第3話 突然の来訪者

昼休み


前の席の子と楽しくお弁当食べていると、そいつは現れた。

それまでにぎやかだった教室が一瞬で凍りついた。


でかい!   


同じ人類とは思えないくらい、そいつは縦も横もおおきかった。

あと真っ黒な服を着ている。学ラン?うちの学校学ランだっけ?

私が頭にはてなマークを浮かべていると、そいつはのっしのっしと教室の中へと入ってきた。

そうして、ピタリとわたしの前で止まるとニヤリと微笑んだ。 ひゃー


やばい!にげなきゃ!


やつは私の焦りを気にすることもなくニコニコ顔で私を見た。


「お主が華子か? 昨年度の柔道選手権の新人大会で未経験者ながら決勝まで行ったとか言う。」 


・・・・あーこれ絶対面倒なやつだ


私はキョロキョロ当たりを見回し


「はなこさーん! お客さんですよー! うーん、どうやら居ないみたいです。すみません、っていたい」


そう答えた私の後頭部をスパーンとハリセンがおそった。いたい

涙目で頭を擦りながら彼女を振り返ると、ジト目の彼女がハリセンをいじっていた。     あの痛いから頭叩くのやめて あと心も痛いから


「・・・わたしが華子です。」


「ん? やっぱりお前でいいんだな! ぜひとも我が柔道部に入って欲しい!そして新人大会で活躍し、我が柔道部を全国に導いてほしいんじゃ!」


「いやです、お断りします!あたし忙しいんです!貧乏なんです!暇なしなんですよ!」


そんなのに時間取られたらダンジョンに行けないじゃん。 赤字だけど

いきなり断られると思っていなかったのか、魔物はうっとひるんだ。


「ぐぬぬ。そいつは済まない。だが!少しでいいから時間があるとき道場に来てくれ。全国経験者が見ているだけでやる気も出てくる。後これは気持ちだけだが」


やつはそう言うと風呂敷に包まれた菓子箱のようなものを差し出してきた。 


「・・・ほんな気持ちじゃ。なあに大したもんじゃない。気にせんで受け取ってくれ。」


おおっ! これはアレか! 黄金色の菓子箱か!! お前わかってるじゃないか


受け取ろうと私が手を逃した瞬間、ゾクリと悪寒が走った。

ふふふ。やつは笑いながら先程までの低姿勢を脱ぎ捨て、実に悪そうな笑顔を浮かべた。


「早速じゃが、今日の放課後来てほしい。なあーにホンの一時間でええんじゃ。では待っているぞ。ふはははは 」

やつはそう言って高らかに笑いながら去っていった。

その姿を呆然と見送るわたし。


「あーあ。足元見られたね。」


「ぐ、ぐやじいいいいいい!」


私は半泣きになりながら乱暴に菓子箱を開けた。

すると封筒に見慣れたものが見えた。ここれは!


「おおおおお。学食券だあああああ しかもいっぱいあるぞおおお」


なになにあいつ神なの? 女神じゃない?。むさいけどこのさいどーでもいいわ


「あんたも現金ね・・」 


何とでもいってよ。

食券の前では些末なことよ


私は一枚二枚とニコニコ顔で食券を数えていた。


「はあ。それじゃ今日放課後ケーキ食べに行く予定はキャンセルね」


「えーなんでー。もちろん行くよー」


「え」


彼女のこんな顔も珍しい なんか勝った気がする。

「ふふふ、5分で済ますわ! さあ柔道部に行ってケーキよ!!」



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