には2人の人気者が存在する。
1人は2年1組の成瀬蓮君。
彼は文武両道、容姿端麗、温厚篤実。
誰もが認める完璧な大越の純白の王子。
成績は常に学年トップ10位にはランクインしている。
特に得意なのが現国など文系科目。
部活はテニス部で、県大会シングル3位に入っている。
運動全般が得意で、よく他の部活の助人をすることもあるみたい。
外見は女の子のように可愛らしく、表情は常に柔らかかった。
男らしいとは真逆な感じだけど、とても印象のいい男子生徒だ。
性格もその見た目と比例して、温厚で優しい。
常に周りに気配りが出来て、困っている人がいると助けずにはいられないお人好しな性格。
欠点があるとしたら、その優しさが相まって優柔不断で押しに弱い。
だから人から頼まれたことは、つい手伝ってしまってキャパ―オーバーすることが多いようだ。
後、これは噂だけど、実は金槌で泳げないらしい。
体育の水泳の授業は仮病を使って休んでいたって彼の中学時代の同級生が話していた。
なんだか、あの成瀬君に限ってそんなことは信じられないけど。
それと今はクラスメイトからの推薦でクラス委員を同じクラスの女子、結城さんとやっている。
一度、生徒会長にも推薦されたみたいだけど自ら辞退。
今は以前、生徒会会計をしていた泉さんが生徒会長を務めていた。
趣味は家事と育児。
家事は一歩譲っていいとして、育児って言うのがよくわからないけど、彼の今の夢は保育士になる事らしい。
今でも近所の人に子供の面倒を見て欲しいと頼まれると快く受けているようだった。
そして特技が染み抜き。
これは彼の趣味の用のものらしく、染み抜きグッツを常に鞄に入れているらしい。
染み抜きだけでなく、汚れた個所を磨き上げることにこれ以上ない快感を覚えるらしく、汚れを見つけると我が身を忘れて掃除をする癖があるそうだ。
昔、それでトイレ掃除が長引きすぎて、下校時間を過ぎ教師に怒られたという話も聞いたことがあった。
とにかく彼の女子力の高さは半端なく、裁縫、料理、生け花、茶道と完璧にこなし全女子生徒顔負けの技術らしい。
全て噂だから真実はわからないけど、とにかく教師たちが絶賛していたのと、周りの女子たちが意気消沈していたことは確かだ。
だから、今はもう彼に対抗して女子力を見せつけようとする者はいなくなったと聞く。
そして、もう1人の人気者、2年4組の桜井蒼汰君。
彼も成瀬君ほどではないが文武不岐、眉目秀麗、勇猛果敢。
誰もが羨む完璧な大越の漆黒の王子。
成績は常に学年トップ20位にはランクインしている。
特に得意なのが数学など理系科目。
部活はバスケ部で、県大会でMVPとして選出。
運動全般が得意で、体力テストでは常にトップを総取りしていた。
外見は男子も羨むような精悍な顔立ちで、表情は常に凛々しい。
成瀬君のような中性的な顔立ちとは違うけど、大人っぽく頼りがいのある男子生徒だ。
性格もその見た目と比例して、決断力があり頭の回転が速い。
常に周りに気遣いが出来て、困っている人がいると手を引っ張って先導する性格。
欠点があるとしたら、少し強引なところがあって、人より少し短気な面が見られた。
それでもそこを頭の良さと己の器用さでカバーしてしまう。
また、前生徒会副会長から推薦を受けて、現生徒会副会長を務めている。
趣味は散歩と人間観察。
暇が出来るとリフレッシュの為に近所の公園まで散歩に行くこともあるらしい。
実は彼には黒い噂もあって、彼に目を付けられると立場が悪くなるとか、自分の彼女を奪われるなどと言われていた。
しかし、実際、高校に入ってから彼は誰かと付き合ったことはなく、それは単なるフラれた男子生徒の腹いせだと思われる。
そして、彼には同じ学校に通う幼馴染みの百崎萌咲という学年でも1番と言われるほどの美少女で、今は同じ生徒会に所属していた。
幼馴染まで完璧なのだから、彼に手を出そうとする恐れ知らずの女子は少ない。
それでもこの学園に入ってから既に10人以上は交際を断っているらしく、本人も心苦しく思っているようだった。
実は成瀬君の方は逆に告白されたとか、振ったなどという話を聞かない。
彼に憧れている女子生徒があまりに多いため、抜け駆けをさせまいと成瀬君同盟というものを締結し、彼への告白を阻止している。
裏切る者がいようものなら、その場で処刑されるという。
なんとも恐ろしい話だ。
どっちが良いとか、悪いとかはその人の主観であり、断言することは出来ない。
実際、成瀬君はオープンな感じで親しみやすいが、桜井君にはミステリアスな部分があって興味を引く。
真反対な2人を比べるというだけでナンセンスなのだが、どうしてもこう世間とは比べたがるもので、今は若干、成瀬君の方は優勢らしい。
この間の球技大会の事件もあって、桜井君はクラスでも腫れ物のように扱われていた。
その原因の1人が僕なんだけど、申し訳なく思いながらも出来ることは少ない。
本当は皆が桜井君に対して不審な目で見始めた時、僕がみんなの前でちゃんと否定すれば良かったのだろうけど、あの時は勇気が出ずに何も言えなかった。
僕はそんな僕を今でも許せないけど、当の本人の桜井君は差ほど気にしていないようだった。
もう、黙って逃げるのは辞めようと思って僕は思い切って修学旅行の時、1人でいた彼に一緒に回ろうと声をかけた。
周りからしたら、クラスでも浮いている僕がこれを好機に桜井君に取り入ろうとしているって思っている人もいるんだろうけど、そう思われても構わないと思った。
あんなことはあったけど、僕はそれでも桜井君に憧れるし、桜井君のようになりたいと思っている。
成瀬君も素敵で尊敬するけど、僕はやっぱりリーダーシップが取れて、人を引っ張っていく力のある人の方がかっこいいと思うから。
それを桜井君は知らないけど構わない。
球技大会以降、桜井君はあまり人にいい顔をするのを辞めたらしい。
時々冷たい表情や受け答えもするけど、その奥に彼の優しさがあることも知っているから僕は怖くない。
生徒会に入って、益々桜井君のリーダーシップの力が発揮できている気がする。
前より不機嫌になったり、怒鳴ったりすることも多くなったけど、その方が彼らしくていいと思う。
それでも彼は人の世話をやくのだから。
桜井君は成瀬君に負けないぐらい、本当はお人好しなのだ。
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